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「新次元ものづくりワークショップ with NPO法人ハナラボ」レビュー

「新次元ものづくりワークショップ with NPO法人ハナラボ」レビュー,世界から集まる旅行者が求めるサービス、女子大生の感性でビジネスを創造

「オリンピック」をテーマにした富士通主催の「新次元ものづくりワークショップ」の最終成果発表会が、2015年5月15日に開催された。2015年3月から2カ月間にわたって実施された同ワークショップでは、初めての試みとして社会人とともに現役女子大生が参加。学生ならではのまっすぐな発想を活かしながら、世界から集まる旅行者を対象にした新事業の可能性を探った。最終発表会では、斬新なアイデアに基づく新事業案が相次いで発表された。

 新次元ものづくりワークショップは、専門分野も、立場も、年齢も違う企業人が集い、持っている知恵を出し合って革新的な新事業の創出を目指す場だ。いまや過去の成功体験だけにこだわっていると、企業は新しいビジネスを生み出すどころか、生き残ることすらままならない時代になった。企業の前に立ちはだかる数々の課題を解決するには、自社だけでは気付けないアイデアを発掘し、それを徹底的に磨き上げる仕組みが必要だ。「新次元ものづくりワークショップ」は、その一つとして企画されたものである。参加者は、富士通が運営する会員制サイトなどで募集しており、毎回30名程度が参加している。これまでに「IoT」や「ビッグデータ」などとテーマを変えながら、何度か開催してきた。今回の「オリンピック」は六つ目のテーマに当たる(図1)。

図1 2015年5月15日に開催された「新次元ものづくりワークショップ」

 2020年の東京オリンピック/パラリンピックは、次世代の日本の姿を世界に向けてアピールできる千載一遇のチャンスだ。この機会に世界の人の心をつかむ新しい製品やサービスを打ち出したい。そこで、オリンピックをテーマにした今回のワークショップでは、日本の強みや良さを生かすことを前提に、海外からの訪問者に感動を与える新しいサービスモデルの企画に挑んだ。この新次元ものづくりワークショップでは、実験的な趣向を採り入れた。社会課題に取り組む女子大生が集うNPO法人ハナラボの協力を得て、現役女子大生を参加メンバーに迎え、彼女らを中心にワークショップを進めた。この狙いは、学生ならではの新鮮な感性を活かした画期的な事業案を生み出すことだ。

  事業計画を練る際の検討項目として実現性や採算性は欠かせない。しかし、そこにこだわり過ぎると、自由な発想に足かせをはめてしまう可能性もある。経験豊かな社会人であればこそ陥りがちなこうした“罠”を取り払うのが、彼女たちの役割だ。つまり学生の感性を活かして、世の中が求めていること、必要だと感じたことを真っ直ぐに追求することを目指した。

 今回のワークショップに参加したのは、社会人が32名と学生が12名。それぞれ両者が混じった六つのグループに分かれた。そのうえで、オリンピック観戦に日本を訪れた人たちへのサービスを、「訪日」「宿泊」「食事」「観戦」「観光」「帰国」の6つのサブテーマに分け、各サブテーマを一つのグループが受け持った。

  ワークショップでは、学生メンバーが主にアイデアを考え、社会人メンバーがそのアイデアに磨きをかける役割を担った。3月末から活動を開始。この間に全員が集まるワークショップを5回実施している。このほかに学生メンバーは、独自にディスカッションやフィールドワークを実施し、事業案を練り上げ、発表会におけるプレゼンテーションに向けてプロトタイプも準備した。

新規事業の成功は真剣さの先に

 約2ヶ月間にわたる活動を経て迎えた発表会では、審査員が事業案を評価し、その結果にしたがって表彰した。審査員を務めたのは、三菱重工グループの新規事業開発「K3プロジェクト」の推進役を務める三菱日立パワーシステムズ サービス戦略本部横浜サービス部 技術戦略グループ グループ長代理の八木田寛之氏、富士通デザイン 代表取締役社長 上田義弘氏、富士通 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 統括部長の田中義孝氏、富士通 産業・流通 プロモーション企画推進部 部長 武田幸治氏である。審査では、①新規性、②ユーザー目線、③ビジネス目線の三つのポイントに加えて、富士通らしく、④ICT利用という点も加えた。

  発表会冒頭では、審査員の一人である八木田氏が、大企業での新規事業開発の現場について講演。新規事業創出するうえで大切なことを、具体的な実体験を交えながら熱く語った。K3プロジェクトでは、実に1040件ものアイデアを出し、その中から究極的な水の循環利活用システム「プライベートウォーターシステム」という斬新な事業を生み出した。どんなに画期的なアイデアであっても、それを事業に仕上げる過程では、想定外の困難が次から次へと現れる。それを乗り越えることができるか否かを決める要因は、いかに真面目に取り組んだかではなく、いかに情熱を持って真剣に取り組んだかに掛かっていると八木田氏は強調した。

発表後に一段と膨らむアイデア

 講演に続いて、まず各グループがそれぞれのテーマをベースに考えた事業案を発表した。プレゼンテータを務めたのは学生メンバーである。いずれのチームも、真剣に取り組んできたのか、発表に臨む学生の緊張している様子からひしひしと伝わった。各チームの発表者は、サービスの利用シーンを見せる寸劇を交えるなど思い思いの工夫を凝らして、その有用性を訴えた(各チームの発表内容は別掲のコラムを参照)。

  提案された新サービスは、いずれも新鮮なものばかり。学生らしく、ただ便利なだけではなく、人と人のつながりを作り出し、演出する提案が多く出てきた。社会人が何人集まっても、なかなか出てこないアイデアかもしれない。

 すべてのグループが発表を終えた後、ワークショップのプログラムの一環として、社会人メンバーも交えてグループごとに発表した事業案のさらなる可能性について議論した。このとき社会人メンバーからは経験をふまえた数多くのアドバイスが出てきた。発表が終わり緊張感から開放された学生も、饒舌に思い思いの感想、さらに発展したアイデアを話していた。

 このあと迎えた結果発表で、総合優勝を勝ち取ったのは、「宿泊チーム」である。サービスの完成度もさることながら、オリンピックという機会に高齢化という社会問題に果敢にチャレンジしたことが評価された(図2)。

図2 総合優勝を勝ち取った「宿泊チーム」の代表と審査員の面々

 学生ならではの斬新な発想を活かして、より革新的な新事業を生み出すことに挑んだ今回のワークショップ。実際に、社会人だけでは、とても思いつかなかったであろうアイデアがいくつか登場した。専門分野、社会的な立場や年齢など様々な枠を超えたコラボレーションが事業開発に大きな可能性をもたらすことを改めて認識した参加者は少なくないはずだ。