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先端システムの電源設計効率を大幅に向上させるリニアの「デジタル電源マネジメント」

先端システムの電源設計効率を大幅に向上させるリニアの「デジタル電源マネジメント」

高性能なネットワーク機器やメディカル機器などに最適な「デジタル電源」が、アナログ技術で世界をリードするリニアテクノロジーから登場した。ループ応答に優れたアナログスイッチングレギュレータに、デジタル電源マネジメント機能を組み合わせた「デジタル電源」は、設計効率を大幅に向上させ、また最終製品の信頼性向上にも役立つとして、北米を中心に急速に採用が広がっている。同社が提案する新たなコンセプトを紹介する。

小林 純一 氏
小林 純一 氏
リニアテクノロジー株式会社
地域統括セールスマネージャ

 ネットワーク機器、エンタープライズ向けサーバー機器やストレージ機器、携帯基地局設備、CTやMRIといったメディカル機器などの高度化が進むにつれて、それら装置や機器の基板に搭載される電源回路にも複雑かつ高度な要件が求められるようになってきた。

 たとえば、こうした機器に搭載される28nmプロセスで製造された最新のFPGAを例に挙げると、1個のFPGAごとに複数の電源レール(電源電圧系統)が必要であり、しかもそれぞれの電源レール間には厳密なオン/オフ・シーケンスが定められているため、従来のスイッチングレギュレータIC単体では対応できず、複雑な外付け回路が必要になる。

 ハードウェア全体を統括するシステムアーキテクトやシステムデザイナーにとっては、こうした複雑化する電源系をいかに効率良く設計するかが課題となっていた。

 こうしたニーズに対して、リニアテクノロジー(以下、リニア)は、「デジタル電源マネジメント」という新たなコンセプトを提案する(図1)。ループ応答性能に優れたアナログスイッチングレギュレータに、デジタル電源マネジメント機能を組み合わせた、いわばハイブリッド方式だ。

 「リニアの提唱する『デジタル電源マネジメント』は、先端システムの電源の設計効率を大幅に高める新しい概念といえます。電源に関するさまざまなパラメータを、業界標準となったPMBusを介してデジタル的に設定できるため、基板作成後に要求仕様に変更が生じても基板の作り直しの必要がありません。また、電源の状態を監視する機能も備えています。最先端デジタルICの採用で未確定な仕様を抱えながらも短期間でFirst Design Successを目指すお客様に最適なソリューションです」と、リニアで地域統括セールスマネージャを務める小林純一氏は説明する。

 なお、他のベンダーからも「デジタル電源」と謳われた製品がいくつか出ているが、いずれも帰還ループそのものをデジタル化したもので、この点がリニアの「デジタル電源」とは大きく異なる。帰還ループをデジタル的に制御するためにA/DコンバータやDSPを組み込む必要があり、内部構造が複雑化するだけではなく、応答にデジタル演算特有の遅延が生じてしまうなどの問題が指摘されている。

図1. アナログスイッチングレギュレータ回路に、デジタルパワーマネージメント機能を組み合わせた、リニアの「デジタル電源」
図1. アナログスイッチングレギュレータ回路に、デジタルパワーマネージメント機能を組み合わせた、リニアの「デジタル電源」

PMBusを介して
高度な機能を簡単に実現

 リニアの「デジタル電源」において、デジタルインタフェースを介して実現できる機能をいくつか紹介しよう。

 もっとも基本的な設定可能項目のひとつが出力電圧だ。後述するLTC3880の場合で、0.5Vから5.5Vの範囲をわずか1.375mVステップという分解能で設定できる。FPGAやCPUなどではコア電圧の低電圧化が進み、高精度な電圧を供給しなければならなくなっている。リニアの「デジタル電源」であれば、実際の動作条件下で公称電圧をセンターに設定することで、プラス側とマイナス側の両方のマージンを最大限に確保できる。

 シーケンス制御も柔軟に設定できる。パワーアップの遅延時間を絶対値として個々に設定する方法や、他のLTC3880とカスケードに接続してシーケンスを制御する方法がある。

 マージニング機能の実現も簡単だ。製品開発段階や出荷前試験段階で、出力電源電圧を±5%あるいは±10%の範囲で高下させて回路の動作マージンを確認したい場合に、通常はレギュレータICの帰還ピンに接続される分圧抵抗比を切り替える仕掛けが必要だが、リニアの「デジタル電源」ならPMBusから設定するだけで済む。

