日経ビジネスONLINE Special週刊日経ビジネスオンライン SPECIAL日経ビジネスオンライン

第3回・スタンフォード大学のリチャード・ダッシャー特任教授に聞く

日経BP総研 中堅・中小企業ラボ

2018年4月24日(火)

東京・武蔵境自動車教習所の髙橋明希社長が、経営者としての腕をさらに磨くため、キーパーソンから「人材採用・育成」「働きがい」などについて学んでいくシリーズ。

第3回目は米スタンフォード大学アジア・米国技術経営研究センター所長で特任教授のリチャード・ダッシャー氏がゲスト。アントレプレナーシップやイノベーションなどを専門分野とするダッシャー教授にイノベーションを起こすために必要な職場環境などについて聞いた。

従来の商品・サービスの代わりをつくるのもイノベーション

髙橋:従来の仕事の約半数が機械やAI(人工知能)に置き換わると予測されている今、事業転換を図らなければ存続が望めない企業は少なくないと思います。私が社長を務める武蔵境自動車教習所もその1社です。自動運転車が一般的になったら、自動車教習所は不要になりますからね。このため2030年に教習事業から撤退すると決めています。

 だから、私はあと12年の間にイノベーションを起こさなければなりません。そもそも新しい事業の種やヒントを探すために米国へ来ました。どうしたらうまく事業転換できるか、その方法をこちらに来てからずっと考え続けています。

リチャード・ダッシャー教授(以下:ダッシャー):まず言いたいのは、これまで世の中になかったものを生み出したり、今ある何かに新しい要素を付け加えたりするだけがイノベーションではないということです。従来の商品やサービスの代わりになるものをつくる、これもイノベーションです。それには古いものを捨てないといけません。そうしないと、あまりにも限られた分野でしかイノベーションが起こせないからです。

髙橋:とはいっても、企業にとって古いものを捨てるのは簡単なことではありません。

ダッシャー:今までずっと事業の柱として会社を支え、利益を上げていたら、なかなか諦められないものです。かつてコダックがフィルムカメラをいつまでもやめられなかったことからも分かるでしょう。

 ですから、どのような企業ブランドを構築したいか、事業の柱を何にするか、利益の源泉は何か。そうしたビジョンを描いた上で、新しい事業の選択、古い事業からの撤退を決断しなければなりません。

 そうしたら、例えば、人が集まる場を提供して、アイデアを集める。いずれ新規事業として始めても、どこかと共同でやってもいい。あるいは会社が投資家になってもいい。いろいろな可能性を探れると思います。

リチャード・ダッシャー氏
スタンフォード大学アジア・米国技術経営研究センター所長、同大学特任教授。アントレプレナーシップやイノベーション、先端テクノロジーなどを専門分野とする。日本語に堪能で、2004~10年に東北大学理事を務めた。
写真:Robert Schultze