• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経テクノロジーonline SPECIAL

LANケーブル一本で最大90Wの電力を機器に給電、ハイパワーPoEの決定版「LTPoE++」の採用が広がる

LANケーブル一本で最大90Wの電力を機器に給電、ハイパワーPoEの決定版「LTPoE++」の採用が広がる

Ethernetのネットワークを利用して通信データのみならず電力までも送ってしまおうというコンセプトで開発された「PoE」(Power over Ethernet)が、よりハイパワーへと進化を遂げつつある。なかでもハイパワー版PoEのデファクト・スタンダード(事実上の標準)となっているのが、最大90Wもの電力を給電できるリニアテクノロジーが開発した「LTPoE++」だ。敷設コストや施工コストを削減できるほか、商用電源が利用しにくい環境にも適するため、グローバルな注目を集めている。

松田 茂 氏
リニアテクノロジー株式会社 東日本地区 地域統括セールスマネージャ

 LANケーブルを使って機器に電力を供給できるとして注目が集まるPoE(Power over Ethernet)。ただし給電できる電力は、当初の規格(IEEE 802.3af)で最大12.95W、高出力版の「PoE+」(IEEE 802.at)でも最大25.5Wと比較的小さく、消費電力が数十Wを超える機器や装置を駆動するのは困難だった。

 より大容量の機器や装置をLANケーブル一本で駆動したいというハイパワー化のニーズに応えて、リニアテクノロジーが開発したのが、最大90Wもの電力を送ることができる「LTPoE++」である(図1)。

 一般にPoEのアプリケーションとしては、IP電話機、IPベースの監視カメラ、センサーネットワーク、LEDベースの照明機器やサイネージ、ビルマネージメントシステム(BEMS)、無線アクセスポイントなどが挙げられるが、最大90Wものハイパワーを送れるようになったことで、小型サーバー、基地局に収容されている各装置、バックホールなどのネットワーク機器、寒冷地向けのヒーター内蔵監視カメラ、あるいは一部の計測機器や産業機器までもがLANケーブル一本で駆動できるようになった。

 「ネットワークに接続されているそうした機器や装置に対して別配線で電源を供給しなくても済むため、AC電源回路自体を削減したり、敷設・施工のコスト低減が図れるほか、据付けも簡単になります。また、電源確保が難しいところでも、LANケーブルさえ届けば、消費電力が数十Wを超える機器も設置することができます」と、リニアテクノロジーの松田茂氏は述べる。

図1. LANケーブルを介して最大90Wを送電できる「LTPoE++」
[画像のクリックで拡大表示]

2003年に登場したPoEはハイパワーへと進化

 ここで「PoE」を簡単におさらいしておこう。最初のPoEは2003年にIEEE 802.3afとして標準化された。電力を送る側のEthernet機器を「PSE」(Power Sourcing Equipment)、電力を受け取る側のEthernet機器を「PD」(Power Device)と呼ぶ。カテゴリー3以上のケーブルを用い、PDでの最大受電電力は12.95Wである。なおケーブルでの損失を見込んで、PSEからは15.4W以上が送出される。

 2009年にIEEE 802.atとして策定された「PoE+」では、PSE側の送電電力は34.2W以上、PD側の最大受電電力は25.5Wに高められた。ケーブルには損失の少ないカテゴリー5e以上を用いる。伝送距離は原則として最長100mだが、エクステンダー(インジェクタ)などを途中に介在させることでより長い距離にわたって電力を伝送できるようなソリューションも市場には登場している。

 よりハイパワーなアプリケーションの開拓を狙ってPoE+を超える規格も登場しているが、今のところ標準化はされていない。半導体ベンダーA社は最大受電電力51W、半導体ベンダーB社は70W、ネットワーク機器C社は51Wの製品をそれぞれ出してはいるものの、構成が複雑であったり、高コストであったり、PSEとPD間の認証が堅牢ではないなどの課題がある。

下位互換性を保ちつつ最大90Wを供給

 リニアテクノロジーが開発した「LTPoE++」は、既存のPoEおよびPoE+との下位互換性を保ちつつ、90Wものハイパワーを安全に給電するきわめて堅牢かつシンプルな方式として開発された。PD側の受電電力として、38.7W、52.7W、70W、および90Wの4グレードが定義され、それぞれのグレードでのPSE側の最小送電電力は、43W、63W、89W、125Wである。送電にはCAT5eケーブルの4ペアすべてが使われる。

