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パワー・システム・マネージメントの採用が加速、製品の付加価値や設計効率の向上で競争力強化を狙う

パワー・システム・マネージメントの採用が加速,製品の付加価値や設計効率の向上で競争力強化を狙う

デジタルインタフェース(PMBus)を介して任意に出力電圧を設定したり入出力電圧や入出力電流などの状態を読み取れるリニアテクノロジーの「パワー・システム・マネージメント」の採用が、世界市場でも増えつつある。電源回路にまつわる設計や生産試験の効率化や、アダプティブな電源制御の実現が狙いだ。製品価値を高めて競争力強化に取り組む海外勢に対抗するためにも、日本メーカーにおいても早期の検討が期待される。

松田 茂 氏
松田 茂 氏
リニアテクノロジー株式会社
東日本地区
地域統括セールスマネージャ

 電子機器内部のさまざまな回路に、いわば血液を送る役割を担っているのが、スイッチングレギュレータに代表される電源回路だ。ただし電源回路は、一般にアナログ回路として「決め打ち」的に構成されるため、たとえば出力電圧を簡単に変更したり、あるいは動作状態を外部から簡単にモニタすることはできない。  

 こうした制約を解決する画期的なスイッチング電源コントローラとして登場してきたのが、リニアテクノロジーの「パワー・システム・マネージメント」ファミリである。本特集のバックナンバー である「先端システムの電源設計効率を大幅に向上させるリニアの『デジタル電源マネジメント』」で触れたように、デジタルインタフェース(PMBus)を介して出力電圧を設定したり、入出力電圧や入出力電流、温度などの状態を読み取れるなど、さまざまなメリットがある(図1、図2)。

図1. 採用が急拡大しているパワー・システム・マネージメントのメリットとは?
図1. 採用が急拡大しているパワー・システム・マネージメントのメリットとは?
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図2. パワー・システム・マネージメントのメリット
図2. パワー・システム・マネージメントのメリット
[画像のクリックで拡大表示]

 なお、これまで同社では「デジタル電源」と呼んでいたが、スイッチング電源部分はアナログ回路として構成していることや、他社のフルデジタル電源との機能の違いをより明確に表すために、「パワー・システム・マネージメント」に呼び方が統一された。  

 このパワー・システム・マネージメントに対する引き合いが、欧米市場および中国市場で顕著な増加を見せていると、リニアテクノロジーの松田茂氏は述べる。

 「通信機器から採用が加速して、現在では産業機器やIT機器などでも、システムの付加価値や信頼性を高めたいと考えるお客様からのお問い合わせやご採用が増えています。当初は欧米市場が中心でしたが、最近は製品の競合力強化に取り組む中国市場での引き合いが多くなっています」。

 そうしたユーザーはパワー・システム・マネージメントのどのような点に魅力を感じているのだろうか。具体的な活用例の一部を紹介しよう。

製品の競争力強化にパワー・システム・マネージメントを活用

(1) 生産試験工程の簡素化と部品点数の削減

 パワー・システム・マネージメントの応用事例として比較的多いのが、出力電圧を任意に設定できる機能を利用した、電圧マージニング試験機能の実装だ。電圧マージニング試験とは、スイッチングレギュレータの出力電圧を±10%などの任意の幅で高下させて、各回路が正常に動作するか確認する試験で、ネットワーク機器やサーバーに実装されている場合が多い。

 これまでは、スイッチングレギュレータの出力電圧設定抵抗(帰還分圧抵抗)を外部アナログスイッチなどで切り替えるなどの制御が必要だった。

 パワー・システム・マネージメントなら、あらかじめプログラミングしておいた試験シーケンスに従って、電圧を自動的に高下させることができる。外部マイコンからトリガーしてもよい。生産ラインでの検査工程が自動化されるとともに、マージニング試験用の外付け回路を省略できるため、基板の小型化や部品点数の削減も図れるといったメリットが得られる。

(2) 状態監視と保守作業の迅速化

 パワー・システム・マネージメントの特徴のひとつが、電源のさまざまな状態を外部からモニターできる点だ。「LTC3880/3883」の場合で、入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流、ピーク出力電圧、ピーク出力電流、ダイ温度、外部インダクタ温度、デバイス内部の状態、各種フォルト状態などをPMBusを介して読み取ることができる。