 電源系統の各種モニターも可能だ。入力電圧、出力電圧、出力電流、ダイ温度、PWMのデューティサイクル、フォールト状態などをPmbus経由で把握し、これらの情報をシステムの長期的な信頼性向上に役立てることができる。また、万一のフォールト発生時にも、その時の電源の状態を自動的に内蔵EEPROMにログとして記録する、いわば「フライトレコーダー」的な機能も搭載されている。

 これまで複雑な外付け回路を必要としていたこれらの機能を簡単に実現できるのが「デジタル電源」の特徴だ。

μModule版の
「デジタル電源」も開発中

 「デジタル電源」のコンセプトを具現化した製品が「LTC3880」/「LTC3880-1」である(図2)。アナログスイッチングレギュレータ部は、同社のベストセラーのひとつでループ応答性に優れた「LTC3855」(デュアル・マルチフェーズ同期整流式DC/DC コントローラ)がベースになっている。

図2. リニアの「デジタル電源」コンセプトを具現化したデュアル・マルチフェーズ同期整流式DC/DC コントローラ「LTC3880」
図2. リニアの「デジタル電源」コンセプトを具現化したデュアル・マルチフェーズ同期整流式DC/DC コントローラ「LTC3880」

 「LTC3880は2011年1月の発売以来、北米市場を中心に、高性能なネットワーク機器やCT/MRIなどのメディカル機器への採用が増えています。パワーマネージメント機能も含めた複雑な電源系を簡単に構成したいというユーザーニーズに応える製品です」(小林氏)。

 なおリニアでは、「LTC3880」と外付け部品を小型パッケージに統合したμModule(マイクロ・モジュール)の開発を進めていて、早ければ2012年末には登場する予定だという。μModule版の「デジタル電源」の登場が日本での普及の契機になるに違いないと小林氏は見込む。

 「LTC2978」(EEPROM付きオクタル・ デジタル電源マネージャ)と「LTC2974」(EEPROM付きクワッド・デジタル電源マネージャ)は、スイッチングレギュレータは内蔵せずに、デジタルパワーマネージメント機能のみを統合した製品だ(図3)。LTC2978は8系統、LTC2974は4系統の制御および監視ができる。もともと大手通信機器メーカーのニーズに基づいて開発された製品で、北米を中心にすでに数百件以上の採用実績があるという。

図3. 8系統または4系統のデジタルパワーマネージメント機能を備えたLTC2978/LTC2974
図3. 8系統または4系統のデジタルパワーマネージメント機能を備えたLTC2978/LTC2974

開発ツール
「LTpowerPlay」を無償で提供

 パソコン上で動作する「LTpowerPlay」は「デジタル電源」専用の開発ツールだ。作成した設定情報は、USBをPMBusに変換するアダプタを介して、「デジタル電源」内部のEEPROMに書き込まれる。

 これまでレギュレータICのデータシートなどを参照しながら抵抗やコンデンサの定数を決めていた電源設計が、パソコン上での単純なマウス操作に置き換わるイメージだ。小林氏が「設計手法の改革」と表現する理由もうなずける。

 さて、今後FPGAやCPUなどが更に微細化し、ネットワーク機器などが高機能化・高信頼化するにつれて、電源回路に求められる要件はさらに高度化していくことは間違いない。そのとき、リニアの「デジタル電源」のコンセプトは、ハードウェアのアーキテクチャ設計において一層の価値を持つことになるだろう。

 そして小林氏が、「数年前に私どもが世の中に先駆けて提唱したμModuleの概念が、今では技術的、営業的に大きな成功を収めているのと同様に、このデジタル電源マネジメントの概念も、近い将来には複雑なシステムの電源設計効率を高めるために必須の技術と見なされていることでしょう。北米での大きな成功がそれを裏付けています。」とコメントするように、基板上のすべてのスイッチングレギュレータがPMBusで接続され一元的に制御される日も遠くなさそうだ。そうした日に向けて、「LTC3880」の評価ボードを活用するなどして、設計手法の改革に向けた準備をお勧めしたい。

LtpowerPlayの解説ビデオをこちらでご覧ください。

図4. 「デジタル電源」の開発ツール「LTpowerPlay」
図4. 「デジタル電源」の開発ツール「LTpowerPlay」
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