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日経テクノロジーonline SPECIAL

温度センシングを変えるワンチップIC、±0.1℃精度で多系統の温度を測定

温度測定回路の設計を大幅に簡素化するワンチップの温度センサーIC「LTC2983」がリニアテクノロジーから登場した。20本のセンサー接続ピン、アナログフロントエンド、24ビットΔΣ型A/Dコンバータ、係数テーブルなどを内蔵しており、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体、ダイオードなどの各種温度センサーデバイスを接続し設定するだけで正確な温度がデジタル値で得られるのが特徴だ。複数センサーの組み合わせや多系統の測定にも対応している。

石田 浩史 氏
リニアテクノロジー株式会社
大阪支社
支社長

 温度情報を必要とするアプリケーションは多い。たとえば、プロセス制御、食品加工や食品流通、自動車、電子機器、計測、気象などのさまざまな分野で、品質の安定化、安全性の維持、エネルギー効率の向上、データの較正、観測や記録といった目的で温度情報が利用されている。

 温度の測定には、求められる温度範囲や精度によっても異なるが、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体、あるいはダイオードをセンサーデバイスとして用い、それらセンサーが出力する信号をアナログフロントエンドで受けたのち、A/Dコンバータを介してデジタル値に変換する方法が一般的だ。

 ただし、こうした温度センシング回路の設計にはかなりの工数がかかると、リニアテクノロジーの石田浩史氏は指摘する。「使用するセンサーデバイスの特性に応じた高精度なアナログ回路を組むのは意外と手間がかかるほか、レベルシフタ回路やリファレンス回路などを構成していくと基板上でかなりの実装面積を占有してしまいます。しかも重要なのは温度情報であって、通常はセンシング回路自体が価値を持つわけではありません。そのため、温度測定にまつわる設計工数の削減や実装面積の小型化は多くのお客様の課題になっていました」。

 そうした現場のニーズに応えて開発されたのが、各種の温度センサーデバイスに対応した、リニアテクノロジーのユニバーサル温度センサーIC「LTC2983」である(図1)。

図1. 熱電対、サーミスタ、測温抵抗体、あるいはダイオードを複数系統接続できる、ユニバーサル温度センサーIC「LTC2983」
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各種温度センサーの信号を精度高く読み取り

 「LTC2983」は、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体、ダイオードなどの温度センサーデバイスを接続するだけで、摂氏または華氏を単位とする温度がデジタル値で得られる、シングルパッケージの温度センサーICである。20入力の入力マルチプレクサ、6チャネルのアナログフロントエンド、3チャネルの24ビットΔΣ型A/Dコンバータ、係数テーブルなどを内蔵しており、精度は±0.1℃、分解能は0.001℃と高い(図2)。

 特筆すべきは20本もの入力だ。それぞれのピンに接続するセンサーデバイスは内蔵レジスタで設定できるようになっており、たとえば4線式の測温抵抗体であれば最大4系統+共有センス抵抗1本、サーミスタであれば最大9系統+共有センス抵抗1本を接続できる。

 また、熱電対+サーミスタや、3線式測温抵抗体+4線式測温抵抗体+ダイオードなど、複数種のセンサーデバイスを同時に接続することも可能だ。「測定対象の温度範囲や要求精度に応じて複数のデバイスを接続し、20入力全てを活用しているお客様もいらっしゃいます」(石田氏)。

 なお、「LTC2983」に接続可能な温度センサーデバイスは次の表のとおりである。

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 それぞれのセンサーデバイスに応じた係数テーブルが内蔵されていて、「LTC2983」内部でセンサーの出力値から温度値(摂氏または華氏)への変換が行われるため、従来のような外部ソフトウェアでの変換処理は不要だ。また、上記以外のセンサーデバイスを接続した場合に対応して、ユーザーが独自の係数テーブルを定義することもできる。

 このほか、熱電対冷接点補償、測温抵抗体の導線の熱電対効果を除去する自動ローテーション、センサーデバイスの焼損や短絡などのフォルト検出、50Hz/60Hzの同相除去などの機能を備える。

 パッケージは20入力を備えながら7mm×7mmと小さく、とくに複数系統の温度測定において、ソリューションサイズの大幅な小型化が実現できるだろう。

図2. 20入力のマルチプレクサ、6チャネルのアナログフロントエンド、3チャネルの24ビットΔΣ型A/Dコンバータ、係数テーブルなどをシングルパッケージに封止したユニバーサル温度センサーIC「LTC2983」
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専用ツールからコンフィギュレーションも容易

 「LTC2983」の評価キットとしては同社のマイコンボード「Linduino ONE DC2026」に接続する「DC2296A Demo Kit」が用意される(図3)。なお、「Linduino」はArduinoと互換性があるため、組み込み開発者ならすぐに使えるはずだ。合わせて、熱電対ボード「DC2212」、測温抵抗体ボード「DC2213」、サーミスタボード「DC2214」、ユニバーサル4入力ボード「DC2211」という4種類のコンパニオンボードがオプションで提供される。

 「LTC2983DSM」(図4)は「LTC2983」の専用ソフトウェアだ。20本の入力ピンそれぞれに接続する温度センサーデバイスの端子やタイプをプルダウンで選択し、必要に応じてオプションパラメータを入力するだけでコンフィギュレーションは完了である。

 また、「LTC2983」の外部アクセス機能を関数化したCコード(Arduino用の.inoファイル)も生成してくれる。前述した入力ピンのコンフィギュレーション情報が反映されているため、機器のマイコンのファームウェアにこのソースコードを組み込むだけで「LTC2983」の温度値を関数コールとして外部から簡単に読み出すことができる。

 「温度センシング回路の設計を簡単化するだけではなく、読み出しソフトウェアの簡単化も実現しました」と、石田氏はこうした特長を訴求する。

図3. 基板中央に「LTC2983」が搭載された評価キット「DC2296A Demo Kit」
図4. 接続したセンサーに応じた各入力ピンの設定や温度読み出しなどの機能を備えたデモソフトウェア「LTC2983DSM」
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拡大する温度センシングニーズに応えるLTC2983

 石田氏によると、2014年11月に発売された「LTC2983」は、すでにさまざまな産業アプリケーションに採用されているという。「他社にはないソリューションということもあり、温度センシング回路とソフトウェアの設計の省力化や実装の小型化を主な理由として、ご採用いただく事例が増えています」(同氏)。

 「LTC2983」に注目が集まる背景には、温度測定の重要性の一層の高まりとともに、応用範囲の拡大があることは間違いないだろう。たとえば、ハイブリッド自動車(HEV/PHEV)や電気自動車(EV)では、性能を引き出すために、バッテリーパックの温度モニタリングに加えてIGBTやSiCなどのパワー半導体の温度モニタリングが不可欠になっている。また、低燃費エンジンの開発においても温度モニタリングは重要である。

 多系統の温度センサー接続に対応し、高精度な温度センシングをコンパクトかつ手軽に実現できる「LTC2983」は、産業機器、測定器、プロセス制御、メディカル機器、鉄道、自動車航空、センサーネットワークなど、さまざまな分野に最適といえるだろう。

 なお、「LTC2983」の機能をまとめた動画がリニアテクノロジーのウェブページ(www.linear-tech.co.jp/solutions/5500)で公開されているで、合わせてご参照いただきたい。

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  • アナログ・デバイセズ株式会社
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