IBM Cloudで実現するデジタル変革

第2回 すぐに使えてAIも組み込める
「ビジネスのためのクラウド」で差をつける

クラウドのメリットは、手軽に始められること、そしてニーズに合わせて柔軟に環境を拡張、縮小できることだ。しかし、本格的にビジネスとして利用するためにはそれだけでは足りない。オンプレミス(自社運用)のシステムとの連携、AIなど高度なテクノロジーの活用など、これまでの“クラウドネイティブ”の発想だけでは対応できない部分が求められる。こうした要件をチェックしたうえでビジネスに活用するクラウドを選択することが、企業の競争優位を左右することになる。

経営に必要なアプリとデータに着目すればクラウドの要件が絞られる

 デジタル変革が求められるなか、ITの存在感は日々増大している。しかし、企業経営という観点から見ると押さえるべきポイントはシンプルだ。企業に利益をもたらすのはアプリケーションとデータであり、経営者にとって価値があるのはこの2つである。それ以外のいわゆるITインフラは、この2つを利用するための器である。

 そう考えると、これからのビジネスを支えるITインフラとしてのクラウドの要件もおのずと絞られてくる。①新規のアプリケーション開発が容易にできる、②既存のアプリケーションをそのまま利用可能、さらに③多様なデータ形式に対応しつつ、機械学習やディープラーニングなどの新しいデータ活用に対応できることが必要だ。

 こうしたニーズに対応できるビジネス向けのクラウドとして注目が高まっているのがIBM Cloudである。IBM CloudにはSaaSからPaaS、IaaS、プライベートクラウドといった様々なサービス形態があるが、ここではPaaSを取り上げる。

 その最大の特長は、ビジネスで必要とされる機能が「すぐ利用できる形で、数多く用意されている」点にある。これらの機能は昨年11月までIBM Bluemix(IBMブルーミックス)というブランド名称で提供されていたもので、アプリケーションを実行するためのリソースがパッケージ化されたコンテナーベースで提供される。

 ユーザーはIBM Cloud上で使用言語や使用リソースなどを設定して開発環境を構築し、カタログから利用したい機能を選択し、APIを使って組み合わせるだけで簡単にクラウドネイティブなアプリケーションを開発できる。現在、IBM Cloudのサイトでは130以上の機能が提供されている。

 そこにはCloud FoundryやDockerといった開発環境、RubyやPythonといった開発言語、Db2やSparkなどのミドルウェア、IoTやIBM Watsonなどの先進テクノロジーが用意されている。開発者はITインフラを意識することなく、先進のアプリケーション開発に専念できる。

(図1)IBM Cloud Platform ユーザーインターフェース
IBM Cloud Platform ユーザーインターフェース
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リオ五輪のメダル獲得の裏にあったIBM Cloudの存在

 IBM Cloudを使って大きな成果を上げることができた、自転車競技「チームパシュート」のアメリカチームの事例を紹介する。複数のデータソースの異なるデータをリアルタイムに統合して選手個人とチーム全体の状況を可視化するアプリケーションを開発、継続的に改善を図り、チーム力の強化に取り組んだ。

 チームパシュートは、1チーム4人の2チームが先頭を交代しながらタイムを競うトラック種目で、どのタイミングで交代するかが成績を大きく左右する。アメリカチームはビデオや環境センサー、車載メーター、ストップウォッチからデータを収集し、それをリアルタイムで分析することで最適解を追求していった。2016年8月にはリオ五輪で銀メダルを獲得。翌年4月の世界選手権でも優勝するといった成績を上げた。

 このような取り組みはその他の競技にも広がっている。2018年2月の平昌冬季五輪のスピードスケートでは、選手に装着した各種センサーやコース上のセンサーから自動取得するラップタイムなどの様々なデータの収集と統合、分析をクラウド上のアプリケーションで行い、コーチと選手はタブレットから状況を確認して、競技の成績向上を目指す取り組みが行われている。

(図2)
リオ五輪の自転車チームパシュートから平昌五輪のスピードスケートへ
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自転車競技「チームパシュート」のアメリカチームは、IBM Cloud上でリアルタイムにデータを分析し、最適解を追求。その結果、リオ五輪で銀メダルを獲得した。このような、各種センサーのデータの統合と分析をクラウド上のアプリケーションで行い、競技の成績向上を支援する取り組みが2018年の平昌五輪のスピードスケートでも行われている。

