• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
日経テクノロジーonline SPECIAL

業界標準ツールとして利用が広がるLTspiceアナログ技術の向上で設計力を強化

業界標準ツールとして利用が広がるLTspiceアナログ技術の向上で設計力を強化

回路エンジニアにとって「must-have」(必携)なツールといえばアナログ回路シミュレータの「SPICE」が挙げられるだろう。数あるSPICEの中で広く使われているのがリニアテクノロジーが開発した「LTspice」だ。無償でありながらシミュレーションできる回路規模に制限がないなどの特徴からさまざまな分野で活用されており、エンジニアからの支持も根強い。日本ではユーザーズクラブも発足し、さらなる普及と利用促進への取り組みが進められている。

戸上 晃史郎 氏
リニアテクノロジー株式会社
LTspice Users Club事務局

 SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)はメインフレームやミニコンピューターがまだ全盛だった1970年代に米国のカリフォルニア大学バークレー校で開発されたのち、さまざまなバリエーションが作られた。どちらかというと商用版のイメージが強いため「SPICEは有償」と考えがちだが、無償のものも多い(ただし無償版でもライセンス条件はさまざまである)。

 リニアテクノロジーが1991年に「SwitcherCAD」として開発し、2008年にメジャーバージョンアップ(IIIからIV)とともに名称をあらためた「LTspice」も、無償で使えるSPICEのひとつだ(図1)。

写真1.「LTspice」の開発者であるリニアテクノロジーのMike Engelhardt氏

  「リニアテクノロジーの半導体デバイスを使った回路設計を円滑に進めていただくことを目的に、当社エンジニアのMike Engelhardt(写真1)が開発したSPICEシミュレータが『LTspice』です。2015年2月現在でダウンロード数は800万を数えており、米国では電気電子を学ぶ学生のパソコンには必ず『LTspice』がインストールされているといわれるほど、業界標準のツールとして広く認知されています」と、リニアテクノロジーの戸上晃史郎氏は説明する。

図1. リニアテクノロジーが無償で提供する「LTspice」(画面はWindows版)
[画像のクリックで拡大表示]

回路規模無制限の高性能なソルバーを搭載

 「LTspice」はリニアテクノロジーのウェブページ[*1]で無償で提供されており、Microsoft Windows用とMac OS X(10.7以上)用がリリースされている。ソフトウェアアップデートの通知が必要であれば「MyLinear」にアカウントを作成する必要があるが、ダウンロードだけであればアカウント登録は不要で、インストールもダイアログに従うだけでよく、すぐに使える状態になる。

 「LTspice」の特徴のひとつが膨大なライブラリの提供だ。プログラムをインストールすると、リニアテクノロジーが展開する豊富なオペアンプおよび電源レギュレータICのポートフォリオのうち、2000品種以上のICのモデルおよび2000パターン以上のサンプル回路図と主要ベンダーの受動部品のモデルが同時にインストールされるほか、リニアテクノロジーのウェブサイトでは800を超えるサンプル回路図が提供されている[*2]

 また、パラメータモデルおよび等価回路モデルは、一部の制約はあるが、商用版SPICEと基本的に互換性があり「LTspice」に簡単にインポートできる(回路シンボルは作成が必要)。すなわちリニアテクノロジーの製品にとどまらず、半導体ベンダーが自社の部品に対して提供しているほとんどのSPICEモデルが使えることを意味する。「LTspice」が普及した理由のひとつがこうした汎用性にあることは確実だ。

 そのほか、ノード数および部品数ともに無制限、スイッチング電源回路の解析にも対応した優れた収束性、部品シンボルを置いて結線するだけのグラフィカルなユーザーインタフェース、マルチコアプロセッサに対応したマルチスレッド対応ソルバーの搭載など、他のSPICEにはない特徴を備えている。

 使いこなしに役立つさまざまな日本語リソースの入手も容易だ。インターネット上を探すと「LTspice」ユーザーがまとめた数多くの情報が見つかるほか、解説書籍も数冊ほど出版されている。「LTspice」自体は英語版での提供になるが、こうしたリソースを活用すれば日本語版に近い感覚で活用できるはずだ。なお、ヘルプファイルの日本語化が後述するユーザーズクラブによって進められており、2015年の夏までには提供される予定である。

