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IoTのチカラで遊休資産を有効化、異業種の知恵を集めて新ビジネスを創出

使われないまま眠っている様々な資産を再活用して新たなビジネスを創出する、というユニークなテーマを掲げたワークショップ「遊休資産の活用を考える~眠っている遊休資産の活用をIoTでサポート~」を、富士通が開催した。様々な業界から集まった参加者が知恵を出し合って、遊休資産が使われない理由を追求。その中で明らかになった問題を取り除き、新たな価値を生み出す仕組みを、IoT(Internet of Things)の概念をベースに検討。最終的にビジネス・モデルの発表までつないだ。

 今回のワークショップのテーマの中でキーワードになっている「遊休資産」。ここでは、「人・もの・ことで考えた場合に、使用状態が停止しているもの」と定義している。遊休資産の例には空き家や必要以上に巨大な投資などがイメージされがちだが、実はそれらだけではなく、ちょっとした時間やかつて会得した技術や資格なども遊休資産の一種とし、有効な使い道を考えることに挑んだ(図1)。こうしたテーマを掲げたワークショップには、公募などで集まった約30名が参加した。職業や年齢は様々だ。

図1 IoTによる「遊休資産」を考えるワークショップを開催
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 最初に、遊休資産に関するトレンドや富士通グループ内での遊休資産活用例を紹介する講演が開かれた(別掲のコラムを参照)。この後、参加者を4人~5人ずつ8グループに分けて、ワークショップのプログラムを開始した。

 最初のプログラムは、自分の周りにある遊休資産をカードに書き出す作業である。各グループ30枚以上を目標に、メンバー同士で情報交換をしながら様々な遊休資産をカードに書き出した。「ビニール傘。外出先で買ったものがたまりますね」「たまっていくものなら、ほら、あれもありますよ。紙袋」といったように、一人のメンバーの発言が、新たな発言を引き出す光景が、それぞれのグループで見受けられた。これと同時に、各グループのテーブルの上には「年末以外の餅つき器」「待ち時間」「黙っている営業担当者」など、遊休資産を書き出したカードが、どんどん積み重なっていく。制限時間が終了した時点で、どのグループも30枚の目標を大きく超えていた。

「遊休資産」×「人」でアイデア広げる

 次のプログラムは、列挙した遊休資産に「人」を掛け合わせてアイデアを広げる作業だ。つまり、「主婦」「警察官」「駅員」「配達員」などのカードが用意されており、それを最初のプログラムで書き出した遊休資産のカードと組み合わせる。その組み合わせを前提に、新たなビジネスを検討した。

 人のカードのほかに、「バスルーム」「病院」「マンション」などの場所のカードも、アイデアを補強していくために用意されており、それらも条件に織り込んだうえで、各自が新ビジネスのアイデアを用意したシートに記入した。1枚のシートには6件のアイデアを記入できるようになっているが、すべての記入欄がすぐにいっぱいになってしまった参加者も多かった(図2)。

図2 「遊休資産」×「人」でアイデアを検討
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 最終的に各グループで議論のうえアイデアを1本に絞って、ワークショップの最後にグループ単位で発表することになっている。これに向けて次に取り組んだのが、自分のアイデアをグループ内で説明する作業だ。シートに記入したアイデアについてその背景や意図などを説明したり、お互いシートを交換したりしながら、どのグループもアイデアの内容をさらに深めた。例えば、「昔の衣類」という遊休資産と「ソムリエ」という人材を組み合わせで考えた「ワインのかけ合い」というイベントを実施するというアイデアには、「外国人観光客に受ける」「ソムリエがコスプレするのはどうか?」といった斬新な視点のアドバイスが次々と挙がった。それらを受けて提案した参加者は、アイデアを具体化させていった。

IoTを掛け合わせてさらに具体化

 ワークショップの後半では、最後の発表に備えて考案したアイデアをモデリングした使う遊休資産とそれに関係する人、さらにサービスを実現するために利用するIoTの技術を掛け合わせて、提供する具体的なサービスのイメージを模造紙に書き出した(図3)。この作業は、「一般市民向け説明会で発表する」という前提状況が設定されている。ワークショップのファシリテータからは「ビジネスオーナーになったつもりで書いてください」という指示があった。これらを踏まえて、前半戦で考えてきたアイデアを実現するうえで、何が課題になり、IoTでそれがどう解決できるかをグループ全員で議論しながら、模造紙のうえにイメージを展開させていった。

図3 具体的なサービスのイメージを議論
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 例えば、「ショッピングモールで家族の買い物を待っている時間」という遊休資産の活用法として、モバイル機器を通じて待ち時間に会社の仕事をするための情報を提供するサービスを企画したグループがあった。同グループは、「限られた時間を最大限に有効活用しなければならないユーザーに、モバイル機器への情報入力のために時間や手間をかけさせるのは非合理的」と、入力部分の課題を抽出。それを解決するために、スマホの音声認識機能を活用したり、GPSとWiFiで自動配信したりするという方法を考えた。

 その他にもサービス名にこだわるグループや、「テーマパークのようなイメージにしたい」と夢を膨らませるグループ、「○○社がスポンサーになってくれるのでは?」とかなり具体的な形で事業化まで視野に入れた議論を進めるグループなどもあった。こうしたプロセスを経て、模造紙の内容はより一層濃密なものになった。

 これら模造紙にまとめたサービスモデルを、各グループがワークショップの最後で発表した(図4)。このうち「空きスペース」に着目してサービスを企画したグループが2つあった。1つは近隣の喫煙スペースを1分で見つけるサービス「TOKYO SMOKER」。地図情報などをもとにしたサービスで、人感センサーを使った空き状況提供などをIoTで実現する。オーナーは利用者から集める料金に加えてたばこ関連の広告も期待できるという。

