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超高精度な電圧リファレンスが登場、長期ドリフトや温度ヒステリシスを数分の1に

超高精度な電圧リファレンスが登場、長期ドリフトや温度ヒステリシスを数分の1に

電圧リファレンスにおいて長期安定性(長期ドリフト)や温度ヒステリシスに起因する誤差を数分の1に抑えるセラミック製ハーメチック・パッケージをリニアテクノロジーが開発した。計装アプリケーションや測定アプリケーションの精度を極限まで高められるとともに、従来の電圧リファレンスで必要だったバーンイン工程や手はんだ工程が不要になり製造コストを削減できる。

畠山 竜声 氏
リニアテクノロジー株式会社
東日本地区
統括セールスマネージャ

 所定の基準電圧(VREF)を生成する電圧リファレンスは、目立たない存在ではあるが、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、コンパレータ、計装アンプ(ゲインブロック)などのサブ回路の性能や精度を決める重要かつ不可欠なデバイスだ。生産ラインやプラントでの計装、測定器、センシング、差動信号の伝送などのアプリケーションは、高性能な電圧リファレンスがなければ成り立たないといっても過言ではない。

 「基準電圧を精度高く出力する電圧リファレンスは、エレクトロニクスにおけるいわば『メートル原器』の役割を担います」と、リニアテクノロジーの畠山氏はその重要性を表現する。

 計装アプリケーションや測定アプリケーションの精度は電圧リファレンスの精度によって半ば決まってしまう。「メートル原器」に誤差が多ければ、測定値もそれだけの誤差を持つことになってしまうからだ。精度を求められるアプリケーションでは、電圧リファレンスの選択が鍵のひとつを握ると言ってよい。

 電圧リファレンスの精度(誤差)を決める要因としては、一般には次の五つが知られている。
(1) プロセスばらつきやレーザートリミングばらつきなど、製造で決まる初期精度
(2) 温度変化で生じる温度ドリフト
(3) 常温→高温(または低温)→常温と温度変化を与えたときに特性がシフトする温度ヒステリシス
(4) シリコン・チップ(ダイ)の機械的ストレスで生じる初期シフトや経年劣化に起因する長期安定性(長期ドリフト)
(5) 電圧リファレンスICに与えられる電源電圧のノイズによる出力変動

 前述の誤差の要因のうち、「(3) 温度ヒステリシス」と「(4) 長期安定性のうち初期シフト」は、シリコン・チップ(ダイ)、プラスチック・パッケージ、およびプリント基板間の熱膨張係数の差による機械的なストレスが原因とされ、対処が難しいという問題があった。

ハーメチック・パッケージで温度ストレスを緩和

図1. 電圧リファレンスの精度を向上するLS8ハーメチック・パッケージ
[画像のクリックで拡大表示]

 こうしたパッケージの機械的ストレスを原因とする誤差をできるだけ排除するために、リニアテクノロジーが開発したのが、セラミック製のハーメチック(気密性)パッケージである(図1)。

 「リニアテクノロジーは1980年代前半から電圧リファレンスを提供しており、現在も業界でトップクラスの精度を誇る豊富なラインアップを取り揃えています。電圧リファレンスは精度が向上すればするほど、パッケージの機械的ストレスなどの要因が及ぼす影響が無視できなくなったため、そういったストレスの影響を受けにくくするように工夫したハーメチック・パッケージを新たに開発しました」と畠山氏は開発の経緯を説明する。「リニアテクノロジーは1980年代前半から電圧リファレンスを提供しており、現在も業界でトップクラスの精度を誇る豊富なラインアップを取り揃えています。電圧リファレンスは精度が向上すればするほど、パッケージの機械的ストレスなどの要因が及ぼす影響が無視できなくなったため、そういったストレスの影響を受けにくくするように工夫したハーメチック・パッケージを新たに開発しました」と畠山氏は開発の経緯を説明する。

 同社はパッケージの詳細な内部構造を明らかにしていないが、「内部を中空にして、パッケージが熱の影響で膨張・収縮してもシリコン・チップに影響しない構造」(畠山氏)を採用しているという。気密性があるため、湿度の影響も受けない。

 このハーメチック・パッケージは2015年3月現在で、「LTC6655」、「LTC6652」、「LT6654」、「LT6656」、および「LT1236」に適用され、出力電圧や精度グレードの違いで述べ14品種に採用されている。顧客からの要望に応じて他の品種にも順次適用していく予定だという。

 パッケージの効果は顕著で、シリーズタイプの電圧リファレンス「LTC6655」の5.0V出力品の場合で、長期ドリフトはプラスチック製のMS8パッケージが60ppm/√kHrに対してハーメチック・パッケージ(LS8)は20ppm/√kHrと1/3に低減。分布グラフのばらつきも少なくなっている(図2)。

図2. 「LTC6655」のパッケージの違いによる長期ドリフト
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 また、「LTC6652」の場合で、ΔTが-40℃から+125℃のとき、温度ヒステリシスはMS8パッケージが80ppmなのに対してLS8パッケージはわずか45ppmに低減されており、分布も集中している(図3)。

図3. 「LTC6655」のパッケージの違いによる温度ヒステリシス分布
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 「これまで必要だった、バーンイン工数、手はんだ工数、選別工数などが不要になるため、製造の大幅なコストダウンが図れます。また、分布外れとなる個体の発生がほとんどないため、選別やリワークも基本的に不要になると考えられます」と、畠山氏はハーメチック・パッケージのメリットを訴求する(図4)。

図4. バーンイン工程や手はんだ工程が不要になることで製造コストの削減を実現
[画像のクリックで拡大表示]

電圧リファレンスにはアナログ技術が結実

 ppm(100万分の1)を単位とする高い精度が求められる電圧リファレンスは、ある意味でアナログ回路技術やアナログ半導体技術の集大成ともいえるデバイスだ。「アナログ技術で業界をリードするリニアテクノロジーの技術力が生かされるのが、まさに電圧リファレンスです」と畠山氏は述べる。

 ちなみに、同社は顧客からオーダーがある限り原則として製造を中止しないことを顧客から見た価値のひとつとして謳っている。電圧リファレンスも同様で、1980年代に発売された「LTZ1000」という超高精度リファレンスはおよそ30年が経った今も供給され続けているという。「LTZ1000がなくなったら世界が変わってしまう、というお客様もいらっしゃるほどです」(畠山氏)。計装アプリケーションや測定アプリケーションはシステムや製品の息が長いため、同社のこうした取り組みはメーカーにとっても安心だろう。

 また、長期安定性(長期ドリフト)については電圧リファレンスの実ICを1000時間以上に亘って動作させてデータを取得しているという。「電圧リファレンスに加速高温試験を適用している半導体ベンダーもありますが、長期安定性として良好な値が出てしまうため、誤ったデータを提示することになってしまいます」と畠山氏は指摘する。詳しくは同社のデザインノート「電圧リファレンスの長期ドリフトとヒステリシスに注意」( http://cds.linear.com/docs/jp/design-note/jdn229.pdf )にまとめられている。

 精度をはじめとする優れた性能を実現しつながら、安心かつ信頼して使える電圧リファレンスを取り揃えるリニアテクノロジー。選択肢としてハーメチック・パッケージ品が増えたことで、計装アプリケーションや測定アプリケーションで、これまでにない精度の高い測定が実現されるだろう。

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