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日経テクノロジーonline SPECIAL

ともに進化する自動車とエレクトロニクス、先進技術の融合がもたらす社会革新

エレクトロニクスやICT(情報通信技術)と融合しながら着々と進化を続ける自動車。自動車を中心に社会の発展に貢献する新しいプラットフォームやサービスが生まれる可能性も見えつつある。そこで、車載用電子デバイスの事業を積極的に展開している半導体メーカー、ロームの代表取締役社長 澤村諭氏と、オートマチックトランスミッションの世界大手として活躍しているジヤトコの代表取締役社長 中塚晃章氏が、自動車の進化の先行きなどについて議論した。

中塚氏

 ジヤトコは、オートマチックトランスミッション(自動変速機)の専門メーカーです。エンジンがもたらす動力を最適なかたちでタイヤに伝えるトランスミッションは、自動車の快適な走りを実現するために不可欠な装置です。

 トランスミッションには、ドライバーが手動で変速するマニュアルトランスミッションもありますが、ジヤトコは自動的に変速するオートマチックトランスミッションを専門に扱っています。オートマチックトランスミッションの出荷量ランキングでは、世界第2位です。オートマチックトランスミッションの中でも、特にCVT(無段変速機、Continuously Variable Transmission)を得意としており、CVTの市場では世界全体の49%とトップシェアを誇っています。

中塚晃章氏
ジヤトコ 代表取締役社長

 目下のところ、2020 年までに世界第1位になることを目標に掲げ、事業の強化に取り組んでいます。出荷量だけでなく、製品の「品質」、製品の市場競争力につながる「革新技術」、従業員の活気といった企業の実体の面でも世界一を目指すつもりです。実体が向上すれば、おのずと数字がついてくると思っています。

従来型と次世代型が同時に進化
澤村氏

  1958 年に抵抗器メーカーとして創業したロームですが、いまや売り上げの80%以上は半導体デバイスです。創業当初から手掛ける抵抗器のほか、タンタルコンデンサなどの受動部品や各種モジュールも提供しています。受動部品からLSIまで幅広く扱っているデバイス・メーカーは世界でも珍しいのではないでしょうか。

 近年は新しい分野の市場開拓にも力を入れています。特に注力しているのが車載機器と産業機器です。実際に、これらの分野の売り上げは着実に伸びています。

中塚氏

 車載向けの市場には、いつごろからかかわっておられるのですか。

澤村氏
澤村諭氏
ローム 代表取締役社長

 注力するようになったのは約10年前からです。最初は、オーディオ機器などインフォテインメント系のお客様が中心でした。それからボディー系、パワートレイン系などへと領域が広がってきました。

 ロームは、創業時より掲げている「企業目的」の中で品質を第一とすることをうたっています。我々の品質に対する姿勢は、最も高い品質を求められる自動車業界の皆さんにも評価されていると考えています。

 素材からパッケージ製造、さらには生産設備の開発まで、社内で一貫して手掛ける垂直統合型の事業体制も我々の強みです。垂直統合型は、生産工程の隅々まで目が届き、プロセス全体をコントロールできるため、厳密な品質管理が可能なうえ、確実な製品供給体制を確立する点でも有利だからです。車載用の製品を製造するうえで、品質や生産体制の管理が重要なのは、これからも変わらないと思います。一方で次世代自動車へとつながる技術革新が加速するなど、自動車業界では大きな変化が始まっています。

進化とともに浮上する新たなニーズ
中塚氏

 HEVやEV、水素などの再生可能エネルギーを利用する自動車など次世代自動車をめぐる動きはどうしても目立ちますが、従来型自動車の市場も活発に動いており、発展を続けています。例えば、自動車市場が普及期にある新興国では、需要の中心は従来型の自動車です。このため、最先端の技術をベースにした自動車と従来型の自動車の市場のそれぞれについて、状況に応じた取り組みが必要だと考えています。

澤村氏
図1 次世代自動車の進化に欠かせないSiCパワーデバイスを業界でいち早く投入(ローム)
[画像のクリックで拡大表示]