図4 「TOKYO SMOKER」のビジネス・イメージ
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 空きスペースに関連したもう一つのサービスは、夜間のオフィスや廃校などの遊休資産を、コスプレ愛好家やカメラマンに利用してもらう「COS×PLACE」。キャラクターの原作に忠実な動きに挑戦させる機能にジェスチャー認識、撮影した映像を投影して実物を再現することにプロジェクションマッピングを活用する。

 「空き時間」という遊休資産を活用したサービスも3つ発表された。買い物中の空き時間に超短時間のアルバイトを紹介するサービスや、病院での待ち時間に子守りなどをしてもらうサービス、通販で買った荷物を帰宅時間ちょうどに届けてもらうサービスだ。病院の待ち時間を活用するサービスでは、利用者同士を結び付けるのにSNSを活用。帰宅時間に合わせて届けるサービスでは、駅にタッチポイントを設け、その通過時刻をもとに自宅到着時間を割り出して配送を手配する仕組みを考案した。
          
 この他にも賞味期限切れが近い食品を適切に売り切るサービスや、未整理のまま眠っているデジカメの写真をアレンジして観光ガイドとして利用できる映像情報を作成するサービスなど多彩なビジネスのアイデアが発表された。いずれも斬新かつユニークなアイデアながら、既存のIoT技術で実現できる可能性の高いものばかりだ。この成果は、異業種の連携による「共創」の可能性を、参加者に強く感じさせたはずだ。

IoTで利用者の「信頼」を確保する

 ワークショップのプログラムに先立ち、遊休資産の現状を報告する講演が行われた。講師は、富士通総研の久本浩太郎氏である。同氏は、遊休資産から価値を引き出す「シェアリングエコノミー」が拡大していることを解説した。

久本浩太郎氏
富士通総研
第一コンサルティング部
産業・エネルギー事業部
シニアコンサルタント

  「個人の持つ遊休資産の活用を促す新しいビジネスが、ICT(情報通信技術)を使った仲介サービスの拡大とともに、次々と登場しています。また、それらは多くの社会課題の解決と経済活性化に貢献しています」(久本氏)。その具体例として貸し手がいない空き月極駐車場を時間貸しすることで、都市部の駐車場不足を解消する「akippa」や、個人のスキルや時間を有効活用したクラウドソーシングの「Lancers」、一時的に遊休状態となっている個人宅の部屋貸しを行う民泊の「Airbnb」などを紹介した。「既にある身の回りの『もったいないもの』に目を向けるのが、シェアリングエコノミーの起点」と久本氏は指摘する。

 一方、シェアリングエコノミーは基本的に個人同士の取引のため、トラブル発生の懸念もある。久本氏はそれを解消するのは「個人特定による相互理解」とし、実名によるSNSや携帯電話のSIMを使った本人の特定、スマホによるクレジットカード決済機能などが有効とした。それによって、ユーザーの信頼を確保することに繋がるのだという。

 また、多くの大企業が流行のシェアリングビジネスの事例研究や開発偏重に陥るケースに危惧を呈している。単なる海外のビジネスモデルの輸入に頼るのではなく、あくまで身の回りにある目の前のもったいない事象やニーズに目を傾け、シンプルにターゲットから導入のための価値と意義を感じてもらうことが重要だというのだ。そのためには、縦割りの点ではなく、経営視点を持って、作りこみの開発や営業のハードルを最小限に下げるモデル構築を同時に行うべきという。シェアリングビジネスが大企業の個人に広く浸透すれば、働き方の劇的な変化と経済活性化に大きく貢献しうるというのだ。

野牧宏治氏
富士通ホーム&オフィスサービス
先端農業事業部 企画部長

 久本氏に続いて登壇した富士通ホーム&オフィスサービスの野牧宏治氏は、遊休資産の活用例として富士通グループが取り組む野菜工場の事例を紹介した。福島県の会津若松にある半導体工場の一部ラインを野菜工場に置き換え、「会津若松Akisaiやさい工場」を構築した事例だ。事業再編に伴い遊休資産となったスペースを、「社会に役立つもの」に活用することを考える中で、雪の季節でも安定的に生産できる野菜工場が企画されたという。

 野菜工場が目指したものの一つが「食の喜び」。具体的にはカリウムの摂取が制限されている腎疾患の患者の方でも生で食べられるような野菜の実現だ。そのために秋田県立大学や福島県立医科大学などとも連携し、光や養分などをIoTで自動制御しながら、カリウムを5分の1に抑えたレタス作りに挑んだ。誰と組むと実現できるのか、富士通グループが持つ半導体製造やICTの実践知という資産をどう活かすのかといった観点への対処などを含め、プロジェクトのグランドデザインは入念に進めたと言う。

  こうして実現した工場では、自動制御により野菜の品質を安定させながら、露地栽培農場との比較で25倍の収穫量を実現した。しかも、同工場で生産したレタスやホウレンソウは、ホコリやチリがほとんど存在しないクリーンルームを活用した工場で生産している。このため食べる前に洗う必要がない。現在、病院の売店やスーパーマーケットなど約200店舗でFUJITSUロゴをつけたパッケージで実際に販売も手がけている。「楽天キレイヤサイ」で検索すると、インターネットでも購入できるほか、キレイヤサイサービスセンターでは電話注文も受けているというから、販売の本気度も相当だ。(※0120-220-825)

  ただし、エネルギーコストなどの面で課題もまだ多く、異業種との協働でその解消に取り組む考えだと言う。