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バッテリセル電圧を精度0.04%で正確に計測、システム全体のコスト削減にも貢献

バッテリセル電圧を精度0.04%で正確に計測システム全体のコスト削減にも貢献

アナログ半導体でマーケットをリードするリニアテクノロジーから、現時点での「決定版」ともいえるバッテリマネージメントシステムIC「LTC6804」が登場した。セル電圧の計測精度を業界トップクラスの0.04%にまで高め、出力電圧特性がフラットなリチウムイオンバッテリのSOC(充電状態)を正確に把握できる点が特徴だ。バッテリ容量として計測マージンを確保する必要がないことや、バッテリの共通モジュールをデイジーチェーン接続できる独自の「isoSPI」インタフェースによって、バッテリシステムのトータルコストの削減と居住空間の最適化に貢献する。

畠山 竜声 氏
畠山 竜声 氏
リニアテクノロジー株式会社
東日本地区
統括セールスマネージャ

 ハイブリッド自動車や電気自動車の性能を高めるには、バッテリからいかに効率良くエネルギーを取り出すかがポイントのひとつだ。そこで重要になるのが「SOC」(State of Charge)と略される充電状態の正確な把握である。SOCが分からなければ「あと何km走れるか」といった情報をドライバーに正しく伝えることもできなければ、充放電をきめ細かく制御することもできず、セルの過充電や過放電の危険性も増加する。そうした課題に応えて、車載用半導体を長年にわたって手掛けてきたリニアテクノロジーが新たに開発したのが、バッテリマネージメントシステムIC(BMS IC)の「LTC6804」である。基準電圧源やA/Dコンバータなどを統合したICで、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素(NiMH)バッテリ、またはSuperCapバッテリのセル電圧およびセル電流を、ひとつのLTC6804あたり最大12セルまで計測できる。なおバッテリマネジメントICとしては、複数のハイブリッド車に搭載されている従来品の「LTC6802」および「LTC6803」から数えると、第三世代に相当する。

 「LTC6804は、リニアテクノロジーが創業以来30年にわたって開発してきた計測技術、自動車向け半導体での多くの実績、そして、バッテリマネージメントシステムICのこれまでの経験を結実した画期的な製品です」と、同社で東日本地区の統括セールスマネージャを務める畠山竜声氏は、その優れた性能を訴求する。主な機能と特徴は次のとおりである。

 まず、セル電圧の計測精度において、業界トップレベルとなる0.04%という高い精度を実現したことが挙げられる。SOCを正確に把握できるとともに、計測誤差分を見越してバッテリ容量や公称スペックにマージンを確保しておく必要がなくなった。

 二つ目の特徴は、最長100mの伝送が可能なノイズ耐性の高い2線式インタフェースを採用したことだ。デイジーチェーン接続が可能なので、バッテリモジュールの基板間通信も簡単にサポートできる。

 このほか、各セルのアンバランスを解消するセルバランス回路(放電用FETスイッチ)を内蔵している点や、機能安全(ISO 26262)を見据えた信頼性の高い設計などが特徴だ。

図1.リニアが開発した高性能なバッテリマネージメントシステムIC「LTC6804」
図1.リニアが開発した高性能なバッテリマネージメントシステムIC「LTC6804」
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高精度でバッテリのコストダウンも可能に

 バッテリマネージメントシステムICで計測精度が重要な理由は、とくにリチウムイオンバッテリの場合で、きわめてフラットな出力電圧特性を持つからである。あるリチウムイオン・バッテリは、SOCが85%のときと70%のときとで、出力電圧の差はわずか0.06V(60mV)程度と小さい(図2)。

図2.計測精度の重要性とバッテリコストへの影響
図2.計測精度の重要性とバッテリコストへの影響
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 仮に、リチウムイオンバッテリの真の出力電圧がSOC=77.5%に相当する3.77Vだったとした場合に、バッテリマネジメントシステムに±30mVの計測誤差があると、3.74Vから3.80Vの範囲のいずれかの電圧として検知され、SOCは70%から85%の範囲にあるとしか判断できないと考えられる(図2左)。

 一方、計測誤差が± 1.2mV(全温度範囲で)のLTC6804で計測すると、3.758Vから3.782Vの範囲のいずれかの電圧として検知されるため、SOCは77.2%から77.8%の範囲に絞り込める(図2右)。

