• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経テクノロジーonline SPECIAL

センサネットワークの決定版が遂に日本上陸、高信頼通信と超低消費電力を両立した「SmartMesh」

センサネットワークの決定版が遂に日本上陸、高信頼通信と超低消費電力を両立した「SmartMesh」

温度や圧力などのセンシングデータをワイヤレスで送信して収集するワイヤレス・センサ・ネットワークは、ネットワークケーブルの敷設が不要といったメリットがあり、プラント、構造物、自動車、ビルオートメーション、エネルギー、大規模農業など、さまざまな分野で活用が広がっている。リニアテクノロジー傘下のダスト・ネットワークス社が提供する「SmartMesh」は、そうしたセンサネットワークの決定版ともいえるテクノロジだ。

小林 純一 氏
小林 純一 氏
リニアテクノロジー株式会社
地域統括セールスマネージャ

 ワイヤレス・センサ・ネットワーク(Wireless Sensor Network:WSN)を構築するテクノロジには、どのような環境条件であっても安定した通信を確立できる高い信頼性が求められるほか、センサノードは商用電源を利用できない場合も多いため、バッテリのみで長期間の動作を実現する徹底した省電力設計も必須になる。

 それらワイヤレス・センサ・ネットワークの要件を満たすいわば「決定版」といえるテクノロジが、2011年12月にリニアテクノロジー傘下となった、ダスト・ネットワークス社の「SmartMesh」である。

 「もともとSmartMeshは、米カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータサイエンスの教授を務め、現在はダスト・ネットワークス社のCTO(最高技術責任者)も兼務するKris Pisterによって、1990年代後半から開発が進められてきました」と、リニアテクノロジーで地域統括セールスマネージャを務める小林純一氏はその出自を説明する。

 現在のソリューションとしては、IPベースの「IEEE 802.15.4E」および「6LoWPAN」に準拠した「SmartMesh IP」と、インダストリアル用のワイヤレスプロトコルの業界標準である「WirelessHART」に準拠した「SmartMesh WirelessHART」の2種類の仕様があり、いずれも2.4GHz帯(ISM帯)を使って動作する。

図1. ダスト・ネットワークス社が提供するワイヤレス・センサ・ネットワーク「SmartMesh」
図1. ダスト・ネットワークス社が提供するワイヤレス・センサ・ネットワーク「SmartMesh」
[画像のクリックで拡大表示]

高信頼な通信と超低消費電力を両立したSmartMesh

 SmartMeshは「TSMP」(Time Synchronized Mesh Protocol)というアーキテクチャをベースとしており大きく2点の特徴がある。

 ひとつがメッシュ型トポロジーの採用だ。スタートポロジーとは異なり、あるセンサノードと別のセンサノードとの間に冗長経路が確保できるため、きわめて堅牢な通信を確立することができる。

 また、2.4GHz帯の15チャネルを使って周波数ホッピングを行うため、他のワイヤレス通信との干渉や、反射による自己干渉にもきわめて強い。

 実際に50メートル四方のオフィスに45個のSmartMeshノードを配置し、WiーFi干渉がある中で1200万パケットの送受信を行ったところ、一般に40%以上のパケット到達率(PDR)があれば十分なのに対して、ワーストケースでも75%以上のパケット到達率(PDR)が得られたという。

 なおSmartMeshでは、ノードのことを、ダスト(dust:ホコリ)に引っ掛けて、塵(ちり)を意味する「モート」(mote)と呼んでいる。

  SmartMeshのもうひとつの特徴が、すべてのモート(ノード)が同期して動作する点だ。各モートは正確な時刻情報を内部に持ち、あらかじめ設定した間隔で同時に起動するようになっている。すなわち、あるモートが起動した時点で、パケットを中継する隣のモートも起動しているため、同期用の「ビーコン」を発する必要がない。

 モートはセンサデータを送信したのち即座にスリープに移行できるため、各モートをアクティブにしなければならない時間(デューティ)はきわめて短くて済み、たとえば20秒間隔で通信を行う場合、後述するモートコントローラ「LTC5800」の平均消費電流はわずか50μAと小さい。試算上は塩化チオニルリチウム電池一個のみでおよそ7年に亘って駆動できる(センサ側の動作に必要な消費電流は除く)。

 なお、各モートはそれぞれのモート上のリアルタイムクロック(RTC)で時刻をローカルに維持しつつ、パケット通信時に互いの時間のずれ(オフセット)をやり取りするため、ローカルRTCの誤差が蓄積されることはなく、ネットワーク全体は常に高精度(スペックは1ms以内、実際は±数十μs以内)に同期した状態に保たれる。