 「2011年のリリース以来、LTPoE++は多くのアプリケーションに採用されており、ハイパワー版PoEのデファクト・スタンダード(事実上の標準)になっています」と松田氏。

 とくに商用電源が不安定だったり電源の施工品質があまり高くはない新興国での需要や伸びが高いという。「Ethernetでの通信は行わずに、電源を末端の機器に供給するだけの目的でLTPoE++を採用されるケースもあります」と松田氏は述べる。カテゴリー5eケーブルであれば、コストも安く、入手性も容易で、敷設も簡単だからだ。

 既存のPoEおよびPoE+との互換性が維持されているのも特徴のひとつだ。供給可能な電力は限られるものの、LTPoE++のPSEにPoEあるいはPoE+のPDを接続したり、その逆に、PoEまたはPoE+のPSEにLTPoE++のPDを接続することができる(図2)。

図2. LTPoE++におけるPSEとPDの相互接続性
[画像のクリックで拡大表示]

 ただしLTPoE++は現時点ではIEEEで標準化されていない。「標準化の動向についてお問い合わせを頂くお客様もいらっしゃいますが、IEEEのワーキンググループには、IEEE 802.3afの規格化当時より当社も参加しており、いち早く対応製品をリリースしてきました。先ほども触れたようにLTPoE++は市場でデファクト・スタンダードになりつつあり、将来的に見た場合、標準化にもっとも近いと考えられます」と松田氏は訴求する。

LTPoE++対応のコントローラを量産中

 リニアテクノロジーではLTPoE++を実現するPSEコントローラおよびPDコントローラをすでに量産供給中だ。Ethernet PHYなどで構成される既存の回路に、PoEタップの付いたトランス(PSE側およびPD側)、ブリッジダイオード回路(PD側)、DC/DCコンバータ(PD側)などを追加して構成する(図3)。

図3. 既存のEthernet回路をベースとしたLTPoE++回路の構成例

 「LTC4274A」はシングルポートのPSEコントローラで、38.7Wから最大90WのLTPoE++グレードに応じた品種がある。ハイパワー化に際して懸念される信頼性あるいは安全性に関して、突入電流制限、電流制限、外部パワーMOSFETの故障検出、ESD/ケーブルディスチャージ保護などの機能が搭載される。

 「LT4275A」はシングルポートのPDコントローラで、PoEまたはPoE+の従来規格もサポートしながら、LTPoE++としては最大90Wの受電が可能だ。パワーMOSFETと電流センス抵抗を外付けとしているため、部品選択や放熱の最適化が図れる。後段のDC/DCコンバータの変換効率を90%と仮定すると、最大81Wの電力を機器側回路に供給できる。

 なお、LTPoE++を手軽に評価できるように、「LTC4274A」の評価キット「DC1814A」と「LT4275A」のデモキット「DC1788A」も提供されている。

LTPoE++の新しい応用に期待が集まる

 松田氏によると、商用電源の代わりにLTPoE++を使って機器や装置への電源供給を省略しようという動きが日本でも本格化しつつあるそうだ。IP電話や監視カメラといった従来の限定的なアプリケーションから、より幅広い応用へと広がりつつあるという。

 たとえば、太陽光パネルと蓄電池を用意しておき、災害時など商用電源が使えなくなったときに、LTPoE++を介して機器に電力を供給するような応用も考えられる(図4)。また、ある閉じたシステムの中で、基板間や装置間を渡って電力を供給する手段としてLTPoE++を活用する方法もあるだろう。

図4. 太陽光パネルと蓄電池からLTPoE++を介して電力を供給する非常用システムの構成例
[画像のクリックで拡大表示]

 ちなみに、PoEが定める「ミッドスパン型」のトポロジーに従って、PSEコントローラを搭載した「インジェクタ」をネットワークの間に配置すれば、既設のスイッチングハブやルーターを含むネットワークシステム全体を変更しなくても、インジェクタから先のみをLTPoE++化することができる。投資コストを抑える方法として適当だろう。ちなみに、このようなLTPoE++対応インジェクタには、たとえば、台湾eten Technologies社の「PS-201G++」や、米Altronix社の「Netway1E/1EV」などがある。

 ハイパワー版PoEのデファクトスタンダードとなっているリニアテクノロジーのLTPoE++から新たな応用が生まれることが期待される。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒102-0094
    東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F

    TEL:03-5226-7291

    FAX:03-5226-0268

    URL:http://www.linear-tech.co.jp/