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業界の常識を覆すINL=±0.5ppmを実現!超高精度な20ビットSAR型ADCを開発

業界の常識を覆すINL=±0.5ppmを実現!超高精度な20ビットSAR型ADCを開発

センサーアプリケーションの拡大に伴って、実世界のアナログ情報をデジタル値に変換するA/Dコンバータの役割が一層重要になっている。とくにインダストリアル用途で求められているのが、センサー出力を正確に捕捉できる高精度・高分解能のA/Dコンバータだ。アナログ半導体技術で世界をリードするリニアテクノロジーは、業界の常識を打ち破るINL(積分非直線性誤差)がわずか±0.5ppmと小さい、分解能20ビット/サンプリングレート1MSPSのA/Dコンバータ「LTC2378-20」を開発した。

河本 篤志 氏
河本 篤志 氏
米Linear Technology
ミックスシグナル製品担当デザイン・マネージャ

 「世界最高峰の性能を備えたA/Dコンバータを作ろう!」。そうした掛け声のもとで編成された米Linear Technologyの設計チームが完成させたのが、A/Dコンバータの正確さを示す「積分非直線性誤差」(INL)がわずか±0.5ppm(typ値、±約0.5LSB相当)または±2ppm(max値、±約2LSB相当)と小さい、分解能20ビットのSAR(逐次比較)型A/Dコンバータ「LTC2378-20」である(図1)。

図1. ±0.5ppm(Typ値)というINL性能を達成した「LTC2378-20」
図1. ±0.5ppm(Typ値)というINL性能を達成した「LTC2378-20」
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 「A/Dコンバータをフロントエンドに用いたさまざまなシステムのモノづくりを大きく変える画期的なデバイスです」と、設計チームを率いた河本篤志氏は述べる。数ppmが限界と言われていたINLを一挙に±0.5ppmにまで下げたことで、高精度なA/Dコンバータを待望していたインダストリアル業界の視線も熱い。

 実際にデバイスを発表して以来、CTスキャナを始めとするメディカルイメージングや半導体ステッパーなど、高精度なアナログ入力を必要とする機器の開発者から問い合わせや引き合いが相次いでいるという。

INL性能は数ppmが限界との業界の常識を破る

 ここでA/Dコンバータの性能について簡単に説明しておこう。

 一般にA/Dコンバータの性能を表す指標としては「分解能」と「サンプリングレート」の二つが用いられる。このうち分解能は「アナログ情報を電圧方向にどれだけ<細かく>デジタル化できるか」を決める性能指標であり、通常はビット数が多いほど高性能とみなされる。

 ただし、忘れてはならない性能指標がもうひとつある。アナログ値の変換精度を表す「積分非直線性誤差」だ。「Integral Non Linearity」の頭文字をとって一般に「INL」と略される。INLはいわば「アナログ情報をどれだけ<誤差なく>デジタル化できるか」を表す指標のひとつといえる。

 「A/Dコンバータの精度を決める要因にはオフセットや温度ドリフトなども挙げられますが、いずれもキャリブレーションによって補償が可能です。しかしINLだけは補償ができません。そのためINLをいかに小さくするかがA/Dコンバータ設計者にとっては永遠の課題であり、同時に、精度を求めるお客様にとっても関心ごとのひとつになっていました」と河本氏は説明する。

 A/Dコンバータの方式にもよるが、たとえば分解能18ビットの高性能SAR(逐次比較)型A/Dコンバータであるリニアテクノロジーの「LTC2379-18」の場合でINLは±2LSB(±8ppm相当、max値)であり、高性能なデルタシグマ型でも数ppmが下限だった。こうした従来製品の性能水準からも、LTC2378-20で実現された±0.5ppmという性能値がいかに突出したものかが理解されるだろう。

1MSPSやSN比104dBなど優れた性能を具備

 ±0.5ppmという精度を喩えるならば、1ミリ(分解能20ビット)の細かさで測れる長さ1000メートルもの定規があったとして、定規の端から端までの全域で、読み取り誤差がわずか±0.5ミリ(100万分の±0.5)しかない、というのと等しい。

 このような高いINL性能を実現できた詳細な理由を現時点でリニアテクノロジーは明らかにしていないが、「内蔵のスイッチト・キャパシタの容量マッチングへの依存性をなくした」(河本氏)ことがポイントだという。