 あるネットワーク機器ベンダーでは、機器でハードウェア障害が発生したときに、こうした情報を収集して、原因となった部位(基板)の切り分けの迅速化を図っている。交換すべき基板を遠隔地よりすばやく特定できるため、保守作業の簡略化にもつながる。

 「こうした応用から一歩進んで、出力電圧や出力電流の変動パターンを解析して、将来の障害発生を予知し、予防保守に役立てている先進的なお客様もいらっしゃいます」と松田氏は紹介する。

(3) アダプティブ電圧制御

 最近は、処理モード(処理性能)に応じて、コア電圧およびコア電流を動的に変化させるプロセッサが増えている。たとえば、あるプロセッサは、フルパワーモードでは1.05V/24Aを、ノーマルモードでは0.95V/16Aをそれぞれ与える必要があり、スイッチングレギュレータはモードにあわせて出力電圧を高精度に制御できなければならない。

 そうしたアダプティブな電圧制御に、リニアのパワー・システム・マネージメントは最適な選択肢だ。3G/LTE基地局回路のプロセッサ電圧のアダプティブ制御に適用された事例があるほか、通信速度が動的に変化する次世代の超高速光通信システムにも用いられているという。

  松田氏が「先ほども述べた障害管理も含めて、これまでのアナログ電源では実現が難しかった複雑かつ高度な制御を目的として当社のパワー・システム・マネージメントを検討されるお客様が増えています」(図3)と述べるように、パワー・システム・マネージメントが製品の付加価値向上に一役買っていることが窺える。

図3. 製品の付加価値向上にパワー・システム・マネージメントを活用する事例が増加
図3. 製品の付加価値向上にパワー・システム・マネージメントを活用する事例が増加
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複数プロジェクトの設計効率向上にも寄与

 パワー・システム・マネージメントは、従来のスイッチングレギュレータ回路を専門とする電源エンジニアにとっては、ソフト制御が伴う為、はじめはとっつきにくい面もあるようだ。とはいえ、Windows上で動作するグラフィカルな設計支援ツール「LTPowerPlay」が提供されることもあり、他社のフルデジタル電源のように複雑な帰還ループなどをソフトウェアで設計する必要がなく、習得はそれほど難しくない。

 また、ひとつの電源回路をプログラミング設定を変えるだけで複数のシステムに横展開できるなど、プロジェクト全体を通じた開発工数の削減にも効果が得られている。

 「日本ではどうしても部品原価(直材費)のみに目がいきがちで、付加価値や設計効率の向上という観点でメリットがあるとわかっていても、新しい部品の採用にはどうしても時間がかかってしまいます。一方、欧米では、アジアメーカーとの強烈な競合により製品の競争力を高めることを優先しており、また中国では、欧米メーカー以上の製品のトータル品質を実現するために、両地域においてパワー・システム・マネージメントの採用が予想を超えるスピードで進展しています。日本企業においても、パワー・システム・マネージメントは、トップダウンによる採用の決定が多いのが特徴です」と松田氏は訴求する。

 なお、具体的な製品の一部を紹介すると、2013年2月末現在で、プログラマブルコントローラ方式の「LTC2974」(4回路)および「LTC2978」(8回路)と、DC/DCコントローラIC一体型の「LTC3883」(1回路)および「LTC3880」(2回路)が用意されているほか、2013年第2四半期をめどに、パワーMOSFETや受動部品などをパッケージングした「μModule」版もリリースされる予定だ(図4)。

図4. 3種類のタイプで提供されるリニアのパワー・システム・マネージメント
図4. 3種類のタイプで提供されるリニアのパワー・システム・マネージメント
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 製品の差別化や付加価値向上が徐々に難しくなっている昨今だが、パワー・システム・マネージメントの登場は電源周りを見直すいい機会になるはずだ。システムアーキテクチャ全体の視点、あるいは、プロジェクト全体の視点での部品選定を通じて、欧米や中国勢に負けないものづくりが期待される。

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  • アナログ・デバイセズ株式会社
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