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安全支援システムを支えるリニアテクノロジーのアナログ技術、「衝突被害軽減ブレーキシステム」の普及に貢献

安全支援システムを支えるリニアテクノロジーのアナログ技術、「衝突被害軽減ブレーキシステム」の普及に貢献

前方の歩行者や先行車両を自動的に検知してブレーキを差動させる「衝突被害軽減ブレーキシステム」の普及が目覚しい。長年にわたって車載用アナログICを提供してきたリニアテクノロジーでは、こうした安全支援システムに向けた取り組みを加速させており、検知精度を支える優れたデバイスを提供中だ。ステレオカメラ、赤外線レーザーレーダー、およびミリ波レーダーという主要な検知方式のそれぞれを対象に、ソリューションの一例を紹介する。

石若 航(わたる) 氏
リニアテクノロジー株式会社 名古屋支社 セールスマネージャ

 交通事故の低減や事故被害の軽減を目的に、前方の歩行者や先行車両を検知して接近時にドライバーに警告を与えたりブレーキを自動的に作動させる「衝突被害軽減ブレーキシステム」(あるいは「プリクラッシュセーフティシステム」)がおよそ10年前に登場した。

 当初は高級車のオプション機能として提供されていたが、システムのコストが下がってきたことで、最近では軽自動車にも装備されるようになってきている。国土交通省(国交省)が一部の大型トラックやバスへの装着義務化を決定したことと合わせ、今後のさらなる普及は確実だ。

 こうした衝突被害軽減ブレーキシステムでもっとも重要な機能が前方の障害物検知であり、現在は、ステレオカメラ(画像認識)、赤外線レーザーレーダー、およびミリ波レーダーという大きく三種類の検知方式が実用化されている。夜間や悪天候時における検知精度、検知可能距離、実装に必要な面積や体積、コストなど、各方式それぞれに優劣があり(図1)、検知精度を高めるために複数の方式を組み合わせることもある(「センサー・フュージョン」と呼ばれる)。

 「衝突被害軽減ブレーキシステムは、エレクトロニクスの観点で見ると、回路ノイズの抑制やリニアリティ確保による検知精度の向上のほか、ソリューションの小型化、ローパワー化、幅広い温度範囲における動作保証などが求められます」と、カーエレクトロニクス分野で長年の実績を誇るリニアテクノロジーでセールスマネージャを務める石若 航氏は述べる。

 そうした厳しい要件に応えているのが同社のアナログICだ。前述の三方式すべてで市販車への採用実績があるのがその証といえるだろう。ここでは主要三方式に適したソリューションの一例を簡単に紹介しよう。

図1. 衝突被害軽減ブレーキシステムの主要三方式における課題
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ステレオカメラ方式: 負荷変動応答に優れた電源IC

 横方向に離して設置した二台のカメラで撮影した画像を処理して、前方に存在する物体の形状や距離を求める方式である。歩行者や自転車なども識別できるのが特徴だ。逆光、夜間、あるいは霧のような気象条件では識別が難しくなるが、近赤外領域を使うことでこうした課題を克服するシステムも登場している。

 こうしたステレオカメラシステムで安定した検知を実現するにあたって、リニアテクノロジーでは、EMIノイズが小さく、かつ、負荷変動応答に優れる電源ICを提案する。

 「ステレオカメラ出力映像から前方の障害物を検知する画像処理LSIやFPGAには高い処理性能が求められますが、処理負荷に応じてこれらデジタルICが消費する電力は大きく変動することがあり、負荷変動に対し高速に追従できる高性能な電源ICが不可欠です」と石若氏はその理由を説明すする。

 「LT8614」は優れた負荷変動応答特性を備えた、高耐圧・同期整流型降圧レギュレータ電源ICだ(図2)。

図2. EMIノイズが少なく負荷変動応答に優れた電源スイッチャIC「LT8614」
[画像のクリックで拡大表示]

 パッケージサイズが3mm×4mmと小さいことに加えて、内蔵ハイサイドスイッチの最小オン時間が30nsと短いため、AMラジオ帯域を超えた高い周波数領域(最高3MHz)にてスイッチングが可能であり、入出力コンデンサやインダクタなどの外付け部品の小型化が図れるなどの特徴がある。また、入力電圧範囲は3.4Vから42Vと広く、コールドクランクとロードダンプ条件も吸収できる。

 EMIノイズが小さいことも特筆すべきだろう。高速と称される従来の降圧レギュレータに比べてEMIノイズは20dB以上小さく、EMC試験の国際規格のひとつでもある「CISPR 25 クラス5」の限度値を大幅に下回っているため、カメラデバイスや画像処理LSIなどに影響を与えない。こうした性質から、同社では「LT8614」を「サイレント・スイッチャ」(静かなスイッチング電源IC)と呼んでいる。

