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第1回・米スタンフォード大学の櫛田健児さんに聞く

上手な働き方と旧来の日本型雇用システムは両立可

髙橋:これまで日本企業は、米国の経営モデルや人事制度などを真似てきました。米国を追い掛けるモデルをこれから続けていくべきなのか、それとも日本は独自の道を歩んでいくべきでしょうか。

櫛田:もともと日本も米国も雇用モデルは同じ。米国も1950年代から70年代ぐらいのオイルショックの大不況になるまで、大企業は終身雇用、年功序列でした。日本企業と一緒です。

 ただ70年代のオイルショックによる米国での大不況と同時に、日本の製造業がパワーパップして米国に盛んに進出してきた。それに対してアジャストできなかった米国企業は淘汰され、アジャストした会社は終身雇用を終わらせたり、中核事業を変えたりしました。代表例がIBMです。倒産寸前まで追い詰められましたが、4割ぐらい社員を切って、ものづくりからサービスを売るほうへと転換したのです。

 オイルショックの不況と日本との競争の結果、米国では成果型主義などの不安定な雇用が出来上がった。日本は終身雇用が当てはまる社員の比率は減ったとはいえ、まだコアの部分は終身雇用ですよね。

 米国の基本的なスタイルは日本の社会としてはやるべきではない。社会の分断、二極化がどんどん進みます。日本でも格差社会は進んでいますが、米国とは比べものになりません。

 日本のいいところを残しながら、米国のいいところを取り入れるのは難しくないと思います。終身雇用、労働の安定、多少会社は傾いても社員のためにやりますという考え方は大変素晴らしい。ただし、終身雇用だから長時間の非効率な労働が必要という話では全くない。競争に勝つことにつながるか、つながらないかを尺度に、妥協なしにどんどん改革していくべき。上手な働き方と旧来の日本型の雇用システムは両立できると思います。

 これまで積み上げてきた日本の富があったから、この20年、多少非効率なことをやっていても生き残れた。ただ、これからはそうはいかないでしょう。変わるなら今だと思います。(構成:荻島央江)

写真:Rodney Searcey

「働き方改革」の目的とは一体何だろう? 各社、事業の目的が違うように、働き方も企業の目的に沿って決めてもいいのではないかと思う。企業の目的を達成するために、組織が最高のパフォーマンスを上げられるよう、実験をしながら決めていくのは面白い。

武蔵境自動車教習所には、「お客様の一生の思い出をつくる」というビジョンがある。また、「地域になくてはならない企業になる」というミッションがある。このビジョンとミッションを達成するために組織があり、そのチームのパフォーマンスを高めるために、全社員で考え、アイデアを実行し、実験してみる機会がもっと必要だと感じた。

シリコンバレーでは、劇的な競争に勝つためという明確な目的がある。そのために、どんな働き方をすれば一番になれるか考えている。また、組織に属していても、常に世の中に問題意識を持ち、解決するためにキャリアを変えている。このように柔軟に考えてもよいのではないか?

中堅中小企業には、柔軟に考え意思決定できるという強みがある。その強みを生かし、今と未来のために考えるチャンスの時代だと私は学んだ。現在、シリコンバレー第3のブームだと言われている。将来のために、どんなことがシリコンバレーで考えられているかをもっと知り、将来に向けての準備をしたい。 (髙橋 明希)