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働き方にも変化をもたらすデザインリテラシーの重要性

アドビ システムズ

働き方にも変化をもたらす
デザインリテラシーの重要性

ビジネスの中でデザイン活用が注目されている。米グーグルや米フェイスブックはデザイン会社を買収し、米IBMは社内デザイナーを1000人単位で増員している。なぜ今デザインなのか、デザインにはどのような力があるのか。デザインワークを支援するアドビの古田正剛氏と、ビジネスパーソンにデザインを教えるWEデザインスクール校長兼オフィスハロー代表取締役の稲葉裕美氏が、デザインと働き方について語った。

デザインの良しあしが
企業価値を左右する
古田 正剛 氏
アドビ システムズ 株式会社
マーケティング本部
Creative Cloudエンタープライズ部
マーケティング マネージャー
古田 正剛

 「新しい価値を創造することは新しい働き方につながります。それを実現する要素の一つがデザインなのです」とアドビの古田正剛氏は語る。“世界を動かすデジタル体験を”というメッセージの下、デジタル体験を変革するソリューションを提供している同社は、ビジネスにデザイン思考を取り入れる活動を支援している。

 「例えば自動車メーカーとお客様との間のあらゆる接点で、デザインが重要な役割を果たしています。自動車のデザインだけではありません。コマーシャルで車を知ってもらったり、ショールームの看板や外観や内装だったり、保守メンテナンスの担当者のユニホームだったり、あらゆるところで顧客体験のデザインが必要です。それらの相乗効果でビジネスが動いています」(古田氏)

 見た目のデザインで印象が変わるのは当然だが、ビジネスとデザインにはもっと密度の高い因果関係があり、企業の業績とデザインの良しあしが連動しているという見方もある。「実際にデザインを重視する企業は、企業価値が向上しています。こうした企業は一般の企業に比べ、株価の時価総額が219%、市場シェアも1.5倍に上るというデータもあります」と古田氏はデザインの重要性を強調する。

デザインへの取り組み・理解は組織全体で
あらゆるシーンにおいて顧客体験のデザインが必要である
デザインへの取り組み・理解は組織全体で
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 同社では「Experience Cloud」「Document Cloud」「Creative Cloud」といったクラウドサービスを提供するとともに、多くのビジネスパーソンにデザインの力を理解してもらうための取り組みを展開している。「どの部署でもデザイン思考は必要です。デザインの価値向上には全社で取り組むべきなのです」(古田氏)。そうしたデザインの力を理解してもらう活動の一環として、アドビと共同してビジネスパーソン向けにデザイン入門講座を開設しているのが、今回講演を行った稲葉裕美氏である。

デザインの基準となる
4つのデザイン判断力
稲葉 裕美 氏
株式会社オフィスハロー
代表取締役
稲葉 裕美

 稲葉氏は武蔵野美術大学で社会とアートの関係性を研究した後、2015年に社会人向けアートスクール「CORNER」を開校。さらに2017年には「WEデザインスクール」を開校した。「芸術文化と社会をつなげる」ということを理念として掲げて大学や企業向けに教育プログラムを開発し、デザイナーではない人たちにデザインの力を広める活動を展開している。

 「デザインの良しあしは好き嫌いで決まるものでも、勘で判断するものでもありません。理論立てて考えられるものです。それが分かればビジネスにデザインの力を生かすことができ、新しい価値が創造できるようになります」(稲葉氏)

 その要となるのが「デザイン判断力」だ。「デザイン判断力は、感性的判断、文化的判断、機能的判断、社会的判断から導き出されます。私たちはこれらの4つの観点から、デザインをはじめとしたいろいろな事柄を分析的に見ているのです」と稲葉氏は語る。

 感性的な判断とは人間に備わった五感による判断、文化的判断は精神や歴史文化の観点からの判断である。また機能的判断は使い勝手や用途からの評価であり、社会的判断は時代や環境を考慮した判断だ。

 「デザイナーではない一般の社会人は、感性的な判断と文化的な判断を苦手としています。4つの中でもこの2つは特に重要です。だからこそ、そこを重点的にトレーニングすることでデザイン判断力を磨けるのです」と稲葉氏は強調する。

 逆に言うとこれらの4つの判断のバランスを欠いた場合には、悪いデザインになりかねない。例えば、電柱を立てて電線を張り巡らせることは、電気を広く提供するためには便利な方法であり、電気に依存した社会の要請に応えることになる。確かに機能的判断と社会的判断から見れば素晴らしいかもしれない。しかし景観としてはどうだろうか。黒い電線で青い空が覆われてしまっては、決して美しいとは言えない。つまり感性的判断と文化的判断からは良いデザインとは言えないのである。

デザインの視点を持てば
仕事の本質が見えてくる

 一般のビジネスパーソンにとって“デザイン力を生かす”ということは、デザインを包括的に捉え、デザインの良しあしを分析的に判断し、良いものを生み出せるよう導くことだ。

 そのためには広い“視野”が必要になる。そしてこの“視野”こそ、デザイン判断力そのものなのである。すなわち先に述べた4つの観点と同じ、感性的視野、文化的視野、機能的視野、そして社会的視野である。これらの全人間的な広い“視野”が、様々なビジネス領域で本当に必要とされていることへの気付きをもたらし、新しい価値の創造へとつなげてくれるのだ。

 こうしたデザイン力はデザイナーだけに必要とされるものではない。なぜならデザインは、デザインを判断するマネジメント側とデザイナーが共同で作るものだからだ。デザイン力を持つことで、ビジネスの現場で製品やサービスの具体的内容について議論する際はもちろん、それらでどんな社会を作るべきかというもっと広い判断をする際にも役に立つはずだ。本質を見抜く力と言ってもいいだろう。

 稲葉氏は「製品のデザインでも、サービスでも、顧客対応でも、デザインの視点から考えれば、あるべき価値の本質が見えてきます。それが働き方を変えるきっかけになるはずです」と語る。デザインの考え方で本質を捉えることで、本当に今やるべきことが見えてくる。常にそういう思考法で仕事に取り組めば、働き方も変わってくるだろう。そしてそこには、デザインリテラシーという要素が生かされているのだ。

一般のビジネスパーソンにとってもデザイン力が重要に
マネジメント側のデザイン判断力が、新しい価値を生み出すカギになる
一般のビジネスパーソンにもデザイン力が必要
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