 半導体デバイスや電子部品のサプライヤである私たちは、従来型自動車と次世代自動車の両方で新しい需要が生まれることを期待しています。実際、従来型自動車の半導体需要は大幅に増加しています。電動システムを搭載する次世代自動車では、一段と多くの電子回路が搭載されることになるでしょう。自動運転車の開発や、ICT(情報通信技術)を駆使したITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)の普及に向けた取り組みも始まっています。これらの動きが進むにつれて、半導体や電子部品に対する新しいニーズが、次々と浮上するのではないでしょうか。

中塚氏

 その通りです。例えば、私たちが提供しているトランスミッションは、これからもっと「賢く」なるべきだと思っています。「賢く」というのは、動力を伝えるという基本的な機能以上のことを提供することです。その一例が、トランスミッションで変速するときにドライバーが受ける「感じ」を調整することです。私たちの業界で“味付け”と呼んでいますが、そのフィーリングに対する評価は、国や地域によって変わります。それぞれの国や地域のお客様の好みに合わせて調整することは、製品を展開するうえで重要なことです。

 “味付け”のような微妙な調整には、情報が必要です。その情報の収集や伝達を担うのは電子的なシステムになるでしょう。したがって、この部分の技術を発展させるうえで、半導体や電子部品メーカーの皆さんに期待するところは大きいです。

 自動運転車やITSが本格的に普及するのは、まだしばらく先になると見ています。ただし、こうした最先端のシステムのために開発した技術の一部は、先行して従来型の自動車にも転用されるはずです。これによって先進的な半導体デバイスや電子部品に対する需要が従来型自動車の市場でも生まれるでしょう。

将来に向けて事業体制を強化
澤村氏

 HEVやEVのように動力源がエンジンからモーターに置き換わると、トランスミッションというユニットの機能や役割が変わるのではないでしょうか。

中塚氏

 エンジンを搭載しない自動車が 増えてくるとトランスミッションの市場がなくなると言う人もいますが、実際はトランスミッションメーカーの役割は、今よりも増えるでしょう。先ほどお話しした“味付け”をきめ細かく実現するために、動力源から路面に駆動力を伝える機構の間を電子的につなぐ“頭脳”が必要になるからです。

 自動車の電動化が進む中で継続して事業を発展させるための取り組みとして、私たちが将来担う役割や開発すべき技術を検討するための研究部門「未来技術センター」を、従来型自動車向けの技術開発部門とは別に2012 年に立ち上げました。将来の発展の道を探るうえで、従来の業態の枠組みの中だけでは検討できない課題も浮上してくる可能性があります。未来技術センターでは、業態を超えたアライアンスの可能性についても検討する方針です。

図2 未来技術センターでの開発(ジヤトコ)
澤村氏

 自動車の進化に伴う新しいニーズに対応できるように、半導体デバイスや電子部品を提供する私たちも準備しておく必要があると思っています。

 私たちは、業界でいち早くシリコン・カーバイド(SiC)を使ったパワーデバイスを製品化しています。このデバイスの需要は、次世代自動車が普及する時代になると急増すると見ています。

中塚氏

 SiCパワーデバイスは、省エネに貢献するデバイスとして注目を集めていますね。

澤村氏

  その通りです。SiCは、従来の半導体に比べて損失が小さいうえに、高速動作を高温状態で実現できます。従来のパワーデバイスを、これに置き換えると、エネルギーの利用効率が高まり、大幅な省エネと小型軽量化が可能となります。

 具体的な製品は、ショットキーバリアダイオード、MOSFET。さらにこれらのデバイスを組み込んだパワーモジュールです。現状では定格電圧1200Vで定格電流180Aまで製品を揃えており、発電設備や電源装置などで採用が進んでいます。最近では自動車にも搭載されるようになりました。2016年以降になると自動車の基本システムであるパワートレイン系にも採用が広がるでしょう。2020年になるころには自動車向けを中心にSiCパワーデバイスの市場が本格的に拡大すると見ています。こうしたニーズに対応できるように定格電圧および定格電流の大きい素子の開発を進めているところです。

