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本気の「共創」に挑む人たち(後編)

本気の「共創」に挑む人たち(後編):「『共創』は言葉遊びに非ず」、新ビジネス創出の可能性を実感

次世代を担うリーダーが幅広い業種から集まり、業種を超えて議論しながら本気でビジネスプランをまとめ上げる新ビジネス創出講座「ビズラボ」。富士通が提供するかたちで実施する同企画が、2015年7月から始まる。ここに参加する面々に、プログラムの開始に先駆けて「共創」そしてビズラボへの期待を聞いた。共創を目的とした場に初めて参加する人たちに聞いた前編に続き、後編では富士通が主催した「新次元ものづくりワークショップ」に参加し、共創をすでに経験した人たちの声を紹介する。

並木 学氏
株式会社LIXIL R&D本部 主幹
並木 学氏 建材の大手サプライヤーであるLIXILの中で、研究部門を統括するR&D本部において、将来の事業を生み出す技術戦略の立案に携わっている。2011年の建材5社からなるLIXILへの統合以前は、一貫して生産技術の開発を担当していた。アイデア出しから事業計画に至るまでのより良いプロセスの姿を探るため、「新次元ものづくりワークショップ」に参加した。引き続き、アイデアを事業計画にまで落とし込む「ビズラボ」にも参加する。
八木田 寛之氏
三菱日立パワーシステムズ株式会社 サービス戦略本部 横浜サービス部 
技術戦略グループ グループ長代理
八木田 寛之氏 世界有数の火力発電メーカーである三菱日立パワーシステムズの中で、産業用火力発電設備のセールスエンジニアとして国内・海外顧客を巡ると同時に、新規事業の創出にも携わっている。三菱重工グループにおける新規事業開発プロジェクトを旗揚げし、メンバーとともに1040件ものアイデアを出し、その中から斬新な事業を生み出した経験を持つ。社外の知恵を生かし、社内に新しいムーブメントを作り出したいと考えている。
木村良平氏
グローリー株式会社 保守本部 保守事業統括部 保守営業部 担当部長
木村良平氏 金融機関で使う通貨処理機などを提供するグローリーの保守営業部の中で、新しい事業の姿を探っている。入社後20年間、技術開発に携わり、その後営業、そして立ち上げた直後のコールセンターの責任者を歴任、多角的な視点を持っている。旧財閥グループの壁を超えた企業合併、異業種の企業間での協業・共創といった時代のダイナミズムを、後進の若い世代にも体験してもらい、会社の次世代を拓く新規事業を創出して欲しいと考えている。

−−革新的なビジネスを生み出す方法としての「共創」が注目されています。「新次元ものづくりワークショップ」に参加する以前、共創というキーワードに、どのようなイメージを持っていましたか。

木村氏:私は、共創は、単なる言葉の遊びのようなものと感じていました。私たちの会社では、お客様から出された難しい要求を、社内のさまざまな部署が協力し、さらに当社に出入りする業者の知恵も借りて、問題を解決していく場面がよくあります。こうした時に共創という言葉が使われました。共創とか「協業」といったカッコイイ言葉を使った方が、結束しやすいですからね。しかし、業務内容自体には、それほど新味はなかったように思えます。

並木氏:私たちの会社では、自社の発想だけにこだわっていては、新味のあるビジネスを創出できない状況にあることを自覚していました。その状況を打破するため、共創の必要性を感じていました。統合前の旧5社の時代、私たちの研究開発は、自前主義で進められてきました。社外との連携は、あまりなかったのです。統合によって研究開発の体制の規模は大きくなりましたが、それでも会社の次世代を支える新規事業を自前主義だけで生み出すことに限界を感じ始めています。このため、オープンイノベーションを効率良く活用し推進していく方向に舵を切りました。そして、われわれが将来やりたいこと、これからしなければならないことを、社外に積極的に発信しています。

−−「新次元ものづくりワークショップ」に参加した後で共創に対するイメージに変化はありましたか。

木村氏:ICT企業である富士通が、これまで関連性のなかった企業の間を取り持って新規事業の創出を促しているという事実を知り、実際に体感できただけで驚きでした。最初は人数合わせのようなかたちで半信半疑の状態で参加したのですが、こうした言葉遊びではない共創が世の中で求められるようになっていることを実感しました。グローリーの若い社員には、こうした変化を直に感じ、世間の一流企業ではどのような方法で新規事業を立案しているのか、そして実際に事業化できる企画書まで落とし込んでいくのか、ぜひ経験して欲しいと感じました。

