事例研究・バリューアップ戦略

アートイベントからシェアオフィス。
ビルの魅力を広く発信した

西麻布の築50年ビルの再生術(後編)

2018/02/28
事例研究・バリューアップ戦略

周辺環境の変化でオフィスとしての競争力が弱まっていた早野ビル。空室となった4階部分については、効果的な改修を施すことでテナントを誘致できた、しかし、もともと住宅で、長らく放置していた7階部分のテナント誘致が新たな課題になっていた。そこで早野ビルでは、3日間の期間限定のアートイベントで情報を発信しながら、次の一手を準備していた……。

(前編はこちら

2016年9月に早野ビルで行われたアートイベントでは、様々な作品を展示するだけでなく、夜間には屋上を利用してヨガ体験なども行った。3日間で200人以上を集客している。

アート展示のほか、屋上を利用しての夜間のヨガなどのイベントが行われた
アート展示のほか、屋上を利用しての夜間のヨガなどのイベントが行われた
アート展示のほか、屋上を利用しての夜間のヨガなどのイベントが行われた
アート展示のほか、屋上を利用しての夜間のヨガなどのイベントが行われた

アート展示のほか、屋上を利用しての夜間のヨガなどのイベントが行われた

3日間のアート展示を終えた後、早野ビルの7階は2017年5月、共有部シェア型のオフィス「テイショク西麻布」としてオープンする。フロアの通りに面した部分に広いキッチンのある共用スペースを設置し、その背後に4~6人用を中心とするオフィス6室を配した。

小さなオフィスのニーズは確実にある

7階をシェアオフィスにした背景には、小規模なオフィスのニーズが高いにも関わらず、スペースのクオリティが低いものが多いという石田氏の現状認識がある。

「2014年の経済センサスで見ると、日本の事業所の8割近くは9人以下の規模です。しかも、そのうち1~4人という事業所が全体の6割弱を占めています。つまり、小さなオフィスのニーズは確実にあるのです」(石田氏)

8階にある会議室。外部への貸出も行っている
8階にある会議室。外部への貸出も行っている
8階にある会議室。外部への貸出も行っている

8階にある会議室。外部への貸出も行っている

ただ、住宅4室をそのまま、4つの小規模オフィスとして貸すだけでは、他の小規模オフィスと質的に変わらず、差別化もできない。では、どうすればよいか。そこで考えたのが、共用部をシェアするオフィスだった。

最近では、都心部を中心に共用部が充実したコワーキングスペースが増えている。石田氏はそうした物件の相場を調べた。「賃料については従来のオフィスでいう坪単価ではなく、働く人『1人あたりいくらか』という考え方で設定されていることが分かりました。1人当たり単価は月額3万円程度が多く、高いところで6万円でした。そこで、港区の立地優位性を考慮して、3万5000円くらいの設定にしました」(石田氏)

執務室の広さは4~6人用を中心に大きなものでは20人用まで。床の色が各室異なるのが目を惹くところ。それ以外は剥き出しになった壁があるなどシンプルにまとめられている
執務室の広さは4~6人用を中心に大きなものでは20人用まで。床の色が各室異なるのが目を惹くところ。それ以外は剥き出しになった壁があるなどシンプルにまとめられている

執務室の広さは4~6人用を中心に大きなものでは20人用まで。床の色が各室異なるのが目を惹くところ。それ以外は剥き出しになった壁があるなどシンプルにまとめられている

8階にある会議室。外部への貸出も行っている

差別化を狙って、共用部についてはハード、ソフトともに充実させた。まずは、窓辺にある広いキッチン兼ラウンジがポイントだ。人が単に集う場として整備されているだけでなく、月1~2回の講師を呼んでのセミナー、週1回の食事会などのイベントを積極的に開いており、それが新たな発想を生み、コミュニケーションや互いの仕事のシェア、新しい仕事の発生につながるきっかけとなっている。

テイショク西麻布で開かれているイベント風景。食事会は毎週、それ以外のイベントも月に1~2回。イベントでは猫の写真展やワイン会、地図をテーマにした勉強会など、広く関心を集める内容が組まれている

テイショク西麻布で開かれているイベント風景。食事会は毎週、それ以外のイベントも月に1~2回。イベントでは猫の写真展やワイン会、地図をテーマにした勉強会など、広く関心を集める内容が組まれている

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文:中川寛子、写真提供:バリューレイズ

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