• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ADASアプリケーション要求を解決!EMIを25dB低減する小型スイッチング電源

スイッチング電源のEMIノイズを抑えたいというニーズに応えて、リニアテクノロジーは、低ノイズを特徴とする5A出力のスイッチング電源IC「LT8640-1」を開発した。独自の「Silent Switcher」アーキテクチャによって従来製品に比べておよそ25dBμVのEMIノイズ低減を実現しており、CISPR 25 Class 5で規定される妨害波の限度を大きく下回る特性を得ている。センサーが出力する微弱信号や各種の電波を扱う車載エレクトロニクス用の電源ICに最適だ。

石井 純 氏
リニアテクノロジー 株式会社
東日本地区 統括セールスマネージャ

 自動車業界では自動運転技術の実用化に向けて急速な勢いで技術開発が進められており、その先駆けとなるADAS(先進運転支援システム)も進化を続けている。

 「安全な車社会を実現しようと、さまざまな技術開発や取り組みが進められています。現在は一台の車の中で閉じるいわば自律検知型の機能が主体ですが、路車間通信や車車間通信を使ってより安全性を高めていこうという試みも始まっており、車載エレクトロニクスの役割が一層重要になっています」とリニアテクノロジーの石井純氏は述べる。

 車載用途にさまざまなアナログソリューションを提供しているリニアテクノロジーは、より安全な車社会の実現に向けて、車載エレクトロニクスの課題に応える製品を続々と展開中である。代表的な製品のひとつが徹底的な低ノイズ化(低EMI化)を図ったスイッチング電源ICだ。

 スイッチング電源はエネルギーの変換効率の高さや小電力から大電力まで対応できるといった特徴により幅広い分野で使われているが、一方で、スイッチング動作に起因するEMIノイズ(放射ノイズ)が少なからず発生してしまう(図1)。

 「スイッチングレギュレータが発生するEMIノイズが問題になりやすいアプリケーションが二つあります。ひとつがセンサー出力のような小信号アプリケーションで、もうひとつが電波を扱うアプリケーションです」と石井氏。

 この二つの条件にまさに合致するのが車載アプリケーションである。

 すなわち、ADASや自動運転システムではレーダーなどの種々のセンサーを用いて車両周囲の状況を検知するため、センサーが出力する微弱な信号を歪みなく増幅して後段のA/Dコンバータに渡してやる必要があり、電源回路のEMIノイズはできるだけ小さいほうが望ましい。

 また、さまざまな電波を扱うようになった最近の自動車はEMIノイズに対してきわめて敏感になっている。従来からのAMラジオやFMラジオだけではなく、スマートエントリー、イモビライザ、ETC、カーナビ(GPS/GNSS)、テレマティクス(VICS)のほか、衝突被害軽減ブレーキ用のミリ波レーダーや将来の車車間通信や路車間通信(V2X)などもあり、数多くの周波数帯を利用するため、高次高調波を含むEMIノイズと使用周波数が干渉してしまう可能性が高くなっている。

図1.スイッチングレギュレータの課題
[画像のクリックで拡大表示]

電磁界のキャンセルとスペクトラム拡散でEMIノイズを低減

 こうした課題に対してリニアテクノロジーは、EMIノイズを従来製品に比べて最大で25dBμVも抑えたスイッチング電源IC「LT8640-1」を開発した(図2)。同社独自の「Silent Switcher」(サイレント・スイッチャ)アーキテクチャに基づく製品である。

 「LT8640-1」は汎用性があるためどのような分野にも使えるが、先に挙げた二つの背景により、「ADASをはじめとする自動車への適用がもっとも効果的」と石井氏は提案する。

 すなわち、小信号を扱うセンサー系に与える影響を最小限に抑えられるとともに、さまざまな電波を扱うカーエレクトロニクスに干渉を与えずに済む。

図2. Silent Switcherアーキテクチャに基づいて開発された「LT8640-1」
[画像のクリックで拡大表示]

