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本気の「共創」に挑む人たち(前編)

本気の「共創」に挑む人たち(前編):優良企業ほど不慣れな「共創」、今を変える勇気が次世代を拓く

2015年7月から始まる富士通提供の新ビジネス創出講座「ビズラボ」。次世代を担うリーダーが幅広い業種から集まり、業種を超えて議論しながら本気でビジネスプランをまとめ上げるというユニークなプログラムを展開している。新事業や異業種連携を推進するコミュニティーの育成を目指す日経BP社のプロジェクト「リアル開発会議」の一環として企画されたビズラボに集まった面々に、プログラムの開始に先駆けて「共創」そしてビズラボへの期待を聞いた。この前編では、共創を目的とした場に初めて参加する人たち。後編では、富士通が主催した「新次元ものづくりワークショップ」など、共創をすでに経験した人たちの声を紹介する。

大八木 崇氏
グローリー株式会社 保守本部 保守事業統括部 保守営業部
大八木 崇氏 金融機関で使う通貨処理機などを提供するグローリーの中で、保守・メンテナンスを担当している。同社における保守・メンテナンスは、これまでは、営業が売った機器の顧客に提供するサービスとしての位置付けに過ぎなかったという。保守をベースにして収益が上がる新規事業を創出し、会社の次世代を拓くことを目指している。
古賀 太一郎氏
グローリー株式会社 国内事業本部 金融営業統括部 OEM営業部
古賀 太一郎氏 グローリーでは営業を担当。同社は2018年に創業100周年を迎え、長期にわたって安定した事業を営んできた実績が強みである。その半面、従来事業の壁を破って新規事業を創出する点では弱みがあると感じている。「ビズラボ」に参加する新規事業の創出に多くの実績を持った企業の活力と手法を取り入れ、新規事業の創出に役立てたいと考えている。
魚島 信二氏
グローリー株式会社 国内事業本部 金融営業統括部 OEM営業部 部長
魚島 信二氏 グローリーの中では、OEM事業の営業部隊を指揮・管理している。新機軸の事業を生み出すため、「ビズラボ」に部下を送り出す立場。営業として、出身地である九州(福岡、熊本)を起点に、東京、金沢、広島と各地で営業してきた経験を持つ。
新井 隆之氏
JSR株式会社 先端材料研究所 主任研究員
新井 隆之氏 合成ゴム、ならびに半導体やディスプレイの製造に必要なファイン材料の大手サプライヤーであるJSRで、2014年10月から次世代の事業の種になる技術の開発に従事。前職では、有機ELディスプレイ用材料の開発を担当していた。近年、会社の柱となる事業に育つ可能性を秘めた技術の開発が少なくなっていると感じている。温めているアイデアを具体化する道を探るため、「ビズラボ」に参加した。
菊池 拓実氏
三菱日立パワーシステムズ株式会社
サービス戦略本部 横浜サービス部 産業用火力営業グループ
菊池 拓実氏 火力発電システム事業の会社である三菱日立パワーシステムズの中で、アフターサービスを担当している。入社2年目。日本国内の産業用自家発電設備を納入している顧客に対して設備の信頼性向上や省エネルギー化改造などのサービスに関する営業が主な仕事だが、同時に業務として新規事業の創出にも携わっている。8年間米国に在住していた経験がある。

−−これから皆さんは、異分野の他社の人たちと一緒に、尖ったアイデアを事業化できる企画書に落とし込む「共創」に取り組むことになります。これまで、他社との共創で新規事業を創出した経験はありますか。

大八木氏:仕事の中では、共創よりも「協業」の方が身近ですね。機器メーカーの保守担当という立場で、お客様の課題を解決するために、お客様との協業をしてきました。また、グローリーからの提案ではなく、経営層同士の人脈の中で出てきた「グローリーの保守機能が使えないか」といった話を起点として、他社と協業する場合もあります。本当にゼロから何かを作り上げていく共創は経験がありません。

古賀氏:私たちの会社に限らず、ある程度の規模と歴史を持つ企業では、おそらく共創という概念が根付きにくい環境にあると感じています。どうしても既存事業が優先され、それとの整合性が共創する上でも前提になってしまうからです。よほど発想と体制を変えないと、本当に創造性の高い共創はできないのではないでしょうか。このため、言葉としての共創は知っていても、あまり現実味のある言葉ではなかったように思えます。

魚島氏:会社にとって目先の事業も重要ですが、将来に向けて製品やサービスの在り方を大きく変える必要性もひしひしと感じています。新しいことに取り組もうとする掛け声としての共創という言葉は出ているのですが、いかんせん新しいことを生み出すことに慣れていないのです。長年同じような機器を扱っていると、対象と手法が凝り固まりがちです。未来を拓くためには、未知の世界を共に描く、予定調和ではない共創が必要だと感じています。

