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セミナー&体験ワークショップ「アクティブシニアの楽しい老後を考える」レビュー

活動的な高齢者をIoTでバックアップ 異業種の化学反応による斬新なアイデアが続々

 「共創」による新しいビジネスの創出に取り組む富士通がワークショップ「アクティブシニアの楽しい老後を考える~健康でいるために、IoTがサポート出来ること~」を開催した。高齢化が大きな問題として浮上する中で存在がクローズアップされている「アクティブシニア」。つまり、健康を維持しながら社会で積極的に活動したい高齢者をIoT(Internet of Things)の技術で、どのように支援できるかを議論し、そこから新たなビジネスモデルを描き出すというのが、このワークショップのテーマだ。

 今回のワークショップには、公募などで集まった約30名が参加した。いずれも企業などで働いているが、その業種や所属部門は様々である。テーマは「アクティブシニアの行動や気持ちから、IoTでサポートできることを考える」。つまり、アクティブシニアをバックアップするうえでの課題や目標を整理し、それに対してIoTをどう活用できるかを考えるというものだ。参加者が、3〜4人単位のグループ6つに分かれてワークが始まった(図1)。

図1 「アクティブシニアとIoT」をテーマにワークショップ開催

 最初にアクティブシニアの行動を実感するために、アクティブシニアの日常を表す数多くの写真や資料から気づきを抽出するワークを実施した。参加者は壁に張り出された写真や資料を見て気づいたことを付箋紙に書き出し、それぞれの写真や資料に貼っていった。用意された写真や資料は、アクティブシニアと呼ばれている人たちの行動を断片的に切り取ったものに過ぎない。自らがアクティブシニアの立場になって考え想像を膨らましていく。参加者は、写真や資料をじっと見つめながら、次々と付箋紙にコメントを書いていた。「一人より複数の方が楽しそう」「暗い面にICTを使えないか」「シンプルなサービスが理想的」など、各参加者の「気づき」を書いた付箋紙がどんどん壁に並んだ。この作業によって、アクティブシニアの日常がどのようなものか、どんなテーマが重要になってくるかなどを、参加者全員で共有する(図2)。それによって、一人では思い浮かべられないような多くの情報を全員にインプットするのが狙いだ。気づきの背景まで含めた情報共有も進むように、付箋紙で貼るだけでなく、口頭で感想を述べる時間も設けられていた。そこでは他の参加者の感想をうなずきながら聞く姿が見受けられるなど、早くも参加者同士のコラボレーションが始まっていた。

図2 アクティブシニアの行動を実感するためのワーク

一日の時間軸で行動と必要なことを整理

 次にアクティブシニアの行動を具体的にイメージするために、一日の行動を時間軸で整理したジャーニーマップを作成した。ジャーニーマップとは、ユーザーの体験プロセスを時系列で可視化するものだ。1日の時間を示す横軸上に、「家での行動」「その時の気持ち」「外での行動」「周りの人の気持ち」「行動に関するモノ」といったカテゴリの欄が設けてある。ここに時間と場面に応じたシーンを想像しながら、具体的な行動を付箋紙に書いて貼っていく(図3)。

図3 行動をイメージするためにジャーニーマップを作成

 アクティブシニアの行動といっても、その基軸になる暮らし方や社会のかかわり方などの条件は一人ひとり異なる。考慮すべき条件の数や種類もまちまちだ。そこで、この作業を始めるにあたって、グループごとに異なるアクティブシニアの属性を定義した。具体的には、「友人と起業」「町内会長」「食事制限がある」「生涯学習センターに通っている」「シルバー人材として働く」など様々な条件が書かれたカードを各グループがそれぞれ何枚か引き、その組み合わせによって属性が定義された。

 属性がグループごとに定義されたところで、各カテゴリの欄に参加者がアクティブシニアの立場で考えながら、思い思いに付箋紙を貼っていた。例えば、配偶者が介護状態と定義されているグループでは、「家事の時間がこの辺に必要ですよね」と思いを巡らしながら、掃除や買い物の時間を適宜割り振る。食事制限がかけられているアクティブシニアのグループでは、「食事後はたぶん憂鬱でしょうね」と、その気持ちを付箋紙で貼るという具合である。こうしてアクティブシニアの一日を具体化していく。

 ジャーニーマップが出来上がると、そこから課題をピックアップして、その解決にIoTがどのように貢献することができるかを検討する。ジャーニーマップを見ながら、起こりえるシーンを想像し、そこでIoTが貢献できる可能性について思いを巡らせ、様々な妄想を廻らせる例えば、「会の立ち上げ」というミッションを持っているアクティブシニアについて考えたグループからは、こんなやりとりが聞こえてきた。「会の立ち上げって、中身は何にせよだいたい最後にお酒が入りますよね」「そうするとクルマを運転できなくなるのが困ります」「IoTでクルマの自動運転が実現できないですかね」。こうした会話の流れの中で、参加者は、IoTで実現できる具体的な機能のイメージを固めていった。

 スポーツクラブで運動する習慣のあるアクティブシニアについて考えたグループでは、ランニングマシンにIoTの機能を付加して健康診断履歴と組み合わせたサービスについて検討していた。スーパーでの買い物情報と医療情報との連携を考えたグループや、通院の必要があるアクティブシニアに向けてオンラインの検診予約サービスや、自走式の掃除ロボットに通院中の掃除させるサービスなどを考案したグループなどもあった。

IoTで変わるアクティブシニアの生活を演じる

 最後にワークショップの締めくくりとして、各グループからの発表が行われた。ここでは作成したジャーニーマップをもとに、アクティブシニアがどのような一日を送り、その中でIoTがどのように登場するかを寸劇にまとめて披露した。「寸劇」と聞いた参加者は、当初一様に戸惑いを見せていた。だが、発表の準備のために寸劇のシーンを具体的に描いた絵コンテを書いているうちに、だんだんおもしろくなってきたのか、参加者全員がどんどん積極的になっていった。中には、配役や台詞などにも凝った、本格的と言ってもよいぐらいの劇を作り挙げたグループも出てきた。