並木氏:私は、オリンピックをテーマにしたワークショップで、学生と一緒に新規事業を考えました。私たちのような社会人では発想できないアイデアが多く出てきました。しかし感心したのは、ちょっと違う部分でした。いかに面白いアイデアでも、実際に事業に仕上げようとすると、徐々に面白みに欠けるものになってしまいがちです。「新次元ものづくりワークショップ」では、ただ面白いだけではない、事業化に近いアイデアが出ていたように思えます。これは、富士通の技術を利用するという背景がキッチリとあったためだと考えています。共創でアイデア出しをする上で、ある程度の前提条件を置くこの方法は、実際の事業創出でも有効だと思います。

−−これから、磨いたアイデアを事業化できる企画書に落とし込む「ビズラボ」が始まります。企画書のレベルに仕上げる過程では、どのような点が重要になると思われますか。

八木田氏:共創のゴールがどこにあるかを明確にしておくことが、とても重要だと思います。アイデアを出し合う作業は楽しく、ワクワク、ドキドキする時間です。楽しい作業ですから、多くの人が参加したいと考え、活発な議論が交わされます。一方、立案したアイデアの実現過程は対象的に厳しい局面に立ち向かい続けることになります。なぜ一緒に新規事業を考えているのかハッキリしないと、継続できる事業に仕上げることはできないでしょう。競合他社に対する競争優位性を、共に真剣に作り込む作業が欠かせないからです。ここは、楽しさだけでは乗りきれません。

木村氏:企画書に仕上げるのは、そう簡単な作業ではないかもしれませんね。さまざまな分野、立場の人が参加する共創では、ともすれば責任の所在が不明確になりがちです。参加するメンバーそれぞれが責任感を持って共創していくためには、メンバーそれぞれが明確な目的を持っていなければならないと思います。

−−どのようなゴールを描くのが効果的なのでしょうか。

木村氏:参加しているメンバーが、社会に貢献できる事業を作っているという共通認識を、ハッキリと自覚できるようにしておくことではないでしょうか。いかに高収益であっても、社会から受け入れられない企業は必然的に消えていきます。生み出すビジネスが、まず社会のためになること、そしてお客様のためになること、ひいては参加するメンバーそれぞれの会社のためになることを念頭に置き、これに賛同する人を集めることが成功のポイントになると思います。

八木田氏:私は、実際のビジネスでは、お客様と一緒にビジネスを共創していくことが重要だと考えています。お客様とサプライヤーという関係は共通のゴールを描きやすく、緊張感を持って真剣に共創に取り組むことができます。さまざまな分野から参加者が集まるビズラボでは、多様なお客様と、よりよい共創を進めるための方法を探る場にできるのではと期待しています。

−−なるほど、収益を上げる事業をしていくことが前提の企業同士では、検討する事業が具体化すればするほど、共創が困難になってくるということですね。その壁をビズラボでどのように超えるかが、チャレンジになりますね。

並木氏:企業が集まって共創していく以上、その過程で、さまざまなゴタゴタが発生することは容易に想像できます。実際問題、参加する企業には、それぞれ別の思惑がありますからね。ビズラボは、中立的な立場である日経BP社が、共創のベースの部分を仕切ってまとめていく仕組みです。当事者以外のつなぎ役がいることで、共創の困難な部分を解消できるのではと期待しています。

八木田氏:また、企画書のレベルから事業化に移った先でも、「リアル開発会議」という 共創の次の仕組みに引き継いでいくことができます。富士通が主催する共創プロジェクト「イノバタ」は、そこの建て付けが特徴的です。ビズラボで作り上げた企画書のうち、よいものは積極的に「リアル開発会議」に駒を進めていくべきだと思います。「ビズラボ」、そしてリアル開発会議へと、共創の枠組の中で事業を段階的に具体化していくかたちを作ることが重要になります。日経BPが保有している人脈と記者が持っているアイデアを用いて新規事業の実現性を上げ、事業自体を育てることに結びつけられる点が、他では出来ないことだと思います。