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SAR型ADCの開発を加速するリニアテクノロジー 16ビット、デュアルチャンネル同時サンプリング、5Mサンプル/秒の高速タイプが登場

SAR型ADCの開発を加速するリニアテクノロジー、16ビット、デュアルチャンネル同時サンプリング、5Mサンプル/秒の高速タイプが登場

分解能、スピード、および消費電力のバランスに優れるSAR型A/Dコンバータのさらなる技術開発を進めているリニアテクノロジーは、5Mサンプル/秒と高速な16ビット、デュアルチャンネル同時サンプリングA/Dコンバータ「LTC2323-16」を開発した。4mm×5mmの小型パッケージに2チャンネルをパッケージしており、汎用性と使いやすさが特徴だ。センサーネットワークのほか、データアクイジション、車載応用、多軸モーター制御など、さまざまなアプリケーションに最適なスペックを備える。

馬場 正幸 氏
リニアテクノロジー株式会社 フィールドアプリケーション エンジニア マネージャ

 実世界の物理量をデジタルの世界に取り込むには、アナログ値をデジタル値に変換するA/Dコンバータが欠かせない。A/Dコンバータには、フラッシュ型、パイプライン型、ΔΣ型、SAR型(逐次比較型)といった方式があり、それぞれに特徴があるが、センサーアプリケーションを含むさまざまな用途で広く使われているのがSAR型だ。

 SAR型は、分解能、スピード、および消費電力のバランスに優れているため、A/Dコンバータの中でもっとも汎用性が高く使いやすいとされる。なお、一般に分解能は8ビットから16ビットないしは20ビット、サンプリングレートは100kSPS程度から数MSPS程度の品種が多い。

 「汎用性の高いSAR型A/Dコンバータへのニーズの拡大を受けて、リニアテクノロジーではラインアップの拡充を進めています」と、同社でフィールドアプリケーションエンジニアを務める馬場正幸氏は取り組みを述べる。ファミリの最新製品となるのが、2014年2月に発売となった「LTC2323-16」だ(図1)。分解能16ビット、サンプリングレート5MSPSのSAR型A/Dコンバータを2チャンネル同時サンプリング構成で4mm×5mmの小型パッケージに封止した、高速性と汎用性に優れる製品である。

16ビット分解能、デュアルチャンネル同時サンプリングで5MSPSを実現したSAR型A/Dコンバータ「LTC2323-16」

 最大20ppm/℃という低ドリフトを実現した2.048Vまたは4.096Vの高精度リファレンスを内蔵。入力には8Vpp(外部リファレンスを与えた場合は最大10Vpp)の差動入力を備える。動作温度範囲の上限が125℃と高いHグレード品も用意されているため、車載用途や産業用途にも十分対応可能だ。出力インタフェースはCMOSまたはLVDS互換のシリアルI/Oである。

 「汎用性に優れるLTC2323-16の特徴は、『簡素化』、『抑制』、『再利用』という三つのキーワードに集約されます」と馬場氏はポイントを訴求する。それぞれについて紹介しよう。

「簡素化・抑制・再利用」で設計を効率化

 (1) 「簡素化」

 一般にA/Dコンバータ周りの設計では、前段回路(主にセンサー)の出力とA/Dコンバータの入力とが整合するように、シグナルコンディショニング回路などを用いて、信号仕様、振幅、インピーダンスなどを合わせ込む必要がある。

 そうした複雑化を軽減するために、LTC2323-16はコモンモードが広い差動構成の入力段を備えており、完全差動信号のほか、ユニポーラ信号やバイポーラ信号を直接入力することが可能だ(図2)。許容されるコモンモード電圧は0~VDDである。

図2. アナログシグナルチェーンの「簡素化」を実現

 振幅の整合に対してはリファレンスの切り替えで対応する。内蔵リファレンスを+2.048Vに設定した場合は±2.048Vppまでの信号振幅に、+4.096Vに設定した場合は±4.096Vまでの信号振幅にそれぞれ対応可能だ。これ以外の振幅に対してフルスケール出力を得たい場合は、+1.25Vから+5.0Vの範囲でリファレンス電圧を外部から与えることもできる(フルスケール振幅は±1.25Vから±5.0Vの範囲になる)。

