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洗練されたユーザーI/Fを実現するタッチボタン、メカニカルボタンからの置き換えが進む

メカニカルボタンの代わりに、静電容量変化を検出するタッチボタン(タッチスイッチ)を採用した製品や機器が増えている。人の接近を検知してガラスサーフェスにボタンを浮かび上がらせるなど先進的なデザインを実現できるとともに、物理的な接点がないため信頼性(耐久性)が高くヘビーデューティな産業機器にも適する。タッチボタンのコントローラ「CapSense」で業界をリードするサイプレスの最新ソリューションを紹介しよう。

全 英守 氏
日本サイプレス株式会社 技術部長

 最近の家電量販店の店頭では、従来にはないデザインの白物家電製品やデジタル家電製品を見かけるようになった。たとえばガラストップのIHクッキングヒーターや同じくガラスフラットの電子レンジなどだ。こうしたフラットかつ光沢な面で構成されたデザインは高級感を与えるため、製品としてはまだ少数だが、いずれ多くの分野で主流になることは確実だろう。

 フラットなデザインの製品にはひとつの共通点がある。メカニカルボタン(スイッチ)の代わりに、静電容量式のタッチボタン(タッチスイッチ)が採用されていることだ。指が触れたときの静電容量変化を検知するだけなので、ボタン面がガラスや樹脂に覆われていても正しく反応するのがタッチボタンの原理上の特徴だ。

 また、物理的な接点やバネ機構を持たないタッチボタンは耐久性にも優れる。つまり、意匠が優先される家電やデジタル機器だけではなく、過酷な環境で使われ耐久性と信頼性が求められる産業機器にも適しており、実際に産業機器にタッチボタンが採用される例も増えてきているという。

 「消費者やユーザーは、信頼性が高く、かつ、洗練されたユーザーインタフェースを求めています。また、製品の要件や特性によっては従来のメカニカルボタンよりもタッチボタンのほうがふさわしい場合も少なくありません。そこで、製品の価値を高めるためにも、従来のメカニカルボタンに代えて、さまざまな特徴を持つタッチボタンを採用してはいかがでしょうか、というのが当社からの提案です」と、サイプレスの全 英守氏は述べる。

水滴や水流の誤検知を防止する独自機能を実装

 サイプレスは、メカニカルボタンから静電容量ボタンへの置き換えを図ろうとする機器メーカーに向けて、累計出荷個数が10億個を超えるなど業界トップシェア(同社調べ)を誇る静電容量型タッチボタンコントローラ「CapSense」シリーズのプロバイダで、シリーズで最新の「CapSense MBR 3ファミリ」(MBR=メカニカルボタン・リプレースメント)を提供中だ。

 この最新製品となるのが2014年2月に発売された「CY8CMBR3x」コントローラである(図1)。同社のCapSense MBRファミリとしては第三世代に相当し、着実な進化が図られている。発売時点で、ボタン数(2個~16個)、スライダー数(なし、または10個)、近接センサーの有無、水の誤検知防止機能の有無、LED制御の有無などの違いで6品種がリリースされている。

図1 最新のCapSenseタッチボタンコントローラMBR3ファミリの「CY8CMBR3x」コントローラ
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 「CY8CMBR3x」コントローラの特徴のひとつが設計のしやすさだ。同社ウェブサイトから無償(要アカウント登録)で提供されるコンフィギュレーションツール「EZ-Click」ソフトウェアでパラメータを設定するだけでコンフィギュレーションが完了するため、ファームウェアを開発する必要がない。また、「SmartSense」と呼ぶ自動チューニングアルゴリズムによって、タッチボタンを組み込んだ製品の製造ばらつきや環境変化に応じて感度などが自動的に常時調整されるため、量産前のチューニングに要する時間を短縮できる。