 そのほかの特徴を含め、他のワイヤレス・センサ・ネットワーク規格との比較を図2にまとめた。「SmartMeshは、低消費電力、空間的冗長性(メッシュ)と周波数冗長性(チャネルホッピング)による高信頼通信、128ビット暗号化処理による安全性、といった特徴があり、あらゆる点において他の規格よりも優れていると考えています」と、前出の小林氏はあらためて強みを訴求する。

図2. SmartMeshと他のワイヤレス・センサ・ネットワーク規格との比較
図2. SmartMeshと他のワイヤレス・センサ・ネットワーク規格との比較
[画像のクリックで拡大表示]

プラントやデータセンタなど幅広い導入が進む

 前述のようにワイヤレス・センサ・ネットワークとして理想的ともいえる特徴を備えたSmartMeshの応用が広がっている(図3)。

 米シェブロン社は、設備の状態や周辺環境のモニタリングを目的に、石油精製プラントに「SmartMesh WirelessHART」を導入している。こうしたプラントは有線ネットワークを張り巡らせるには敷地面積が広すぎ、また環境条件が苛酷な場所も多いため、民生向けのWSNテクノロジでは対応が難しい。SmartMeshであれば安定的なモニタリングが可能だ。

 駐車場の管理に応用したのが米Streetline社だ。それぞれの駐車スペースに弁当箱ほどのSmartMeshモートモジュールを設置し、駐車場の空き状況をほぼリアルタイムで利用者に提供している。駐車車両が停まって通信条件が変化しても、空間的冗長性(メッシュ)と周波数冗長性(チャネルホッピング)によって、通信の安定性が維持される。

 データセンタのHVAC(空調)制御への応用も進む。「金属製ラックが林立するデータセンタ内部では電波が複雑に反射して干渉を起こす可能性がありますが、国内の大手データセンタ事業者が実際のデータセンタを使ってさまざまな条件下でSmartMeshを評価したところ、通信品質にはまったく問題が見られなかったという結果が得られています」(小林氏)。

  このほか、GE(自動車)、Emerson(電源装置および計測制御機器)、Vigilent(エネルギーマネジメント)などがSmartMeshを採用しており、モートデバイスの累計稼働時間はこれまでに10億デバイス時間に達しているという。

図3. 応用が拡大するSmartMesh
図3. 応用が拡大するSmartMesh
[画像のクリックで拡大表示]

パートナーとともにインテグレーションを支援

 リニアテクノロジーではSmartMeshソリューションの国内提供を開始した。

 「LTC5800」(図4)はマネージャまたはモート用のデバイスで、内蔵するARM Cortex-M3プロセッサのファームウェアを入れ替えることで、「SmartMesh IP」のマネージャデバイス(LTC5800-IPR)、「SmartMesh IP」のモートデバイス(LTC5800-IPM)、または「SmartMesh WirelessHART」のモートデバイス(LTC-5800-WHM)に変身する。

 基板も供給される。「SmartMesh IP」のマネージャ基板(LTP5901/5902-IPR)およびモート基板(LTP5901/5902-IPM)と、「SmartMesh WirelessHART」のモート基板(LTP5901/5902-WHM)が用意されている(図5)。いずれも、チップアンテナ内蔵版とアンテナコネクタ(MMCX)搭載版とが用意される。このほか、LTC5800は搭載していないが、「SmartMesh WirelessHART」のマネージャ基板(LTP5903-WHR)もある。

 ちなみに、それぞれの基板は2013年2月に技適を取得予定だ。

 同社ではアプリケーションノートなど設計に必要なさまざまなリソースを提供するなどして、SmartMeshベースのセンサネットワークの構築を支援していきたい考えだ。また、デバイスや基板の供給にとどまらず、SmartMeshのインテグレーションを担うパートナーの拡大も図っていきたいと、小林氏は述べる。

 リニアテクノロジー傘下に入ったことで、ダスト・ネットワークス社の優れたテクノロジがようやく日本でも活用できるようになった。さまざまな応用やビジネスチャンスへとつながるSmartMeshに産業界の期待も高っており、これからの可能性が注目される。

図4. SmartMeshコントローラ「LTC5800」の内部構成
図4. SmartMeshコントローラ「LTC5800」の内部構成
[画像のクリックで拡大表示]
図5. SmartMesh用基板モジュール
図5. SmartMesh用基板モジュール
[画像のクリックで拡大表示]
お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒102-0094
    東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F

    TEL:03-5226-7291

    FAX:03-5226-0268

    URL:http://www.linear-tech.co.jp/