 そして、自動車の業界に限ったことではなく、システム全体を効率化したいというニーズも、ますます高まるでしょう。我々は得意とするアナログ技術を駆使した制御ICや各種ディスクリートなど複数の部品を組み合わせて一体化する「モジュール化」も進めています。 

 お客様のニーズが変わり、市場が拡大したとしても、結局「強い企業」しか生き残れません。常に市場で優位に立つために、社内で培ったコア技術を生かすことが重要です。コア技術が市場のニーズに一致したときに、大きな需要が生まれます。ロームのコア技術、つまり「強み」は何かという問題は、いつも考えています。

 約10 年以上前から車載用半導体を手掛けていますが、市場のニーズを的確に把握するために、今まで以上に自動車業界の皆さんとの関係を深めていきたいと思っています。

事業継続性の強化は必須
中塚氏

 自動車の進化とともに自動車産業と社会のかかわりは、ますます深くなるでしょう。これとともに一段と重要になる取り組みの一つに、「事業継続性」の強化があると思います。

 自動車産業のサプライ・チェーンは、他の業界に比べてかなりタイトです。しかも、ジヤトコの場合、東日本大震災の余震で甚大な被害を受けたこともありBCM(Business Continuity Management、事業継続マネジメント)については厳しく取り組んできました。今後も継続して強化を図るつもりです。

 具体的には静岡県富士市の本社内に設置した「BCMセンター」を中心に、世界各地の拠点を網羅した管理体制を構築。非常事態が発生したときには、BCMセンターを中心に、事業体制を速やかに立て直すシステムを設けています。想定シナリオを用意したトレーニングを定期的に実施していますが、大雨の際などに、このシステムを実際に発動させています。決められたプログラムを、すでに何度も実践しているので、現場には定着しているはずです。

澤村氏

 ロームの生産拠点も東日本大震災で大きな被害を受けました。また、2011年に発生したタイの洪水の際にも、現地の工場が浸水し、甚大な被害を受けています。これを契機に、BCP(Business continuity planning、事業継続計画)を、一から見直し、大幅に強化しました。

 まず日本国内だけでなく世界中の工場の災害リスクを洗い出したうえで、いかなる被害が発生した場合でも影響を最小限に抑えるための対策を進めました。多拠点化や在庫の分散管理などを含む強力なBCPを策定し、工場の建屋の防災化に努め、BCP 訓練も徹底しています。今後も強化を続け、自動車産業はもとより全てのお客様に安定供給できる体制を構築していきます。

「環境」と「安全」が変化の契機に
中塚氏

 自動車産業と社会のこれからを考えるうえで、「環境」と「安全」は避けて通れません。従来型自動車の需要は当面は継続すると見ていますが、大量生産を前提にし、二酸化炭素(CO2)を排出する従来型自動車のビジネスは、これらの課題に立ち向かわなくてはなりません。それを念頭に置いて、これからも従来型自動車に向けた技術開発を進める一方で、次世代自動車に向けた先端技術の開発に取り組む考えです。

澤村氏

 世界では、さまざまな社会的な課題を解決しつつ、企業活動を実践していくCSV(共通価値の創造)という考え方が広がっていますが、我々にとっては決して新しい考えではありません。ロームは創業時より掲げる「企業目的」に基づき、品質を第一とした良い製品の供給やものづくりを通じて、文化の進歩向上に貢献できるよう挑戦を続けてきました。この考えは変わることなく、今後も省エネやCO2削減に役立つ高効率のデバイスを積極的に展開するほか、安全や快適を実現する製品を開発することで、将来にわたる自動車産業の発展や社会的な課題解決に貢献したいと思っています。

お問い合わせ
  • ローム株式会社
    ローム株式会社

    本社/ 〒615-8585 京都市右京区西院溝崎町21

    TEL:075-311-2121

    FAX:075-315-0172

    URL:http://www.rohm.co.jp/