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社会との親和性を高めるロボット、パワーデバイスが機動性向上に貢献

社会との親和性を高めるロボット、パワーデバイスが機動性向上に貢献

警備会社大手のALSOKは、人間に代わって様々な作業をこなすロボットの開発を30年以上も前から続けており、いち早くロボットを利用した事業も展開している。同社でロボットの開発を担当する開発企画部 開発企画課 課長代理の土谷尚賢氏と、ロボットに欠かせないモーター駆動系に向けたパワーモジュールの開発を担当するローム パワーモジュールプロジェクト責任者の西岡圭氏が、人間とかかわるインテリジェント・ロボットの将来像や、それを実現するための技術的な課題などについて議論した。

土谷尚賢氏
綜合警備保障
開発企画部
開発企画課 課長代理

西岡氏 セキュリティ・サービスを提供しているALSOKが、ロボットの開発を始めたキッカケを教えて下さい。

土谷氏 ロボットの開発に着手したのは1982年のことでした。その大きな理由の一つは「常駐警備の効率化」です。労働集約性が高い警備業務の効率を高めるためには、ロボットの導入による省力化が有効だと考えました。少子高齢化にともなう労働力不足が近い将来に発生することも、すでに念頭にありました。しかも、ロボットを導入することで、警備員の負担軽減や警備中に発生する受傷事故を防止することもできます。

西岡氏 事業化は、いつごろからですか。

土谷氏 2002年に販売を開始した「屋内用警備ロボット『ガードロボC4』」が最初の製品です。ガードロボC4は、電動モーターで自走できるようになっており、人体検知、火災検知、画像監視などの各種警備機能のほか、タッチパネル付きディスプレイと音声を使ったインフォメーション機能も備えていました。

日本各地の科学館などに広がるロボット

西岡氏 すでに10年以上も前から製品化されていたのですね。現在の製品ラインアップを教えていただけますか。

土谷氏 警備用では2006年から展開している「リボーグQ」が最新機種です(図1)。従来機と同様に、各種警備機能や案内機能を備え、車輪と電動モーターで自走します。電源は充電式で鉛蓄電池を搭載しています。あらかじめ設定したコースを巡回し、巡回が終わると充電ステーションまで自走して戻ります。巡回中は、施設内の警備センターに周囲の映像など、様々な情報を送信します。消火など危険を伴う作業に対応するためのオプション・ユニットも用意しました。

図1 ALSOKが展開しているロボット

 リボーグQは、警備員とロボットが協調しながら働くことを前提に機能の最適化を図っているのが特長です。つまり、複雑な判断や対処は人間が担当し、繰り返しの作業や情報の記憶といったマシンが得意なことをロボットに任せるようにしました。

 リボーグQを製品化してみると、先進性や話題性のあるアトラクションを探している複合商業施設や科学館などからの引き合いも多かったことから、リボーグQの技術をベースにインフォメーション機能を前面に出した「An9(アンナイン)シリーズ」も製品化しました。商業施設などに向けた自走式の「An9-PR」と企業の受付用に開発した固定式の「An9-RR」の2機種があります。実際に、リボーグQやAn9シリーズは、東京タワー、科学技術館(東京都千代田区)、大塚国際美術館、キャナルシティ博多など日本国内の様々な施設で稼働中です。

センシング技術の向上が課題に

西岡圭氏
ローム
パワーモジュールプロジェクト
責任者

西岡氏  ロボットは、人々の生活の身近なところに着実に広がっているわけですね。様々なロボットの機能を実現するうえで、重要な役割を担う技術の一つがセンシングです。ロームは、長年にわたって培ってきた半導体の技術を基に、照度センサー、近接センサー、広帯域イメージセンサーなど様々な種類のセンサーを開発し、さらに通信や発電と組み合わせたソリューションを提供しています。こうしたセンサーの数々は、ロボットの新しい機能を実現するのに役立つのではないでしょうか。

土谷氏 確かにロボットを開発するうえでセンシングの技術は重要です。センシングに関しては今も様々な課題を抱えています。例えば、人の存在や周囲の障害物などを検出するためにレーザー・センサーを使っていますが、このセンサーでは平面しか検知できません。立体的に検出できるようにしたいと思っています。カメラを利用した顔認証システムなどを組み合わせて、人間の全体像を捉えることができるようにもしたいですね。

 このほかにも、移動しながら周囲の物体や人を検出する機能も高めたいと考えています。例えばロボットが移動中は、検出対象が動いているのか、静止しているのかを、なかなか見分けられません。この課題を解決できると、機能が格段に向上します。