LTspiceのユーザーズクラブが発足

 「LTspice」の日本国内での普及と活用促進を目的に、リニアテクノロジーおよび同社代理店数社の共同運営にて、「LTspice Users Club」[*3]が2013年に設立された(図2)。

 設立の経緯について「LTspice Users Club」の事務局を務める戸上氏は次のように述べる。「アナログ技術は電気電子が関係するあらゆる分野で重要ですが、残念ながら日本の産業界全体で技術力が低下し元気がなくなってしまっているのが現状かと思います。そこで、『LTspice』の普及と活用を促進することで産業界に少しでも貢献したいと考えて、また、若い世代のユーザーを増やしたいとの想いから、ユーザーズクラブを設立しました」。

 登録ユーザー数は2013年の設立以来毎年1000人前後のペースで増えていて、2015年2月時点でおよそ2,500人を数える。メーカーで働くエンジニアだけではなく、回路設計が好きな個人ユーザーや学生ユーザーの登録も多いという。

 会員限定のコンテンツとして、2015年2月時点で、「LTspice」の活用方法を解説したオンライン会報誌「LTSPICE Magazine」、簡単な使いこなし術をまとめた「TIPS」、セミナーやカンファレンス等のイベント情報などが提供されている。現段階ではユーザー同士が教えあう掲示板機能はないが、技術的な不明点があれば問い合わせに対して運営会社のアプリケーションエンジニアが回答してくれるという。

 また、ユーザー同士の交流促進と事例や技術の紹介を目的に「LTspiceユーザーの集い」が開催されている。第1回目は2013年12月3日に行われ、350名以上の参加者があり、「LTspice」の開発者であるMike Engelhardt氏が来日して講演を行った(写真2)。

 第2回目は2015年4月17日に開催が予定されており、「LTspice Users Club」の登録ユーザーの中から200名が招待される。第1回目と同様にMike Engelhardt氏の講演も予定されているから、参加を希望する場合は抽選の資格を得るためにも、まずは「LTspice Users Club」への登録をお勧めしたい。

図2.「LTspice」を普及と利用促進を後押しする「LTspice Users Club」
[画像のクリックで拡大表示]
写真3. 2013年12月3日に開催された第1回「LTspiceユーザーの集い」

アナログ人材の育成にも活用されるLTspice

 「LTspice」は無償で使えるということもあって大学での利用も多い。群馬大学、東京工業大学、京都大学、上智大学、豊田工業大学(順不同)などでは授業に「LTspice」を取り入れる動きがあり、実際に単位に結びつくカリキュラムを組んでいる大学もあるという。また、「LTspice Users Club」が主体となって大学でセミナーも展開中だ。こうした活動が一助となってアナログに興味を持つ若い技術者が増えることが期待される。

 人材育成という観点で「LTspice Users Club」が取り組んでいるのが、アナログ技術に関するスキルチェックあるいは技術検定の仕組みづくりだ。「大学からは学生のアナログの知識を測る指標がないという問題提起をいただいている一方で、企業からはアナログ技術に関する社員評価や採用基準の判断が難しいという悩みを伺っています。そこでリニアテクノロジーとユーザーズクラブとの共同で、2016年をメドに、アナログのスキルを測る仕組みを立ち上げたいと考えています」と、戸上氏は取り組みを説明する。一般のエンジニアにとっても自分自身の技術力や弱みを把握できればスキルアップに役立つだろう。

  そして、以上のような取り組みによって日本のアナログ技術の底上げが図られ、最終的には産業力の向上へとつながっていくことが期待される。「ホビーユーザーからスキルの高いエンジニアまで幅広く『LTspice』を活用していただきたいと願っていますし、『LTspice Users Club』が提供する数々の情報を業務に役立てていただきたいと考えています。日本の産業力の再興がリニアテクノロジーとユーザーズクラブの願いです」と戸上氏は述べる。

 無償でありながら強力な機能を持ち、業界で広く使われている「LTspice」。まずは同社のウェブページ[*1]からダウンロードしてみてはいかがだろう。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒102-0094
    東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F

    TEL:03-5226-7291

    FAX:03-5226-0268

    URL:http://www.linear-tech.co.jp/