 そのほかの特徴をかいつまんで紹介しよう。サンプリングレートは1MSPSで、20ビットのSAR型としては比較的高速といえる。また、パイプラインディレイとサイクルレイテンシがいずれもゼロで、サンプリングと同じサイクル内でデータが出力されるため、後段のロジックを組みやすいのも特徴だ。なおデジタル出力は最高100MHz動作のシリアルインタフェース(SPDI)である。消費電力流は1MSPS時で21mW、1kSPS時で21μWに抑えた。SN比は104dB(typ値)を確保している。

 入力基準電圧となるVREF範囲は2.5Vから5.1Vで、たとえば2.5Vを与えたときの入力フルスケール電圧は±2.5Vとなる。なおVREFのレギュレータには、ノイズが0.25ppmと小さい高精度リファレンスの「LTC6655」を推奨している。

活用次第でシステムアーキテクチャの刷新も可能

 「LTC2378-20」の応用例を図に示そう。メディカルイメージングのフロントエンドのように高分解能と高速性を両立しようとした場合、従来はたとえば24ビット/1kSPSのデルタシグマ型A/Dコンバータと16ビット/1MSPSのSAR型A/Dコンバータを組み合わせたハイブリッド型のA/D変換回路が必要だった。2個のA/Dコンバータを用いるため、コストや回路面積などの点で不利となっていた。

 「LTC2378-20」ならこうしたシステムを1個のA/Dコンバータで実現できる(図2)。高分解能を得るにはたとえば平均化フィルタを外付けFPGAに作り込めばよく、小容量のFPGAで十分なのでコストアップもわずかですむはずだ。また、デバイスそのもののが20ビット/1MSPSと高い性能を持つので、高速性も両立できる。

図2 ハイブリッド型A/Dコンバータを1個の「LTC2378-20」に集約
図2 ハイブリッド型A/Dコンバータを1個の「LTC2378-20」に集約
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 たとえばマルチスライス式の大型CTスキャナではこうしたフロントエンド回路が数百組以上用いられるため、「LTC2378-20」がもたらすコスト削減や小型化の効果はきわめて大きいといえるだろう。

 また、SN比が104dBと大きいことを利用して、広いダイナミックレンジを必要とするシステムにも最適だ。入力信号のゲインを切り替えて実効的なフルスケールを広く見せかけるような回路を実装する必要がなく、システムを単純化できる。

 「LTC2378-20はこれまで性能のトレードオフで諦めていた領域にも対応できる優れたA/Dコンバータです。高精度かつ高性能なA/D変換を必要とするお客様によって、さまざまな応用に活用されるものと期待しています」(河本氏)

16ビット/2MSPSなどのファミリー品種も幅広く展開

 「LTC2378-20」はサンプル出荷を始めており、評価ボード「DC1925A」も提供中だ(図3)。ファミリとしては500kSPSの「LTC2377-20」と250kSPSの「LTC2376-20」も用意される。また、同じテクノロジーを使って±1.75LSB(max値)のINLを実現した分解能18ビットの「LTC2379/LTC2378/LTC2377/LTC2376-18」(最高1.65MSPS)と、±0.5LSB(max値)のINLを実現した分解能16ビットの「LTC2380/LTC2378/LTC2377/LTC2376-16」(最高2MSPS)も取り揃えているため、ニーズに合わせて選択できる(図4)。

図3. 「LTC2378-20」搭載の評価ボード「DC1925A」(右側のCPLDの左下にあるのがLTC2378-20)
図3. 「LTC2378-20」搭載の評価ボード「DC1925A」(右側のCPLDの左下にあるのがLTC2378-20)
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図4. 優れたINLを実現したリニアテクノロジーのA/Dコンバータファミリ
図4. 優れたINLを実現したリニアテクノロジーのA/Dコンバータファミリ
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 メディカルイメージングのほか、半導体製造装置や半導体テスター(ATE)、高速かつ高精度なデータアクイジション、ポータブルタイプを含む測定器、プロセス制御などのアプリケーションに最適といえるだろう。

 常識を破るINLを実現して業界からの注目を集める中、設計者の河本氏は、「こうした高い性能のA/Dコンバータを開発できたことを誇りに思います」と技術者としての達成感を語る。リニアテクノロジーではこのテクノロジーをさらに発展させて、競合他社の追従を許さない優れたA/Dコンバータの提供に努めていきたい考えだ。

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