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日経テクノロジーonline SPECIAL

サイプレスのエナジーハーベスティング技術、1cm角のソーラーセルで無線センサー端末を駆動

人々の生活や社会活動を大きく変えるInternet of Things (IoT)システムの価値は、いかに多くの場所から、いかに多くのデータを吸い上げ、価値の高いビッグデータを作り出すことができるかによって決まる。その実現には、人々の動きや環境の変化を検知する無線センサー端末を、低消費電力化・小型化する技術が欠かせない。なかでも、光や振動など自然環境にあるエネルギーの中から電力を収穫するエナジーハーベスティングは、バッテリーレスの無線センサー端末を実現する技術として注目を集めている。サイプレスは、ソーラーセルで得られる光エネルギーを無駄なく使い切る電源ICを発売した。無線センサー端末とIoTシステムの価値向上に、大いに貢献できるチップである。

 Bluetooth Low Energy(BLE)のような、低消費電力で使い勝手のよい無線技術が登場したことで、無線センサー端末の利用拡大に対する期待が一気に高まっている。エネルギーハーベスティングを活用してバッテリーレス化し、設置費や維持費を最小限にできれば、利用シーンがさらに大きく広がることは間違いない(図1)。

図1 エナジーハーベスティング・システムの構成
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エナジーハーベスティング分野のリーダー

 サイプレスは、エナジーハーベスティングの分野で、IoTシステムの利用シーンに最適化したソリューションを開発する技術、利用実績の両面で、リーダー的なポジションにある。

 技術の源流は、携帯型ゲーム機やデジカメ向けに提供していたカスタム電源ICにある。これらの開発で培った低消費電力・小型の電源IC技術を応用して2013年にリリースしたのがエナジーハーベスティング向け電源ICだ。そして2015年、同社のBLEソリューションを組み合わせた包括的なシステムソリューションとして提供を開始した。

 2013年に発売した2種類の電源IC、振動の発電素子と直列ソーラーセルに対応した「MB39C811」と、熱の発電素子と単セルソーラーに対応した「MB39C831」では、市場で入手できる発電素子をほぼすべて利用できた。この2つの製品の開発・販売を通じて蓄積した、発電素子の技術やユーザーのニーズに関する知見が、今のサイプレスの技術開発と応用開拓の強みになっている。

 これら2製品は、国内外で既に数多く利用されている。国内では、大日本印刷が進めているプロジェクトにおいて、日本航空が羽田空港含め各地の空港内でスマートフォンと連動した搭乗案内システムに用いるBLEビーコン端末に採用し、イオンがショッピングモール内のデジタルフロアガイドに用いるBLEビーコン端末に採用した。こうした実績が評価され、「2013 Green IT Promotion Council Chaiman’s Award」「2014 CTIA Emerging Technology Award IoT category」「2015 Business Sector Media Product of the Year」「2015 ACE Awards Energy Technology Award」など数々の賞を受賞した。

発電素子を絞り込み、使い勝手を大幅向上

 サイプレスは、無線センサー端末やIoTシステムの価値を高める、使い勝手をより向上させた3つのエナジーハーベスティング用電源ICを新たに市場投入した。住宅向けの「S6AE101A」、夜間での稼働にも対応するビル向けの「S6AE102A」、電力の供給間隔を管理できる産業向けの「S6AE103A」である(図2)。

図2 サイプレスが新たに投入した3つのエナジーハーベスティング用電源IC
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 今回投入したチップの最大の特徴は、利用する発電素子を直列ソーラーセルに絞り込み、無線センサー端末の低消費電力化や小型化を推し進めたことだ。「既存製品のユーザーと対話する中で、入手性、コスト、使いやすさの側面から、発電素子の中でのソーラーセルの優位性が分かりました。発電素子を絞り込んで、チップ内の回路構成を単純化し、その分を外付け部品の集積やチップの低消費電力化・小型化に振り向けた方が、ユーザーにとっての使い勝手が高まると考えました」と同社のアナログ事業部 マーケティング部の関根景太氏はいう。

アナログ事業部 マーケティング部の関根景太氏

 他社製品も含めたこれまでの製品では、多くの発電素子に対応できる汎用性を確保するため、電力の安定化と電圧の変換を、昇圧または降圧のDC-DCコンバーターで行っていた。このため、どうしてもこの部分での電力損失を避けられなかった。今回投入した3つのチップでは、電力変換方式に、外付けのキャパシタの充放電をスイッチで制御して安定化させる、回路構成が単純なリニア方式を採用。エネルギー回収率を100%近く、極限まで高めている。

