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第2回・WiLの梶原奈美子さんに聞く

「若い社員」=「未来のサービスをつくる人」

梶原:よく企業の人事担当者に「変に社員を刺激して目覚めさせてしまうと、それがきっかけで会社を辞めてしまいませんか」と質問されますが、そんなことはないと思います。社員自身がやりたいことと、企業のミッションや部署の課題がつながれば、前向きな生産性が生まれるはずです。

 私自身、昨年、有休を使って自腹でパリに行きました。言ってみれば、自分で企画した研修です。自分で考え、自分で情報を取りに行ったから次のアイデアの種を得ることができ、新たな取り組みに挑戦する前向きな原動力にもなりました。

髙橋:一般的には企業の論理が優先されて、社員のやりたいことができない場合が多いですよね。

梶原:流動性というオプションがあると、企業の意識も個人の意識も変わると思います。私もそうでしたが、やはり外に出てみないと分からないことが多いよね。

 それに、ずっと一つのところにいると弊害もあります。例えば、「こういうことをやりたい」と提案しても、上司からダメ出しをされて、できない理由をいくつも並べ立てられる。それが続くと、駄目な上司の駄目なマインドセットがインストールされてしまうからです。

 実際、シリコンバレーに来て「思い切り好きなことをしていい」と言われても、「やりたいことって何だっけ?」という感じの人がいます。誰もそんなことを言ってないのに、「きっと○○さんにこう言われるからやらない」と、自分で自分の思考にロックをかけてしまっている。そうならないためにも、ポジティブマインドセットというか、環境を変える必要があると思います。

髙橋:表現は乱暴かもしれませんが、自ら牢屋に進んで入り、内側から鍵をかけているようなものですね。

梶原:まだそれが特定の人の場合はいいのですが、だんだん「会社がこう言っているので」「うちの会社はこういうカルチャーだから」となってくると余計に危険です。そういうカルチャーが知らず知らずのうちに若い人にインストールされて、同質化した行動をしている。恐ろしいことですよね。

 昨日、ある企業の研修で話していたとき、少子高齢化が進み、若い人の人数が少ないことが、意外と大きな影響を与えているのかなと感じました。シリコンバレーにいると、同世代の人たちが自分たちこそ次の世の中をつくる世代だとはっきり自覚している。中国にもそういう雰囲気があります。片や、日本の若い人からはあまり強い勢いは感じません。「このままだと駄目だ。大変だ」というところで立ち止まっている印象です。

 もちろん、シニア世代が多い日本ならではのイノベーションもたくさん生まれていて、高齢者に対するサービスは日本のほうが進んでいると、こちらにいても思います。ただ、「若い人に元気があるか」ということが国力をはかる上で重要な気がしています。

 例えば、消費財の購買層のボリュームゾーンは、私たちより上の年代になるので、そこを狙ってマーケティングをしたほうが売れます。ですが、そこにジレンマがあります。未来がないというか、目の前のお客さんだけを追っている感じで疲弊しますよね。

 例えば、企業は若い社員を未来のサービスをつくる人と位置付けて、切り分けたり、彼らだけで新しい商品やサービスの開発を任せたりするなど、さまざまな工夫ができそうです。

髙橋:若者を生き生きさせることが大切ですね。

髙橋明希(たかはし・あき)
1976年東京都生まれ。獨協大学卒業後、竹の塚モータースクールを経て、2001年武蔵境自動車教習所に入社。09年に社長就任。早稲田大学大学院修了。米スタンフォード大学留学を経て、2017年、米シリコンバレーに日本と米国の事業の橋渡しを手掛けるコンサルティング会社、ブリリアントホープを設立。
写真:Rodney Searcey