ビジネスのために必要なクラウドとは

第1回 クラウドランキングに異変あり!
ビジネスで使うクラウドの差別化要因が見えてきた

顧客の利便性を高めるアプリケーション、生産性を上げる新しい働き方の実現、革新的なサービスを創り出す企業間連携など、これからの企業競争力を左右するデジタル変革の実現にクラウドの活用は不可欠である。しかし、デジタル変革の成功は、企業の既存ビジネスを滞りなく支える基盤の維持と強化があってこそできるものだ。ビジネスでクラウド活用が本格化するなか、企業は「既存の資産を生かしながらデジタル変革を実現できるクラウド」について本格的に検討しなければならない段階にある。

企業向けクラウドのランキングで異変が起きている

 これまでクラウドの世界市場をリードしてきたAWSは、企業向けのパブリッククラウドの分野でも長年トップランナーとして君臨してきた。しかし今、この絶対王者の地位に揺らぎが見え始めている。

 ICTの市場調査を手がけるMM総研は、昨年12月に国内のクラウドサービス市場の現状と動向に関する市場調査を発表した。2016年度のパブリッククラウドの市場規模は前年度比38.5%増の1兆4003億円で、2021年度までの年平均成長率は20.6%と予測されている。

 全体としては順調に拡大しているクラウド市場だが、調査結果からは異変も起きつつあることがわかる。現在、イベント駆動型クラウドのFaaS(Function as a Service)ではAWSがトップだが、「検討サービス」では3位となっている。また、PaaSは現状のトップから同2位など、将来的には順位が入れ替わる可能性が示されている。

 AWSを猛追しているのはグーグルやマイクロソフトであり、彼らが今後トップに立つ分野も出てきそうだ。一見するとネット企業の巨人たちの争いといえなくもない。しかし、調査データをよく見ると注目すべき存在がある。それは、IBMだ。

 クラウドベンダーとしてのイメージがあまり強くないIBMだが、FaaSは現状の4位から同2位に、PaaSは圏外から同3位に。そしてIaaSでは5位から3位と、それぞれの分野でランクアップが予想されている。

(図1)IBMのクラウドを「検討サービス」と回答した企業が増えている
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出所:クラウド市場予測(MM総研)
https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=279

 なぜ、IBMのクラウドを「検討サービス」とする企業が増えているのか。その背景には、クラウドの利用が一巡し、クラウドネイティブな企業だけでなく、大企業などでの本格的なクラウド活用が始まろうとしていることと、それに対応できるクラウドの要件がIBMのクラウドに備わっているということがある。

 海外の有名なアナリストであるボブ・エバンス氏は「IBMは顧客、業界知識、技術について大きな資産を持っている。その資産の全てをクラウドビジネス向けに変革している」と、IBMのクラウドを高く評価する。では、IBMのクラウドは他のクラウドと何がどう違うのだろうか。

すぐに使えてサーバーのラック番号までわかるクラウド

 IBMのクラウド「IBM Cloud」の最大の特長は、パブリッククラウドだけではなく、オンプレミス(自社運用)環境にも対応できるように設計されていることだ。それを象徴するのが、ベアメタルという独自のクラウドの提供形態である。

 ベアメタルは、ユーザー専用のサーバーが物理的にデータセンター内に用意されるという点で大きな違いがある。IBM Cloudは「どこのデータセンターの、どのラックの、どの位置に」専用のサーバーがあるのかまでわかる。オンプレミスと同じようにクラウド上の物理サーバーを利用するため、オンプレミス上のシステムをそのままクラウド上に移行できる。

 OSやアプリケーションを替えることなく、運用ルールなどの非機能要件もそのままに、クラウド上で既存システムを動かせることは、現行システムを抱える企業にとって大きなメリットをもたらす。移行に伴うタイムラグを最短に抑えながらクラウドのメリットを享受できるからだ。企業が保有するVMwareのライセンスもそのまま持ち込める。

 しかも、使い勝手は他のパブリッククラウドと変わらない。ブラウザー上でデータセンターを選択し、使いたいスペックを指定するだけだ。さらに専用サーバーなのに、時間単位で利用することができる。在庫のスペックを確認したうえで注文するBTOのサーバーをオーダーするイメージだ。