 すなわち、複雑なシグナルコンディショニングや高精度な計装アンプを前段に必要とせず、同社製汎用オペアンプ「LT1818」(シングル回路)や「LT1819」(デュアル回路)を使ってユニティゲインバッファを構成する程度で済むため、シグナルチェーンの「簡素化」を図ることができる。

 (2) 「抑制」

 A/Dコンバータのパッケージがいくら小型でも、必要な外付け部品が多ければその価値は半減してしまう。

 LTC2323-16では後段回路の部品数や基板配線の複雑化を「抑制」するためにSPI互換のシリアル出力を採用した。シリアルデータを後段でラッチできるように、スキューを整合させたシリアルクロックも出力されるため、クロック信号を調整する必要がない。なお、シリアルインタフェースの信号レベルはCMOSまたはLVDSを選択できる。

 基板上の線路長もしくはケーブル長をある程度長めに確保したい場合は、出力信号としてLVDSを選択するといいだろう。センサー+LTC2323-16部分と後段部分とを切り離すことができるほか、外部ノイズによる干渉も「抑制」される。

 なによりLTC2323-16自体の小ささもポイントだ。デュアル回路のA/Dコンバータがわずか4mm×5mmの小型パッケージに封止されているため、基板面積の「抑制」が図れる。

図3. 部品点数の削減、基板実装設計の緩和、基板サイズの小型化など、さまざまな「抑制」を実現

 (3) 再利用

 リニアテクノロジーのA/Dコンバータはファミリ内での互換性が維持されており、LTC2323-16も他のデュアル回路SAR型A/Dコンバータとピン互換だ(図4)。現在のところ、16ビット、14ビット、12ビット品のそれぞれに2MSPS品と5MSPS品が用意されており、アプリケーションに応じて選択できる(14ビット版の「LTC2323-14」と12ビット版の「LTC2323-12」は順次リリース予定)。

図4. ピン互換およびデータ形式互換により、基板設計資産やソフトウェア資産の「再利用」が可能

 一度設計してしまえば基板もしくは実装レイアウトを「再利用」できるため、設計工数の削減につなげられるだろう。

 また、出力されるデータ形式(2の補数)はいずれの分解能でも同じであり、後段でデシリアライズ処理したのちはソフトウェアからみてデータ互換として扱える。すなわち、データを処理するソフトウェアの「再利用」が図れる。

SAR型ADCの開発を加速するリニアテクノロジー

 LTC2323-16のアプリケーションとしては、デュアルチャンネル同時サンプリング回路構成という特徴を生かして、たとえばデジタル復調回路において、IチャンネルとQチャンネルを同時にサンプリングするといった用途に便利だろう。

 また、その汎用性から、データアクイジション、画像処理、光ネットワーク、車載、多軸モーター制御など、さまざまなアプリケーションに適用できる。「『簡素化』、『抑制』、『再利用』という三つのメリットによる多様性を生かして、幅広いマーケットでぜひご活用ください」と馬場氏は述べる。

 リニアテクノロジーではLTC2323-16のような汎用性の高いA/Dコンバータに加えて、特徴あるA/Dコンバータ製品の拡充も進めている。たとえば、「業界常識を覆すINL=±0.5ppmを実現! 20ビットSAR型ADCを開発」で紹介した「LTC2378-20」や、「±10.4Vのバイポーラ信号を直接入力可能な18ビットADCが登場」で紹介した「LTC2338」および「LTC2328」はそうした取り組みの一環から生まれたSAR型のA/Dコンバータ製品などだ。

 最近では、IOTやM2Mに代表されるセンサーアプリケーションや、センサーネットワークで得た物理量の情報をインターネット(サイバー空間)を介して処理しより効率的な社会を実現しようという「サイバー・フィジカル」という考え方も登場してきている。その意味でも物理量とデジタルとをインタフェースするA/Dコンバータの重要性が一層増していると言えるだろう。高性能と汎用性を兼ね備えたSAR型A/Dコンバータで業界をリードするリニアテクノロジーの取り組みに期待が集まる。

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