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Interview 日本企業は「強い」からこそデジタル変革に臨む意義がある

シュナイダーエレクトリックはIT事業、インダストリー事業、プラント事業の3分野を中心に、日本におけるデジタルトランスフォーメーションを支えていく。

コネクテッドデバイスからソフトウエアまで一気通貫で提供するIoTプラットフォーム「EcoStruxure」を核にした国内での事業展開について、日本統括代表の白幡晶彦氏に聞いた。

シュナイダーエレクトリック日本統括代表白幡晶彦氏プロフィール

――デジタル化は日本企業に何をもたらすのでしょう。

白幡:デジタルトランスフォーメーションを推進することで、これまで難しいと思われてきたさまざまな課題を解決するチャンスが生まれます。ホットトピックの一つになると考えているのは技能・技術の伝承です。

 製造業を対象にしたあるアンケート調査によると、技能・技術伝承の実感を問う設問に、「うまくいっていない」と答えた企業が45%に達しました。「取り組んでいない」企業も多く、40%にのぼっています。

 同じ調査では「取り組んでいない」理由も質問していますが、「経験でしか伝承できない」という回答が圧倒的に多く、「ベテランの定年延長や再雇用で対応」しているとの回答がそれに続きました。

 今はしのげているかもしれませんが、遠くないうちに、多くの企業が技能・技術伝承の課題を直視しなければならない日がくるでしょう。

 日本企業の現場は世界的に見ても強く、優れた技能・技術を持つ人材がビジネスを支えてきました。例えば工場やプラントの保守作業員は設備の一部を工具で軽くたたきながら、どこかに不具合の芽が潜んでいないか聞き分けられます。そんなことができるのは日本企業の人材くらいでしょう。

 当社はこのように個々の人材に紐づいた極めて高い技能・技術や知見、経験をデジタル化していくお手伝いができます。それにより次代を担う若手など誰もが現場で有効に活用できるようにします。これはほんの一例です。強い現場を誇る日本企業だからこそ、将来を見据えてデジタルトランスフォーメーションに臨むことに大きな意義があると考えます。

――「強い」だけに、日本企業がデジタル化を進めるには障壁もありそうです。

白幡:新興国は最初からデジタル化して施設のフルオートメーションを実現できます。これに対して日本企業には何十年も培ってきたインフラがたくさん存在します。それらのインフラをすべて入れ替えることは現実的ではなく、デジタル化の一つのハードルになるとみる向きがあります。

 しかし、当社のIoTプラットフォーム「EcoStruxure(エコストラクチャー)」は、1段目を構成するコネクテッドデバイスがすでに導入済みの他社製品でも構いません。既存の設備・機器をネットワークにつなぐ安価なゲートウェイ製品を用意しています。このゲートウェイを使い、導入済みの設備・機器を段階的に2段目のエッジコントロールや3段目のソフトウエアと接続していくステップアプローチで、デジタル化のベネフィットをいち早く提供します。

シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡 晶彦 氏

――EcoStruxureを日本でどう展開していきますか。

白幡:日本だけでなくグローバルでパートナーとの協働体制を築き、全世界で事業を展開してきました。日本では富士電機との合弁会社である富士電機機器制御が受配電・制御機器事業を、東芝との合弁会社である東芝シュネデール・インバータが産業用インバーター事業をそれぞれ展開しています。パートナーとの協働は当社のカルチャーであり、パートナーなしのビジネスは考えられません。

 国内ではこれまで、EcoStruxureの1段目と2段目、すなわち主にハードウエアを導入するビジネスの割合が大きかったのですが、今後は3段目のソフトウエアを含むソリューションを展開していく方向で、パートナーとの協働体制を広げていきたいと考えています。

 ただし、デジタルトランスフォーメーションの性質上、単にパートナーの数を増やすということは想定していません。むしろ、これまで築いていた協働体制をさらに深化させることを考えています。デジタル化に臨むには、大前提として、IoT化する機器や装置の技術的な知識と業務の知識が欠かせないからです。

 既存のパートナー各社は、データセンターや工場、プラントの現場を熟知しています。OT(Operational Technology)と呼ばれる各種制御システムにも精通しています。当然、工場やプラントへの導入を手掛けた機器や装置について深い知識を持っています。こうしたパートナーに恵まれていることは、日本企業のデジタルトランスフォーメーションを支援していくうえで、他社にはない当社ならではの大きな強みの一つになっています。