西岡氏  もう一つロボットの進化に貢献する可能性があるのが、私が担当しているパワーモジュールです(図2)。モーター駆動回路に欠かせない部品の一つですが、最近ではSiC(シリコン・カーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)など次世代半導体材料を使ったパワー半導体および、これを組み合わせたパワーモジュールの開発が進んでいます。いずれもエネルギーの利用効率が高いので、ロボットの駆動システムの省エネや小型化に貢献するはずです。

図2 小型化を図ったフルSiCの車載用インテリジェントパワーモジュール

 SiCパワー半導体の商品化は、すでに始まっています。例えば、ショットキーバリアダイオード、MOS FET、パワーモジュールといった製品です。実は、2012年4月に日本の半導体メーカーとしては初めてシリコンカーバイドを使ったショットキーバリアダイオードの量産を始めたのはロームです。2012年12月に世界に先駆けてMOSFETの量産を始めたのもロームでした。

「省エネ」と「小型化」が課題

土谷氏 私たちが開発している自走式ロボットは、いずれもモビリティを実現するために二次電池と電動モーターを組み合わせたシステムを使っています。確かに、このシステムの随所でパワー半導体が使われています。

 ロボットを設計する際に「省エネ」と「軽量化」は、いつも気にしています。警備用のリボーグQは、外形寸法が650mm×700mm×1300mmですが、重量が120kgもあります。本体を安定させるためにはある程度の重量が必要なので、むやみに軽量化を図ればよいというわけではありませんが、本体を軽くすれば移動の際の機動性を高めるうえで有利です。

西岡氏 電気自動車やハイブリッド車などでも、モーター駆動回路などの省エネや小型軽量化は課題になっています。そこで、高効率のSiCパワーデバイスで構成した駆動回路と各種保護回路など一体化した小型のインテリジェントパワーモジュールを開発しました。従来のモジュールに比べて容積を10分の1以下に抑えています。ここまで小型化を図った製品は市場で見当たらないはずです。

 この小型インテリジェントパワーモジュールには、新開発の絶縁素子内蔵型のゲートドライバICが組み込まれています。従来は別々に実装されていたゲートドライバICと絶縁素子を一体化すると同時に、新しい構造の絶縁素子を採用することなどによって、一気に小型化を進めることに成功しました(図3)。

図3 絶縁素子内蔵型のゲートドライバICを開発

土谷氏 ロボットのモビリティを高めるうえで、もう一つの悩みのタネが電池です。現在の製品化しているロボットでは電源に鉛蓄電池を搭載していますが、これがかなり重いのです。できるだけ電池を小さく、軽くしたいのですが、自走システムや内部の電気回路を、ある程度以上の時間を稼働させるためには、現在の技術ではかなり重い鉛蓄電池が必要になります。この問題を解決するには、電池本体の改良も必要ですが、システムの省エネや、電池の性能を十分に引き出すためのバッテリ管理システムの性能向上が不可欠です。これによって、1回の充電による稼働時間が長くなれば、ロボットの利便性がぐっと向上します。

社会の変化と密接に関連

西岡氏 この問題は小型化軽量化と同様に電気自動車やハイブリッド車でも大きな課題として挙がっています。そこでロームでは、充電ユニット向けICをはじめバッテリ管理システム向けの各種LSIをいち早く開発し、積極的に展開しているところです。

 ここにきてパワーデバイスに対するニーズが高まる一方で、製品に対する要求が多様化しています。特に複数のデバイスを一体化したパワーモジュールの場合は、市場の要求にこたえることが一段と難しくなっています。そこで、ロームはパワーモジュールの事業体制を強化しました。具体的には、研究、商品開発、製造、品質の各本部を横断する新組織を設けてパワーモジュールの製品化を進めることにしました。

 実はパワーモジュールの場合、社会システムに関連する用途が少なくありません。こうした用途における市場の要求は、従来品に比べてどうしても広範囲に及びます。ところが、従来の組織の枠の中でこうした要求に対応するのが難しいことが分かってきました。そこで、全社の技術やノウハウを幅広く活用できる組織を設けた次第です。社会を視野に入れた技術開発を進めるうえで、このような従来とは一線を画する取り組みが必要になる機会は、ますます増えるのではないかと思います。

お問い合わせ
  • ローム株式会社
    ローム株式会社

    本社/ 〒615-8585 京都市右京区西院溝崎町21

    TEL:075-311-2121

    FAX:075-315-0172

    URL:http://www.rohm.co.jp/