 発電素子の絞り込みを決断した効果はハッキリと数字で現れている。新製品の消費電力は、無負荷での稼働時に消費する静止電流が250nA、待機状態から動き出すときに消費する起動電力が1.2μWと、極めて小さい。特に起動電力が小さくなったことで、1cm角の大きさのソーラーセルでも起動できるようになった。また、パッケージも、最も機能がシンプルなS6AE101Aで、10ピンSON(3mm×3mm)と小さい。

無線センサー端末のバリューを上げる機能を集積

 新製品は、これまでの製品にはない機能を1チップに集積している。最も多くの機能を搭載しているS6AE103Aを例に紹介する(図3)。

図3 1cm角のエナジーハーベスティング・システムとS6AE103Aのブロック図
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 まず、パワーゲーティングスイッチを内蔵している。パワーゲーティングスイッチとは、システムの駆動に必要な電力量が溜まったらオンにして、必要に応じた電力を供給するスイッチ。他社製品やこれまでの既存製品では、外付けしていた部品である。「従来の電池駆動のシステム等では、安定した電源供給が当たり前でしたが、エナジーハーベスティングでは電源供給が不安定であり、システム全体の誤動作につながる可能性が高いことが分かりました。これを解決するため、低消費電力制御でシステムの安定動作を保証するパワーゲーティングスイッチを内蔵しました。これは同時に、蓄電とエネルギー供給のマネジメントの役割も担う重要な機能となっています。」(関根氏)という。また、外付け部品を集積することで、システム全体のコストや消費電力も削減した。

 また、補助電源としての1次電池に切り替えるためのマルチプレクサも内蔵している。工場でのモニタリングなど、データを送るべき時に通信に必要な電力が得られない状況が許されない、高い信頼性が求められる無線センサー端末などで使われる。主電源として1次電池を使い、稼働時間を延長させるためにソーラーセルを使うような場合にも有効だ。

 さらに、バックアップのために余剰電力を小さいキャパシタと大きいキャパシタに自動的に蓄電するハイブリッド蓄電制御回路や、電力管理のための時間制御機能であるCRタイマー、人感センサーなどで何かを検知した時にフラグを立てて稼働するコンパレータも、チップ内に搭載している。

すぐにシステム開発できるキットを用意

 エナジーハーベスティングを効果的に活用するためには、電力を消費する無線センサー端末やIoTシステムの側にも工夫が必要になる。1次電池と同じ安定性があるわけではないので、電源の特性を踏まえて、支障なく動作するような設計をする必要があるのだ。

アナログ事業部 ソリューション技術部の府川栄治氏

 無線センサー端末やIoTシステムを設計する時、設計者がエナジーハーベスティングの特性を手軽に検証できるようにするため、サイプレスは「Solar-Powered IoT Device Kit」と呼ぶ開発キットを49米ドルで販売している。このキットには、今回投入した中で最もシンプルな電源IC S6AE101Aと温室度センサー、データ送信用に同社のBLEモジュールを搭載したマザーボード、ソーラーモジュール、データ受信用のBLE-USBブリッジが含まれている。無料で提供されている電力の需給を検証する開発ソフトウェア「Easy DesignSim」と、センシング、処理、BLEを使った通信を行うファームウェア、受信したセンサーデータをパソコンで表示するためのソフトウェアを使って、すぐにBLEベースの無線センサー端末の設計とテストに利用できる。

図4 Solar–Powered IoT Device Kit
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 「キットを購入するのは、無線センサー端末を開発する機器メーカーだけではありません。クラウドシステムを開発している企業がキットを大量に購入し、IoTシステムの設計や用途開発に利用していただく例も多くあります」(同社 アナログ事業部 ソリューション技術部の府川栄治氏)という。

技術本部 ソフトウェア開発センター システム・ソフトウェア開発部の笹尾哲也氏

 また、無線センサー端末やIoTシステムの開発者が思い思いのセンサーを利用するためには、対応ファームウェアがあらかじめ用意されていることがとても重要になる。サイプレスは、システム全体の消費電力を低減するためにファームウェアを作り込み、この部分でのノウハウや実績を着実に蓄積している。そして、「今後はIoTシステムの中での利用が想定される、さまざまな種類のセンサーを手軽に組み合わせて利用できるようにしていきたいと考えています」(同社技術本部 ソフトウェア開発センター システム・ソフトウェア開発部の笹尾哲也氏)という。

 サイプレスは、Solar–Powered IoT Device Kitのユーザーを対象にしたワークショップを定期的に開催する計画である。参加費は無料で、参加者にはキットを無償で提供するのだという。エナジーハーベスティングを活用したIoTシステムで、新しい商品、サービス、ビジネスを開発したいと考えている人は、ぜひ参加してもらいたい。

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