 機能的には、水滴や水流が存在する条件でも指のタッチを正しくセンスできる点が特筆される(図2)。「ボタン周囲に設けたシールド電極やガードセンサーと、ガードに電位を与えるドリブン・シールドと呼ぶ独自の方式などによって、水滴や水流の誤検知防止を実現しています」と全氏は説明する。こうした水の誤検知機能を備えたタッチコントローラを実用化しているのは現時点ではサイプレスだけだという。

 水濡れが考えられるキッチン周りやバスルーム周りで使われる家電製品のほかに、屋外などで使われる産業機器などの操作インタフェースとしても最適だ。「この機能を逆手にとって、液面のセンシングに利用することを検討しているユーザーもいらっしゃいます」(全氏)。

 さらに近接センサーも搭載した(図2)。人や手が近づいたときに操作パネルに文字を浮かび上がらせるような近未来的なユーザーインタフェースが実現できる。

図2 水濡れの誤検出防止機能や近接センサーを搭載
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 このほか、ボタンに触れたことを光や音を通じて操作者にフィードバックすることができるように、ほとんどの品種がLED出力や汎用I/O(GPIO)ピンを装備している。

ファームウェア開発を必要としない使いやすさが特徴

 MBRソリューションを使ったタッチボタンの設計フローは次のとおりだ(図3)。

図3 コンフィギュレーションソフト「EZ-Click」や評価キット「CY3280-MBR3」を使った容易な開発フロー
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 まず、使用するコントローラ品種の選択である。ボタン個数、水濡れ対応、近接センサーの必要の有無、LED制御やブザー出力の必要の有無など、設計しようとするタッチボタンの要件をコンフィギュレーションツール「EZ-Click」に入力すると、候補となる「CY8CMBR3x」コントローラが表示されるので、その中から最適な品種を選定する。

 タッチボタンの評価には「CY3280-MBR3」評価キットが用意されている(25ドル)。キット上には、CY8CMBR3116チップ、2mmのオーバーレイ(カバーアクリル)+1mmの追加オーバーレイ、4個のLED付きタッチボタン、近接センサーとアンテナ、寄生容量やトレース長の設定スイッチ、「Arduino」(www.arduino.cc)互換コネクタなどが装備されていて、「CY8CMBR3x」コントローラの機能を一通り評価できるようになっている。

 アプリケーションごとに設定すべき感度や応答速度などのパラメータ(ファームウェア)は「EZ-Click」ソフトウェアで作成する。「CY3280-MBR3」評価キットには同梱のUSBケーブルを介して転送できるほか、製品基板でファームウェア(パラメータセット)をいろいろと試したい場合はI2Cピンヘッダを基板上に設けておけばいいだろう。

 こうした設計フローやタッチボタン周りの電極パターンなどをまとめたデザインガイドなどは、現在リリースされている英語版に加えて、2014年4月頃から順次日本語版が出てくるそうだ。

技術の蓄積により安定したタッチ応答を実現

 一般にタッチボタンの実装ではデザインやインタフェースが着目されがちだが、もっとも重要なのは安定性あるいは確実性である。押した(触った)のに反応しなかった、あるいは、押して(触って)いないのに反応した、といった誤動作があったのでは、メカニカルボタンを置き換えた意味がなくなってしまう。製品全体の価値だけではなく企業イメージまでもが下がってしまう恐れもあるだろう。

 全氏は、「お客様の中には、他社製の静電容量コントローラを採用して製品試作を進めていたものの、安定したタッチ感度が得られないことが判り、当社のCapSenseコントローラに急遽切り替えて無事に製品化を果たされた事例もあります」と述べ、コントローラデバイスのスペックだけではなく「実力」においてもきわめて安定していると訴求する。

 「CapSense」シリーズとして累計で10億個にも達する出荷実績に加え、水滴や水流の誤検知防止機能、近接センサー、コンフィギュレーションツール「EZ-Click」による効率的な開発、製造ばらつきや環境変化に応じて感度などが自動的にチューニングする「SmartSense」テクノロジーなど、さまざまな特徴を備えた「CapSense MBR3ファミリ」によって、信頼性の高い先進的なインタフェースが実現されるといえるだろう。

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