 発表はいずれも、それぞれのアクティブシニアの属性を十分考慮し、IoTが効果を発揮するシーンを表現したものになった(図4)。車いすに頼る生活ながら活動的なシニアをイメージしたグループは、自律歩行型の車いすや、IoTでその日の雰囲気に合った服を勧めるクローゼットなどを、寸劇に登場させていた。服にはバイタルデータを収集する機能が組み込まれており、病院で診察を受けるときに、このデータを利用できるようにするといったアイデアも併せて披露している。

図4 ワークショップの成果を寸劇で発表

 また一人暮らしのアクティブシニアをイメージしたグループは、自走式の掃除ロボットに嗅覚センサーを組み合わせ、掃除が必要なところを自動的に検知して重点的に掃除する仕組みや、食事の内容の分析やアドバイスを提供する機能などを紹介した。その他にも、ベッドにセンサーを設け、体重や体温、睡眠中の呼吸状態を自動的に計測して、クラウドに上げて解析するシステムを提示したグループや、食事に使う調味料の調整や食材カットを自動的に行う「スマートキッチン」を提案するグループ、人間とのインターフェースとしてロボットの活用を演じたグループなどもあった。

 約半日にわたった今回のワークショップ。必ずしも十分な時間を与えられたわけではないが、ここで出てきたアクティブシニアのためのIoT活用のアイデアは、かなりの数に上った。内容も多彩だ。こうした成果が得られたのは、ワークショップの参加者がそれぞれ異なるバックグラウンドを持っていることが大きい。つまり、各自が通じている技術が異なっているため、一人では発想できないような機能やサービスも、お互いの得意分野を組み合わせることで生まれる。今回は、こうした「共創」がもたらす大きな可能性を、まさに実感することができたワークショップだったといえよう。

>>実際のWSで作成されたジャーニーマップはこちら
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課題は健康寿命と平均寿命の差
解決への道を拓くのはIoT
大原宏之氏
富士通総研
産業・エネルギー事業部

 富士通総研の大原氏は、「アクティブシニア2.0(仮説)とIoT」をテーマに、アクティブシニアの現状や取り巻く環境などを解説した。同氏によると、日本人の男性で79.55歳、女性で86.30歳とされる平均寿命とは別に、日常生活に制限のない健康状態である年齢を表す「健康寿命」がある。その健康寿命と平均寿命との間には10年〜12年の差があると言う。この差をいかに短くするかが現在の大きな課題であり、そのために健康管理による予防や、地域コミュニティ活性化による医療費適正化、生涯現役社会の構築などが求められている。国の政策もこれに沿ったものになっており、ここにIoTが貢献することが期待されている。健康に関連した現実のデータをデジタル化するセンシング技術や、デジタル化したデータから有効な情報を見つけ出す解析技術、その情報を実社会に適用する技術などはその一例だ。

 それらの環境を踏まえて、大原氏はIoTを活用してさらに積極的に活動する「アクティブシニア2.0」のイメージを定義した。アクティブシニア2.0を具体化する条件として、「役割がある」「刺激がある」「安心できる」の3つの軸があり、それぞれについてIoTがどのような可能性を与えるかを説明した。

 「役割がある」については、現役時代に培ったノウハウを地域の企業や学校に提供することでシニアが自らの役割を作り出すと同時に収入も得ることができる可能性がある。すでに、それを実現しているNPOの事例も挙げた。「刺激がある」については、大学と連携した生涯学習のモデルやパートナロボットの活用、歩行支援機とGPSの組み合わせなどの事例を紹介。「安心できる」については、センサーを配置したスマートハウスによる日常生活モニタリングの取り組みなどを説明した。

指先に乗る超小型IoTデバイス
アクティブシニアの支援に貢献
松澤希氏
富士通株式会社
IoTビジネス推進統括部 グローバル営業企画推進部

 富士通 IoTビジネス推進統括部の松澤氏は、アクティブシニアを支援するIoTの仕組みを実現するうえで役立つソリューションとして同社が展開している「ユビキタスウエア」を紹介した。ユビキタスウエアは、バイタルデータや位置情報などを取得できる約1cm角の半導体チップ「コアモジュール」と、センサーで取得した様々なデータを意味のあるデータやイベントにするセンシングアルゴリズムなどで構成されている。ユビキタスウエアを利用することで様々なIoT機器を効率良く開発できる。

 ユビキタスウエアの大きな利点の一つが、機器内でデータが処理できるようになること。これまで紹介されているIoTの仕組みの多くでは、クラウドにつながっているIoT機器の役割は、センサーで取得したデータをクラウドに送ることだった。つまりセンサーから集めたデータを、そのままクラウドに送り、データから有意義な情報を抽出する処理は、クラウドで実行することが前提になっている。

 これに対して、ユビキタスウエアが組み込まれたIoT機器では、センシングしたデータを処理して、データから様々な情報を抽出することができる。例えば、コアモジュールでは、温度、湿度、加速度、気圧、パルス数、位置情報などが取得できる。このうち温度と湿度とパルス数の情報を利用すれば、ユーザーが熱中症にかかる危険性が高まっているかどうかを検出できる。加速度と気圧の情報を利用して人が転倒したことを検知することも可能だ。さらにIoT機器で抽出した情報をクラウドに送ることで、一段と高度なサービスや情報を提供することもできるようになる。富士通は、こうした機能が、アクティブシニアの支援に様々な形で貢献することを期待している。