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女性社員が活躍するものづくり工場

第2回・「光機械製作所」の巻

女性が活躍し、社内が明るくなった

――多くの女性が働いています。女性の活用に力を入れようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?

西岡:私が光機械製作所に入社した1996年当時、女性従業員は10%ほどでした。ただし、彼女たちの主な業務は男性社員の補佐で、経営参画率は1%程度あったかどうかでした。重要な会議にも出席しませんし、彼女たちの意見が経営に反映される機会は極めて少なかった。人事評価制度も確立しておらず、女性は男性より不利な環境でした。

 私は当社に携わる前は、外資系企業で働いたり、通訳をしていたりしたのですが、日本企業では「補助的な仕事しかさせてもらえなかった」「コピー取りとお茶くみばかりだった」と話す女性たちとたくさん会いました。彼女たちは、一生懸命プロとしての仕事をこなしていました。世の中にはきっと、こういう女性がたくさんいるだろう。そういう優秀な女性を採用できれば、きっと会社全体のクオリティーが上がるだろうと考えました。

 まずは求人票に女性へのメッセージを載せることから始めました。

 そうこうしているうちに、セミナーで講演してほしい、学校から授業をしてほしいというような依頼をいただくようになりました。会社をPRできる絶好のチャンスだと思ってすべてお受けしていると、雑誌や新聞でも取り上げていただくようになり、共感してくれる女性が集まるようになってきました。

――ただ、女性を採用できても、既存の男性社員との摩擦が起こりそうです。難しかったこともあったのではないでしょうか。

西岡:最初は定着しないこともありました。男性社員の意識も変えていかなければなりません。本人に悪気はなくても、「女性だから……」という不用意な言葉により悔し涙を流すということもありました。

――男性社員の意識はどのように変えていったのですか?

西岡:やはり、「プロフェッショナルである」ということだと思います。プロとしての仕事をすれば、何も言わずともおのずとみんなが認め、その人がなくてはならない人材になります。男性社員にそういう思考の転換が起こると、誰も仕事上で性差を口にしなくなります。そういう積み重ねしかないと思います。

――結婚や出産などのライフイベントの問題も出てきます。採用と同時に、女性が働きやすい制度を整えていったのでしょうか?

西岡:特別なものはなくて、法律で定められた普通の制度を用意しているだけです。ただし、個別の運用は100%できていると思います。特に、育児は非常に個別性の高いものです。例えば、Aさんはご両親が近くにいるけれども、Bさんは夫婦で育児をするなど、家庭環境によって事情が変わってくるので、私は基本的にその人に合わせたルールを運用することが一番いいと思っています。

 1年で戻りたいという人は1年で復帰するし、子どもが小さいうちは自宅で仕事をしたいという人には、在宅で仕事をしていただいています。どんな働き方をしたいか、本人の希望を聞いて個別に対応しています。

西岡社長と、2008年に中途入社した山道仁美さん(写真左)。山道さんは加工グループのリーダーを務める
2013年に新卒で入社した黒田唯さん(写真右)。機械設計業務に携わる。就職活動中に西岡社長の話を聞き、思いに共感して入社を決めたという

――女性社員に責任ある仕事を任せるようになって、変わったのはどんなことでしょうか?

西岡:会社の雰囲気が明るくなりました。プロとして仕事を任されることで、女性の存在感がますます増すのでしょうね。

 女性に仕事を任せ始めた当初は、現場では女性社員のために、高さを調整できる台を設置したり、固くて締めにくかったねじを、軽い力でも締められるようにしたり、いろいろな工夫をしました。今もそうした作業改善は活発に行われています。結局、女性が使いやすいものは、男性も使いやすいわけですから。

――時間をかけて、女性が働きやすい土壌ができたのですね。今は採用の際に性別は意識されていないのでしょうか?

西岡:今は特に女性を増やそうとも男性を減らそうとも考えていません。女性管理職も約2割いますが、特に数値目標を掲げているわけではありません。人事で最も大事なことは、適材適所です。適材でもないのに、ただ女性に役職をつけるのは、私は反対です。能力のない人を無理やり昇格させても、会社も本人も、お互いに不幸ですよね。

 当社には再雇用したシニアもいれば、外国人スタッフもいます。理系出身ばかりでなく、文系社員もいます。金太郎飴みたいに、同じ考え方の人ばかりがいる組織は活性化しにくいですから、多様な人材が、それぞれ自由に意見を言い合える風通しの良い組織にしたいと思っています。