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日経テクノロジーonline SPECIAL

ワイヤレスセンサーネットワークの決定版として採用が加速する「ダスト・ネットワークス」

リニアテクノロジーが提供する「ダスト・ネットワークス」はセンサーデータの収集に最適なワイヤレスネットワークだ。近年話題となっている「IoT(Internet of Things)」に代表されるセンサーネットワーク向けのワイヤレス技術として、「決定版」ともいえる存在である。海外ではすでにさまざまな応用に使われているが、ようやく国内でも採用事例が立ち上がってきた。主な事例と、普及を推進する「ダスト・コンソーシアム」の活動について紹介する。

小林 純一 氏
リニアテクノロジー株式会社
ダスト・エバンジェリスト
ダスト・コンソーシアム事務局長

 「ダスト・ネットワークス」の大きな特徴は二つある。ひとつが「切れない無線」(図1)と形容されるほど通信の堅牢性がきわめて高いことだ。メッシュトポロジー(IEEE802.15.4e)によって通信経路の冗長性が確保されるため、他の通信方式では切れてしまうような環境においても安定的な通信が維持され、データの取りこぼし(欠測)が基本的に起こらない。

 また、互いに高精度な内蔵時計に基づいて全ノードが一斉に起動し、短時間のうちに送受信処理を行ったのち再び一斉にスリープに入るという独自のTDMA(Time Division Multiple Access)方式によって、受信待機にかかる電力の大幅な削減を実現しており、ボタン電池で数年間の動作が可能である。

図1. 一般的なネットワークは環境条件などによって接続が切れてしまうことがあるが、「切れない無線」を謳う「ダスト・ネットワークス」はきわめて堅牢なコネクションを維持できる
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図2. ワイヤレスセンサーネットワークに求められる要件を満たす「ダスト・ネットワークス」

 「ダスト・ネットワークス」は、駐車車両の検出、プラントの遠隔監視、客貨車の状態監視、船舶の火災検知、水資源管理など、米国を中心にすでに120カ国以上で使われているが、ようやく日本でも応用が本格化してきたとリニアテクノロジーの小林純一氏は述べる。「2015年に入ってから国内での採用事例が加速度的に増えており、採用されたお客様からの評判も上々です」。

 小林氏によるとそれら企業のほとんどが「手離れの良さ」を「ダスト・ネットワークス」の採用理由として挙げているという。「ネットワーク上から一部のセンサーノードが見えなくなるような通信障害が発生しない、センサーノードを増やしてもスケーラビリティが高くトラフィックが飽和しない、電池で長期間に亘って動作するためメンテナンスがほとんど必要ない、など、ワイヤレスセンサーネットワークに求められる要件を満たしていることに対して高いご評価をいただいています(図2)」(小林氏)。

国内でさまざまなアプリケーションが立ち上がる

 ここで「ダスト・ネットワークス」の代表的な採用例を紹介しよう。

 (1) タイムマシーン株式会社

 食品や化学品・医薬品の中には輸送中も定温管理が必要なものがあり、品質管理のためにはいわゆる「温度のトレーサビリティ」が求められる。タイムマシーンが提供する「ACALA MOBILE」[*1]は、トラックの定温コンテナ内の温湿度情報を収集して、GNSSの位置データとともに3G/LTE回線を介してデータをクラウドに送り、それら情報を事業者に提供するサービスだ(図3)。

 同社ではコンテナ内に設置された複数の温湿度データの収集に「ダスト・ネットワークス」を採用。このサービスは低温輸送のパイオニアである福岡運輸株式会社が導入済みである。

 またタイムマシーンは、「ダスト・ネットワークス」を採用した薬剤の温湿度モニターサービス「ACALA MESH」[*2]をリリースしているほか、防災用に無線雨量センサーおよび無線傾斜度センサーを開発中だ。

図3. 「ダスト・ネットワークス」でトラックのコンテナ内の温湿度情報を収集する、タイムマシーン「ACALA MOBILE」サービス
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 (2) 応用地質株式会社[*3]