 「LT8640-1」の仕様は次のとおりだ。入力電圧範囲は3.4Vから42Vと広く、出力電流は連続で最大5A、ピークで最大7Aと、さまざまな回路の駆動に十分な出力を備える。スイッチング周波数は200kHzから3MHzの範囲で設定可能であり、変換効率は1MHz動作時は最高96%、2MHz動作時は最高95%と高い。

 最大の特長が、ノイズを抑制する「Silent Switcher」アーキテクチャの採用だ。

 ポイントはパッケージングとピン配置の工夫にある。スイッチングノードSW、入力電圧VIN、グランドGNDの各端子をパッケージの左右に対称に配置し、大電流が流れる電流ループ(ホットループ)を左右に逆向きに形成するようにした。その結果、電流ループによって発生する電磁界の打ち消し合いが生じ、EMIノイズの大幅な低減に成功した。

 コロンブスの卵的な発想だが、EMIノイズを10dBμV以上低減できたという。

 また、スペクトラム拡散周波数変調機能も搭載した。外部抵抗RTによって設定したスイッチング周波数を三角波で変調し、20%の範囲で周波数を拡散させて、EMIノイズのスペクトルを拡散する機能である。一定周波数でのスイッチング動作に比べてEMIノイズを10dBμV以上低減する効果が得られるという(外部同期モードではスペクトラム拡散は無効になる)。

 「こうした工夫によって、もともとノイズの少ない当社のスイッチング電源ICに対してさらに25dBμVほどの低減を図り、CISPR 25 Class 5で規定される妨害波の限度を大きく下回る特性を実現しました」と石井氏は説明する(図3)。

図3. CISPR 25 Class 5の上限を大きく下回る「LT8640-1」の優れたノイズ特性
[画像のクリックで拡大表示]

 また、入力電圧がレギュレーションに必要な電圧を下回った場合のドロップを0.1Vに抑えた(図4)。すなわち、コールドクランクやアイドリングストップからの再始動など、入力電圧が本来の規定値から低下したとしたときでもギリギリの出力電圧が保たれるため、ECUの回路次第では再起動を回避できる。

図4. クランキング動作に対応した低ドロップアウトを実現
[画像のクリックで拡大表示]

79dBという高PSRRを実現したリニアレギュレータ

 リニアテクノロジーでは、さらにEMIノイズを抑えたい車載アプリケーション向けに、もともとはRFアプリケーションを想定して開発したリニアレギュレータ「LT3042」を提案する(図5)。

図5. 超低ノイズかつ高PSRRを特徴とするリニアレギュレータ「LT3042」
[画像のクリックで拡大表示]

 入力電圧範囲1.8Vから20V、出力電流200mA、RMSノイズ0.8μVrmsなど、優れた特性を備えるとともに、79dBという高いPSRR(電源電圧除去比)を実現したのが特徴である。競合製品は40dBから50dB程度にとどまるという。

 たとえば、PLL、VCO、高速アンプやトランシーバ、高分解能なA/D変換など、きわめて微弱な信号を扱う回路や許容される電源変動が小さい回路の電源として最適だ。

 また、スイッチング電源のリップルフィルタとして使う方法も効果的だ(図6)。出力段にLCフィルタなどを搭載しなくてすむため、トータルで回路の小型化が図れる。

図6. リップルフィルタとしても有効な「LT3042」
[画像のクリックで拡大表示]

 以上のようなソリューションを踏まえて石井氏は、「リニアテクノロジーは、安全な車社会の実現に向けて、今回ご紹介した低ノイズを特徴とする電源ICをはじめとして、さまざまなアナログソリューションを提供していきます」と述べ、安定したセンシングや高度な制御を支えていく考えを示した。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒102-0094
    東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F

    TEL:03-5226-7291

    FAX:03-5226-0268

    URL:http://www.linear-tech.co.jp/