−−会社の事業が安定している時には、新たな収益源を確保することに逼迫感はありませんから、優良な企業ほど新規事業を創出するのに慣れていない面があるかもしれません。他の企業と連携を取りながらの事業創出は、なおさら敷居が高そうですね。

新井氏:私たちの会社にもよく似た事情があります。JSRでは、他の企業と連携していく場合、基本的に協業が中心になります。材料の組成や生産方法など技術的なノウハウが商品の価値を生み出す素材を扱う企業であるため、秘密保持、知財の流出を避けるという観点から、手の内を曝け出しての連携がやり難いのです。このため、残念ながら研究開発の段階での共創というところまでは踏み込めない状況です。

−−全く共創した経験がないのでしょうか。

新井氏:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに複数社で共同参加した経験があります。しかし、こうした共同プロジェクトでは、事業の核心に触れるような知見はお互い表には出さないのが普通です。もちろん研究開発には真剣に取り組んでいるのですが、会社の利害に関係する部分での情報公開の制限は致し方ないのかもしれません。本当の共創を素材メーカーが行うためには、新しい仕組み作りから始めないと難しいように感じます。

菊池氏:私自身は、社内で、火力発電以外の多様な技術を横断的に取りまとめている人たちと共同で、新しいサービスを生み出していく取り組みに参加しています。現在は事業化に向けて、お客様の声を聞きながら検討を続けています。共創を考えた場合、お客様と近い立場で一緒に検討することが重要だと考えており、私の部署はお客様に近いのでやりやすいと感じますが、そうではない部署ではお客様との接点の確保が重要だと思います。

−−必要性は感じながら、実際には、共創ができる状態は得難いようですね。皆さんは、ビズラボにはどのような経緯で参加することになったのでしょうか。

大八木氏:同じ部署の者が富士通様主催の「新次元ものづくりワークショップ」に参加していて、新規事業の創出方法としての共創の面白さについて聞かされていました。異業種の人たちが集まって、活発に意見を交わして製品やサービスのアイデアを磨いていく場をとても新鮮に感じました。私は部署の中では若年の部類なのですが、今のうちに普段とは違う場で経験を積むことが重要だと感じて参加しました。ビズラボの場を借りて、自分の中で凝り固まったものを壊すことができればと考えています。

古賀氏:私も同様ですね。これまでの私たちは、さまざまなお客様からの要望や提案に対して、既存の事業の枠組の中でできることしか応えられなかったように思えます。他業種の方の意見を直に聞くことができるビズラボは、これまでにはできなかった事業を検討する上で、従来の枠を破るブレークスルーを探る契機になると考えています。

新井氏:ビズラボへの参加は、企画担当者が申し込みました。新規事業を研究開発の部署が中心になって見つけていこうという狙いから、研究開発部門の私が参加することになりました。

菊池氏:私は上司の勧めで参加します。現在、私の業務の約5割が新規事業を推進する仕事になっています。そこで活用できる知見を広げていきたいと考えています。社外の人とかかわる機会はより多く持つ必要があると感じているので、こうした知見を広げる場はとても貴重です。

−−ビズラボでは、どのような知見を得て、スキルを磨きたいと思われますか。

新井氏:これまでにも、よりよい新規事業を生み出すため、ビジネスモデルを策定するための方法論であるビジネスモデルキャンバスやデザイン思考といった手法の勉強をしてきました。しかし、単に知識を勉強しただけでは、新規事業を生み出す上でのツールとして活かすことができません。やはり実践を通じて、知識を使いこなせる経験を蓄積していく必要があるのです。ビズラボでは、実際にアイデアを企画書に落とし込むプロセスを経験して、実践的な力をつけたいですね。

−−何か具体的な課題を持って参加するのでしょうか。

新井氏:「この技術の事業化を考えなさい」といった会社から与えられた具体的な課題はありません。しかし、私自身には実現性を検証し、具体化したいビジネスモデルのアイデアがあるのです。それをどこまで企画書に落とし込めるか、腕試しとて取り組んでいきたいと思います。そして、具体化したものを会社に持ち帰り、広げていけたらと考えています。

古賀氏:私は、先入観を持つことなく、フラットな気持ちで、他の参加者の知見や発想を吸収したいと考えています。先入観があると、どうしても既存事業と結びつけて考えてしまいますから。私たちにとって新しい感覚を、少しでも多く会社に持ち込むことができればと思っております。

魚島氏:ビズラボに社員を送り出す立場としては、最先端の新規事業創出の取り組みを経験して得た知見を起爆剤として、会社の中をかき回してもらいたいですね。

菊池氏:私は、ビジネスモデルを作っていく時の発想法や、私と同じようにサービスを担当している他業界の人が持っている知見を学びたいと考えています。ここで得た知見を、会社で進めている新規事業の創出にすぐに活用していきたいですね。

(後編に続く)