 そのカギとなったのが、アジャイル開発と先進テクノロジーの活用だ。IBM Cloud上でWatson IoT Platformで各種デバイスからデータを収集し、Apache Sparkで高速にデータ処理を行う。クラウドの俊敏性と柔軟性を保持しつつ、Node-REDで開発したアプリケーションをそのまま本番稼働させるDevOps(デブオプス)を実行したのだ。

 ただし、こうしたクラウドネイティブのアプローチに対して、いきなりクラウド上で開発することに対して二の足を踏む企業ユーザーも少なくない。そのようなユーザーの不安を解消するのが、「IBM Cloud Private」というオンプレミスの開発環境だ。IBM Cloud Privateでは、オンプレミス環境でありながらも、クラウドの俊敏性、柔軟性が提供され、クラウドネイティブな開発が行える。ビジネスの変化に合わせて、手軽に手元でアプリケーションを開発することを可能にする。

 しかも、コンテナーベースで開発しているため、IBM Cloud Private上で開発したアプリケーションは、どのプラットフォームにも移行できる。IBM Cloudはもちろん、他社が提供するパブリッククラウド上でも稼働させることができるのだ。

 これを可能にしているのが、IBM Cloudが採用しているコンテナーの運用管理プラットフォームのKubernetes(クーべネティス)である。Kubernetes自体はオープンソースだが、IBMは初期メンバーとしてプロジェクトで指導的な役割を果たし、活用ノウハウを蓄積してきた。

豊富な実績が証明、「ビジネスですぐ使える」AI

 IBM Cloudのもっとも特徴的な機能であり、実際のビジネスで新たな価値をもたらすと期待されるのがIBM Watson(以下、Watson)の存在だろう。IBM Cloudでは、自然言語処理や画像認識など、アプリケーションにAIを組み込むためのWatsonのAPIが提供されている。その多くは日本語化されているので、すぐに試すことができ、まずできる分野から着手するようなスモールスタートを可能にする。
 また、お客様個別のAIを構築し、学習データを他社と共有しないため、セキュリティーの観点からもビジネス向けのAIに適しているといえる。

 このようにビジネスのためのAI基盤として位置付けられているWatsonは、PoC(実証実験)だけではなく、多くの現場ですでに本番稼働して活用されている点も他のAIとの大きな違いだ。その裾野はますます広がり、活用レベルも急速に進化している。

 たとえば、Watsonを活用したチャットボットであるJALのハワイ旅行者向けバーチャルアシスタント「マカナちゃん」は、ユーザーが知りたいハワイの情報に回答するだけでなく、Watsonの性格分析のAPIである「Personality Insights」を使ってユーザーのSNSへの書き込みから性格診断をして、性格タイプに応じた情報を提供したり、世界最大の旅行情報サイト「トリップアドバイザー」と連携して、より詳しい情報を提供している。さらに、2017年12月には、ユーザーから送られてきた写真をWatsonの画像認識APIである「Visual Recognition」で分析しておすすめスポットを提案する機能を追加するなど、ハワイの旅のコンシェルジュとしての機能を強化しつつある。

(図3)JALのバーチャルアシスタント「マカナちゃん」
マカナちゃん
Watsonを活用したバーチャルアシスタントサービス「マカナちゃん」。自然言語を理解し、チャットのようにマカナちゃんが回答してくれる。

 IBMでは、こうした豊富な実績を誇るWatsonをより活用しやすくする仕組みも用意している。それが「AI in a Box」である。これまでのAI活用プロジェクトの実績をもとに自動応答や技術文書検索など具体的なソリューションを提供している。それにより、従来より短期間で安価に高品質なAIシステムの構築が可能になる。

 また、IBM独自のアプローチを顧客と共有し、プロトタイプなどの構築を目指すIBM Cloud Garageでは、優先度マップを使ったデザインシンキングとともに、アプリケーションを短周期で継続的にリリースしていくアジャイル開発手法が体験できる。IBM Cloudが提供する実行環境を中心とした新しい開発の世界を体感するには格好の機会になるはずだ。

 実行環境中心のアプリケーション開発がクラウドで提供され、Watsonをはじめとする豊富なAPIによる拡張性を備え、IBM Cloud Garageというサポートが用意されているIBM Cloudには、無料で使えるIBM Cloudライト・アカウントが用意されている。クレジットカードを登録する必要もなく、無期限で利用できる。百聞は一見に如かずだ。気軽に試してみてはどうだろうか。

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