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±10.24Vのバイポーラ信号を直接取り込み産業用途などに最適な18ビットADCが登場

±10.24Vのバイポーラ信号を直接取り込み産業用途などに最適な18ビットADCが登場

産業用アプリケーションなどで用いられている±10.24V振幅のバイポーラアナログ信号を最高18ビットの分解能で直接取り込めるA/Dコンバータ「LTC2338」ファミリおよび「LTC2328」ファミリをリニアテクノロジーが開発した。従来のようなアッテネータ回路やレベルシフタ回路を必要としないため、極めて高いサンプリング精度を実現できるとともに、部品点数やコストの削減が図れるなど、これまでにないメリットをもたらしてくれる。

河本(かわもと) 篤志 氏
米Linear Technology Mixed Signal Products Design Manager

 産業計測やプロセスコントロールを必要とする工場やプラントの現場では、ノイズの多い環境でも安定的な伝送を維持するために、センサー出力などのアナログ信号に大きめの振幅を与えることが多い。比較的多く使われるのが-10.24V~+10.24Vを電圧範囲とするバイポーラ信号である。

 10V程度の振幅を持たせることでノイズ耐性は高められるが、一方で大振幅のアナログ信号をデジタル情報へと変換する際にはいくつかの課題が浮上してくる(図1)。

図1. 大振幅バイポーラ信号の取り込みにはA/Dコンバータの前段にアッテネータやレベルシフタが必要
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 ひとつが振幅の整合だ。一般的なA/Dコンバータの入力電圧範囲(フルスケール)はせいぜい5.0V程度である。-10.24V~+10.24Vの振幅を与えるには、前段にアッテネータ(ゲインが1未満のアンプ回路または高精度な抵抗分圧回路)を組まなければならない。また、多くのA/Dコンバータの入力電圧範囲が0Vから始まるユニポーラ入力となっているため、レベルシフタも必要になる。

 「10ビットや12ビット程度の分解能でアナログ信号を取り込むのであれば特に問題にはなりませんが、16ビット以上の分解能を必要とする場合は、そうしたフロントエンドにも分解能と同じだけの精度が必要です。分圧抵抗のマッチング、レベルシフタのオフセットやドリフトなど、すべてがA/D変換における誤差の原因となってしまいます」と、米リニアテクノロジーでA/Dコンバータの設計チームを率いる河本篤志氏は指摘する。

 温度ドリフトが極めて少なく、かつ、リニアリティが極めて高いアッテネータやレベルシフタを組むには高度なアナログ回路技術が必要だが、アナログ技術者が不足気味の昨今はシステムメーカーはなかなか手が回らなくなっているのが現実だという。また、前段回路には一般に高性能な部品が必要であり、コストの上昇や回路サイズの大型化を招いてしまうという課題もあった。

±10.24Vのバイポーラ信号を直接入力可能

 河本氏らリニアテクノロジーの設計チームは、こうした課題を解決するために、大振幅のバイポーラ信号をできるだけ高い分解能で直接サンプリングできるA/Dコンバータの開発を2年ほど前から進めてきたという。

 そのようにして誕生したのが最高18ビットの分解能を実現した「LTC2338」ファミリおよび「LTC2328」ファミリである。同社で最高レベルの性能を誇る「LTC2378-18」クラスのSAR(逐次比較)型A/Dコンバータをコアに、大振幅バイポーラ信号に対応した分圧回路などをシングルチップに統合した、高性能かつ高分解能なA/Dコンバータだ(図2)。

図2. ±10.24Vの大振幅バイポーラ差動信号を直接与えられる、18ビット/1MspsのA/Dコンバータ「LTC2338-18」
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 「18ビットという高い分解能を実現するために、アッテネータ抵抗の設計だけでも1年間を費やしています。アナログ電圧によって流れる電流が増減したときでも自己発熱で特性が変わらないように、熱ばらつきやキャリアドリフトなどを有限要素法を用いて徹底的に三次元的にシミュレーションするなど、当社のアナログのノウハウがぎっしりと詰まった製品です」と河本氏は説明する。

 品種としては、バイポーラ信号の完全差動入力に対応した18ビット分解能の「LTC2338-18」(1Msps)、「LTC2337-18」(500Ksps)、「LTC2336-18」(250Ksps)と、18ビットまたは16ビットで疑似差動入力の「LTC2328-18/16」(1Msps)、「LTC2327-18/16」(500Ksps)、「LTC2326-18/16」(250Ksps)が用意される(図3)。

図3. サンプリングレートと分解能の異なる9品種を取りそろえる
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18ビット分解能に見合う高性能とローパワーを両立

 「LTC2338」ファミリおよび「LTC2328」ファミリの仕様をかいつまんで紹介しよう。

 入力電圧範囲(フルスケール)は基本は±10.24Vだが、リファレンス電圧を外部から与えれば±6.25Vまたは±12.5Vにも設定可能だ。なお、入力インピーダンスは2kΩである。アプリケーションが高インピーダンスを必要とする場合は、同社製の高精度オペアンプ「LTC1468」などをユニティゲイン構成にして前段に置けばよい。

 S/N比は「LTC2338」ファミリの場合でクラス最高レベルの100dBを実現しているほか、INL(積分非直線性誤差)は動作温度範囲全域で±4LSB、DNL(微分非直線性誤差)は同じく±1LSBと、これらの項目でも高い値を示している。

 特筆すべきは消費電力の小ささだ。1Mspsの「LTC2338-18」でわずか50mWであり、しかも単体のA/Dコンバータと同等の16ピンMSOPで提供される。「これだけの性能をローパワーかつコンパクトにインテグレーションした製品はほかにはありません」と河本氏は強調する。しかも、アッテネータ回路などを外付けする必要がないため、部品点数やコストの削減も図れる(図4)。

図4. 従来のソリューションに比べて部品点数の大幅な削減と小型化が可能
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優れた性能によってひとつ上のレベルのシステムが実現

 「LTC2338」ファミリおよび「LTC2328」ファミリはシステムメーカーの関心も高いという。「大振幅のバイポーラ信号を直接入力できるなどの特長をご説明したときに、お客様の目の色が変わるのが感じられるほどです」と河本氏は述べている。

 回路サイズが小さいことを利用して、テストヘッドやプローバーにA/Dコンバータを直接実装してしまおうという発想も生まれてくる。大振幅のアナログ信号を引き回して離れたA/Dコンバータに与える従来の構成方法に比べて、システム性能の確実な向上が得られるからだ。今までとは違うひとつ上のレベルの製品を実現できるとして、すぐにサンプルを要求されるケースも少なからずあるという。

 具体的なアプリケーションとしては、プログラマブルコントローラ(PLC)、プロセスコントローラ、テスター、モーター制御、大型メディカル機器、高速データアクイジション、測定器などが想定される。

 「A/Dコンバータのフロントエンドで悩まれているというお客様のニーズを伺い、製品の企画を立てて、それをお客様に持っていって意見をもらいながら作り上げた製品です。こういう特長ある製品を開発できるのがリニアテクノロジーの強みであり、担当している私としてもやりがいのあるところです」と河本氏は述べる。

 メーカーのアナログ技術力の低下が指摘されているが、「LTC2338」ファミリおよび「LTC2328」ファミリを使うことで、アナログ回りの設計負担を抑えながら、これまでにない高性能なシステムを開発できるようになる。新たなビジネスチャンスへとつなげるチャンスともいえるだろう。

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