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日経テクノロジーonline SPECIAL

差別化の難しいデジタルの時代こそ、優れたアナログ技術が製品を強くする

差別化の難しいデジタルの時代こそ優れたアナログ技術が製品を強くする

電源レギュレータ、A/Dコンバータ、アンプやコンパレータさらには高周波製品など、高性能かつ高機能なアナログ半導体を手掛けるリニアテクノロジー。同社日本法人で代表取締役を務める望月靖志氏は、多くの製品や機器がデジタルへと進むなかで、優れたアナログ技術こそが最終製品の価値を生みだすとの信念を掲げている。かつての「メイド・イン・ジャパン」のような強い日本製品を取り戻すには、日本において、今こそアナログ技術の確立が重要と説く同氏に話を聞いた。

アナログが決めるシステム性能
優れたアナログ技術者の育成が日本の将来の鍵

—日本の産業界にとって苦しい局面が続いています。

望月 靖志 氏
望月 靖志 氏
リニアテクノロジー株式会社
代表取締役

望月:その昔、多くの先輩たちが頑張って「メイド・イン・ジャパン」というブランドを作ってくれたおかげで、80年代などは世界のどこに行っても日本人というだけで尊敬を受けました。日本製品は、小型で、機能が豊富で、消費電力が少なくて、使いやすくて、品質が良くて、信頼性が高くて、おまけにサービスもいいと。ところが、たとえば今の日本のメーカーのデジタルテレビと他国のメーカーのデジタルテレビとを比べても、もはやそうした差はありません。デジタルってハードとソフトが揃うと金太郎飴になってしまうので差別化ができないんです。

 実はシステムの性能を決めるのはデジタルじゃなくてアナログなんです。実装、電源、放熱、ノイズ対策、センサーなどのアナログ技術を持っていないと、より多くの機能を、より小さく、より低消費電力で実現しようとしてもできません。ところが、日本のメーカーは1980年代以降にあまりにもデジタルに傾倒してしまったせいで、優れたアナログ技術者がメーカーの中で少なくなってしまいました。これは日本の産業界の将来を大きく左右する問題だと思いますね。

—そういった状況を日本の各メーカーはどのように捉えているのでしょうか?

望月:経営者は対外的であるべしという信念に則って、毎日のようにいろいろな企業トップの方々にお会いして話を聞くように努めています。2011年は述べ300名ほどの企業トップの方にお会いしました。

 そうした皆さんの関心といえば以前はコストが中心でしたが、最近は違っていて、「望月さん、もう大変なんだよ。同じモノを作っただけでは中国メーカーや韓国メーカーに負けてしまう。ワンサイズ小さくて、機能が1.5倍なければダメなんだ」と言われます。近年の急激な円高に加えて、日本の優秀な技術者たちが中国や韓国の企業に好条件で引き抜かれて、日本の技術がものすごい勢いで流出していることもあって、値段だけでは勝負に勝てないことをトップの方々は理解されています。

 先ほども述べましたように、小型化するには実装技術が必要ですし、高機能にしたときには消費電力が増えないようにしないといけません。それには卓越した経験と知識を持ったアナログ技術者がいないと実現できないんです。

—日本メーカーのアナログ技術を高めるために、どのような取り組みを進めているのでしょうか?

望月:デジタルに軸足を置いているメーカーの中にもアナログ技術を知っているエンジニアやアナログ技術が好きなエンジニアが必ずいます。まずはそういったエンジニアの皆さんに向けて、さまざまな技術情報を発信していきます。

 リニアテクノロジーの米国本社には天才の領域に入るようなアナログエンジニアが270名ほどいて、私たちは「アナログ・グル」(guru=導師、教祖)と呼んでいますが、彼らが書いた論文や寄稿記事を基本的にはすべて日本語化して、日本のエンジニアの方々に読んでもらいたいと考えています。また、四半期ごとに出している「LT Journal」という会報誌の日本語化を始めました。

 そういう地道なところから始めて、リニアテクノロジーってアナログ・グルの集まりで面白そうだよね、と考えるエンジニアの方々が増えてくれば、コミュニティを作ったり、大学と人材育成で何かを仕掛けたりすることも考えていきたいなと思っています。

高性能アナログICに特化して創業
30年超の経験がリニアの強み

—あらためて、現在のリニアテクノロジーのビジネスについて説明してください。

望月:リニアテクノロジーの創業はパソコンが誕生して世の中がデジタルにまさに移り始めた1981年です。創業者のBob SwansonとBob Dobkin他2名が、将来デジタル技術が進化すればするほど、デジタルと人間界とを結ぶアナログ技術が重要になると考えて、高性能アナログICに特化した会社をスタートさせました。Bob Swansonはもともとは他社でICの製造責任者を務めていたこともあってモノづくりを重視しています。たとえば、累計で約8000品種の半導体製品は、お客様が使っている限り、どれもディスコン(生産中止)がありません。また、BCP(事業継続計画)が話題になっていますが、1つの製品を複数の工場で生産する、工場のミラー化を従来から行っていますし、前工程を終えたウェハを半年分程度在庫しておく「ダイ・バンク」によって、顧客の需要の急増やウェハなど原材料の供給難が起きた時にも対応できる仕組みを作り上げています。財務状況もきわめて優秀です。

—日本法人の状況はいかがでしょうか。

望月:私がリニアテクノロジーに入った14年前は日本法人の全世界に対する売上げ比率はわずか8%しかありませんでしたが、今は16%を占めるまでになっています。この数字は日本における外資系半導体メーカーのなかでトップクラスなのではないでしょうか。日本法人がこのような成長を遂げている理由はふたつです。ひとつは自動車の電動化・電子化を早い段階から見越して、十年以上前から車載分野に注力してきたことが挙げられます。車載分野は現在、日本法人の売上げの35%を占めるところまでビジネスが大きくなってきました。もうひとつが、先ほども述べましたように、多くのお客様が、かつての「メイド・イン・ジャパン」のよ うな競争力の強い製品を作りたいとして、高性能なアナログICへの採用が増えているためです。

 日本法人は東京に本社、大阪と名古屋に支社があり、技術系のスタッフやエンジニアがいます。また代理店の力も借りながらお客様をサポートするとともに、米国本社が新しい製品のスペックを決めていくときに、日本のお客様のニーズを汲み上げるパイプ役も担っています。

未来を創造する新技術を通じて
日本製品の復活を支える

—特徴的な製品があれば紹介してください。

望月:誰もやらないことをやって未来を創造しようと、リニアテクノロジーでは「The First」を標語に掲げています。そうしたユニークな製品のひとつが、大きな電源回路ブロックを小さなパッケージにモジュール化した「μModule」です。

 こうした新しいコンセプトの製品はお客様に受け入れていただけるまでにある程度の時間がかかります。実際に「μModule」はお客様に採用していただくまでに5年ほどかかったこともあります。ただそういった点は、未来を創り出そうとしているリニアテクノロジーにとっては当たり前のことであって、お客様にいったん認められたあとの信頼はきわめて大きいと思っています。

 日本のお客様が最終的に強くならないと弊社も大きく成長できませんので、こういった優れたアナログ製品を日本のお客様にどんどん提供していきます。日本の産業界に貢献し、社会に貢献し、さらには弊社の売上げも伸びる。そういう循環によって日本の産業界の復活をお手伝いしたいと願っています。

—リニアテクノロジーの取り組みや製品によって日本の製品が少しでも強くなることを期待しています。ありがとうございました。

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  • アナログ・デバイセズ株式会社
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