レーザーレーダー方式: 高性能かつ高速なオペアンプ

 赤外レーザーを前方に照射して、フォトダイオードで反射光を受けて、送信から受信までの時間間隔から前方物体との距離を求める方式だ。後述するミリ波レーダー方式に比べて検知可能距離が短いという制約がある。

 レーザーレーダー方式で重要となるのが、フォトダイオードで受けた微小な信号をデジタル処理回路へと送るアナログフロントエンド部分である。「アナログフロントエンドを構成するアンプ素子などに特性ばらつきがあると、レーザーレーダーモジュールごとの検知誤差が大きくなってしまいます」と石若氏。レーザーは光と同じく30万km/sの速さで進むため、たとえば信号が1nsほどばらついただけで、30cmの検知誤差が生じてしまう可能性もあるという。

 リニアテクノロジーが提案するのが高性能なオペアンプである。「LTC6253」(図3)は利得帯域積(GBW)が720MHzと業界トップクラスであり、スルーレートは280V/μsと速いため、信号を鈍(なま)らせることなく後段へと送ることができる。電圧ノイズ、入力オフセット電圧、CMRRなど、オペアンプの基本となる性能指標も高く、素性の良さが窺える。シリコンゲルマニウムプロセスの採用によって優れた性能を実現した。

図3. 微小信号を高精度に増幅する高性能オペアンプ「LTC6253」
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 「当社ではオペアンプの仕様を上限+125℃にて全温度範囲で保証していますので、特性のばらつきが少なく、長期に亘って安心して使っていただけると考えています」と石若氏は訴求する。ひいては、レーザーレーダーシステムの検知精度の向上に結びつくだろう。

ミリ波レーダー方式: 高性能A/Dコンバータ

 ミリ波レーダー方式の基本原理はレーザーレーダー方式と同じだが、レーザー光の代わりに電波を用いるところが異なる。現在のところ76GHz帯または24GHz帯(準ミリ波)が使われており、レーザーレーダー方式に比べて検知可能距離が長い。

 ミリ波レーダーシステムのシグナルチェーンを構成する素子のうち、ここではA/Dコンバータを取り上げよう。受信したミリ波信号を中間周波数(IF)に変換したのち、A/Dコンバータによってデジタル化し、後段の認識ステージへと送るという一連の信号の流れにおいて、A/Dコンバータには、高速性、高精度、高分解能、高ノイズ耐性といった基本特性が要求される。

 リニアテクノロジーの「LTC2226」はこうしたニーズに応えるA/Dコンバータだ(図4)。25MSPS、分解能12ビット、スプリアスフリー・ダイナミックレンジ90dB、動作温度範囲-40℃~+125℃など、優れた性能が特徴だ。消費電力も75mWと小さい。

図4. 高性能12ビットA/Dコンバータ「LTC2226」
[画像のクリックで拡大表示]

 このほかにも、12ビットから16ビットの分解能を備えた最高125MSPSの高性能A/Dコンバータを幅広くラインアップしている。

 また、8チャネル分の14ビットA/Dコンバータとサンプル&ホールド回路、およびデータシリアライザなどをシングルパッケージに封止した、ローパワーのマイクロモジュール「LTM9011」のような先進的な取り組みも進めている。現在開発が進められている自動運転機能を実現するにはマルチチャネルのミリ波レーダーシステムが不可欠になると考えられており、そうした用途を想定して開発された。

先進的なアナログICを通じて安全性の向上に貢献

 以上、簡単に紹介したように、「衝突被害軽減ブレーキシステム」のさまざまな方式の実現に向けて、リニアテクノロジーでは優れたアナログICを提供中である。また、顧客の将来ニーズに満たす先進的なアナログICの開発にも積極的に取り組んでいる。

 衝突被害軽減ブレーキシステムは今後、白線を自動認識して警告を与えたり自動的に操舵する「車線維持支援システム」や、道路を走行する前後のクルマとの距離を制御する「車間距離自動制御システム」などへと進化発展していくことは確実で、さらなる高度化・複雑化が見込まれている。「自動車メーカーやサプライヤなど、お客様からの要求が難しいほどリニアテクノロジーは付加価値を与える解を提案していきます」と石若氏。

 リニアテクノロジーでは、高い信頼性を保ちながらコストを抑えた高度なアナログICの提供を通じて、これからも自動車の安全性を高めていきたい考えだ。

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