 近年は豪雨や台風による被害が頻発かつ深刻化しており、局地的な雨量の観測や急傾斜地の監視がこれまでになく重要性を増している。

 「地球のお医者さん」を標榜する応用地質は、地すべりの兆候を監視する防災監視システム「i-SENSOR2」に「ダスト・ネットワークス」を採用。従来は一般的なワイヤレスネットワークを採用していたが通信が切断されてしまうことがあり、堅牢なネットワークを探していたときに「ダスト・ネットワークス」の存在を知ったという。実際に評価を行ってみたところ、センサーノードの数を増やしてもトラフィックが頭打ちにならず、また屋外でも安定したデータ収集ができるといった点などが評価され、採用に至っている。

 (3) ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 [*4]

 ビル、大規模倉庫、工場、地下道など、GPSの電波が届かない場所でも人やモノの位置を正確に把握したいというニーズは多い。ディー・クルー・テクノロジーズはビーコンを使って工場内の「どこに」「誰が」「何人いるのか」を把握する「見守りシステム」を開発。発信器を着けた作業員とのビーコンのやりとりにはペアリング処理が高速なBLE(Bluetooth Low Energy)を用いる一方で、BLEビーコンの情報の転送には堅牢な「ダスト・ネットワークス」を採用した。

 地下道や商用施設といった屋内での位置把握は海外旅行者向けサービスへの展開も想定され、BLEビーコンと「ダスト・ネットワークス」とを組み合わせたローコストかつローパワーな位置測定インフラの普及が鍵になる。同社の今後の取り組みが期待される。

 「これらの事例ほか、太陽光発電設備の遠隔監視、農業関連のセンシング、さらには橋梁などインフラのモニタリングへの採用や検討が進んでいます。『ダスト・ネットワークス』が持つ優れた特徴がさまざまな分野で認められてきたように感じています」と小林氏は述べる。なお、採用事例の一部については本特集の次回以降で詳細をお届けする予定だ。

図4.「ワイヤレスジャパン2015」(2015年5月27日~29日・東京ビッグサイト)において「ダスト・ネットワークス」の応用事例が数多く展示されたリニアテクノロジーブースの様子
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コンソーシアムを通じてビジネスのマッチングが進む

図5. サービスプロバイダやエコシステム提供企業で構成されるダスト・コンソーシアム

 リニアテクノロジーでは「ダスト・ネットワークス」の普及を図るために「ダスト・コンソーシアム」[*5][*6]を結成し、企業間のビジネスマッチングのほか、「ダスト・ネットワークス」に関する技術情報の提供などを進めている(図5)。

 センサーネットワークへの関心の高さを伺わせるかのように、同コンソーシアムが2014年10月17日に開催した設立発表イベントにはおよそ100社が参加した(図6)。

図6. 2014年10月17日に開催されたダスト・コンソーシアム設立発表会の模様
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図6. 2014年10月17日に開催されたダスト・コンソーシアム設立発表会の模様

 第2回目のイベントは2015年7月21日に開催され、事例紹介、パネルディスカッション、および関連ソリューション(エコシステム)の紹介などが予定されている。「こうしたイベントを通じて参加企業間の交流や新たなビジネスの創出を盛り上げていきたいと考えていますし、会員の皆様と大きな成功を分かち合えれば嬉しく思います」と、コンソーシアムの事務局長を兼務する小林氏は述べる。

 また、2014年に小林氏が日経エレクトロニクス誌に掲載した「信頼性の高い無線センサーネット構築の勘所」という連載記事も「ダスト・コンソーシアム」のウェブサイトに全文が再掲されており、技術的な要諦が理解できると好評だ。

 センサーネットワークの実現で課題となっている「ラスト100メートル」を、簡単に、安価に、かつ信頼性高く構築できるとして注目が集まる「ダスト・ネットワークス」。新しい可能性が花開くことが期待される。

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