 計測精度はコストに跳ね返る。真のSOC が77.5%のときに85%として計測されてしまう可能性を想定すると、7.5%分のSOCに相当する容量をマージンとして積んでおく必要が出てくる。しかしLTC6804を用いたシステムであれば0.3%分のマージン確保で済む。

 ±1.2mVの計測誤差という精度を実現するために、LTC6804の内蔵の基準電圧(VREF)には、一般的なバンドギャップではなく、温度変化(3ppm/℃)や長期安定性(25ppm/ kHr )、実装時の熱サイクルのヒステリシス(100ppm)などに優れた埋め込みツェナーを採用した。A/Dコンバータの分解能も従来品の12ビットから16ビットに高め、入力段には3次のノイズフィルタを設けている。

最長100mのデイジーチェーン接続可能なI/Fを搭載

 LTC6804 のもうひとつの大きな特徴が「isoSPI」(アイソ・エスピーアイ)と呼ぶ独自の2 線式インタフェースである(図3)。標準的なSPI(SerialPeripheral Interface)をベースにしながら、信号をシングルエンドから差動に変えてノイズ耐性を高めた。なお「iso」は絶縁(isolated)の意味で、Ethernet用の安価なパルストランスなどが使える。 

 最大転送レートは伝送距離が10m以下のときに1Mbpsだ。転送レートを落とせば最長100m程度までケーブルを伸ばせる。ソース/シンク電流を20mAに設定したときに、200mAのRF 信号を照射してもエラーが発生しないことが同社のテストにより確認されている。

 信頼性と堅牢性の高いisoSPIはデイジーチェーン接続が可能だ。すなわち、リチウムイオンバッテリを車種ごとに作るのではなく小型モジュールとしてプラットフォーム化しておき、車内の空きスペースにモジュールを搭載してそれぞれをisoSPIで接続すれば、複数車種にまたがって共通のバッテリモジュールを搭載することができる。畠山氏は「計測精度がバッテリコストの削減につながることをご説明しましたが、バッテリモジュールの共通プラットフォーム化もコストダウンに寄与すると考えていますし、何と言っても居住空間の最適化が計れるメリットがあります」と述べる。

 なお、ホスト側に接続するisoSPIのインタフェースICとしては「LTC6820」が用意される。

図3.バッテリモジュール構成も可能な、ノイズに対して堅牢な専用インタフェース「isoSPI」
図3.バッテリモジュール構成も可能な、ノイズに対して堅牢な専用インタフェース「isoSPI」
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機能安全をサポートする診断機能や冗長機能を内蔵

 そのほかの特徴を最後にかいつまんで紹介しておこう。各セルの電圧をバランスさせるパッシブ・セルバランシング機能に関しては放電用のFETスイッチを内蔵する。また、LTC6804がスタンバイ状態のときにもセルバランシング回路を30分から2時間にわたって作動させるタイマーを内蔵し、イグニッションがオフの状態でも過剰電圧セルを放電できるように工夫した。

 機能安全の動きにも対応した。基準電圧源の完全二重化を始めとしてA/Dコンバータの入力段に内蔵したデジタルフィルタ回路やマルチプレクサ回路などの自己診断機能、バッテリとバッテリモニタ間の断線検知機能、基準電圧源の二重化、セル合算値の計測など、各種の診断機能や冗長機能を搭載しているため、ASIL Dレベルのシステムにも対応できる。

 また、イグニッションオフ時の暗電流を増加させないように、スリープモード時の消費電流を4μAに抑えている。

 こうした特徴を持つLTC6804は、オートモーティブ分野だけではなく、バッテリを搭載するさまざまな機器にも有効だ。たとえば、電動フォークリフト、無停電電源、バッテリ動作の医療機器、家庭向け蓄電池などが挙げられるだろう。

 「高い計測精度は、バッテリシステムのトータルコストの削減だけではなく、ドライバーに正確な航続可能距離を表示できるなどのメリットをもたらします」と畠山氏。バッテリ搭載機器の性能を高めるとともに、過放電や過充電などを防いで安全性も高めてくれるLTC6804が、自動車をはじめとするバッテリアプリケーションの頼もしい味方になってくれるに違いない。

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