 これまで多くの企業システムを手がけてきたIBMらしく、既存システムとの連携機能が充実している点も見逃せないポイントだ。APIによってクラウドネイティブのアプリケーションと既存のアプリケーションを連携させることができる。フィンテックを加速させるAPIバンキングや、新たなビジネス価値を創出するAPIエコノミーなど、IBMの持つAPIの管理機能が生きてくる。

 開発面では、クラウドネイティブなアプリケーションをオンプレミスで開発する環境を提供し、ハイブリッドな開発スタイルをサポートすると同時に、開発したアプリケーションをコンテナー化できる機能も提供されている。

 コンテナー化されたアプリケーションはどのプラットフォーム上でも稼働させることができる。オンプレミスでも他社のクラウド上でも動く。こうしたオープン対応もIBM Cloudの特徴だ。IBM自身のソフトウェアのコンテナー化も進められており、すでに数十のアプリケーションが提供されている。このコンテナーを中心としたアプリケーションの開発と運用の新しいスタイルは、無償で試験導入することも可能だ。

 さらに、IBM Watsonなどの周辺システムをすぐに利用できる開発・実行環境が用意されていることも他のクラウドとの差別化要因だ。IBM Cloud上で提供されているIBM Watsonの機能を自社のアプリケーションと連携させることで、既存のシステムに簡単にAI機能を追加することができる。今後の企業システムの方向性を考えるうえで、国内外において豊富な実績のあるAIがすぐに使えるというのは大きな魅力だろう。

(図2)「クラウド+」でお客様へのビジネス価値を高める
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真摯なデータ管理人であることを宣言したIBM

 AIを活用するためには、学習用に企業内のデータが使える状態になっていることが求められるが、この点でもIBM Cloudは一歩先を行く。オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドといった存在場所を意識することなく、データベースにアクセスできる共通のデータ管理基盤が提供されている。

 この基盤を活用することで、外部のデータベースを取り込んだり、他社のデータベースに透過的にアクセスすることも可能になる。また、共通SQLエンジンをベースとしているので、いったん作成したアプリケーションは、オンプレミスでもクラウドでも手直しすることなく実行できる。さらに、データの在りかと出所を明確にするデータカタログ機能や、データを分析しやすく整形できる機能など、まさに企業でのデータ活用シーンを想定した基盤となっている。

 こうしたデータ管理基盤に加え、機械学習の領域までカバーしていることもIBM Cloudの大きな特長だ。IBM Cloud上では機械学習のオープンソースである「Spark」の環境がすぐに使える状態で用意されている。大規模なインメモリー並列分散処理システムの構築に手間取ることなく、既存のデータをそのまま機械学習にも活用できるというわけだ。

 今後の企業活動にとってデータ活用が競争優位を左右するのは間違いないが、懸念されるのが、データの所有権だ。それを嫌ってクラウドの利用に踏み出せないという声もある。しかし、ここでもIBMは企業ユーザーの立場を理解した行動に出ている。それが「データレスポンシビリティー」の宣言だ。

 「ソリューションやサービスのメリットと引き換えにデータの権利の放棄を迫らない」「ユーザーの同意なしでデータを共有しない」「同意した使用目的以外のためにデータを使わない」といった、データに対するIBMのポリシーを明確にしたものだが、こうした宣言は他社には見られないものだ。

 このデータの所有権に対するポリシーは、クラウドビジネス全般に対するIBMのスタンス全体に共通したものだ。IBM Cloudでは、あくまでIBMはサービスの提供側であり、主導権はユーザー側にあるという考え方を取っている。それがベアメタルやAPI連携、共通のデータ管理基盤というサービスにつながっている。

 企業側に立ってユーザー主導の方針を徹底していることが、本格的にクラウドを利用する段階に入った企業の琴線に触れ、それがクラウドビジネスの中での注目度のアップにつながっているのではないだろうか。

(図3)IBM Cloudが選ばれる理由
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