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日経テクノロジーonline SPECIAL

ワイヤレスで実現する見守りシステム、工場や介護施設への導入に期待が集まる

右から
ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 取締役
エグゼクティブ テクノロジー メンター
美齊津(みさいづ) 摂夫 氏
ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 システムソリューション開発部
センシングネットワーク開発課 課長
土田 幸宏 氏
ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 グローバル戦略マーケッター
生田(しょうだ) 拓郎 氏
リニアテクノロジー株式会社 ダスト・エバンジェリスト
ダスト・コンソーシアム事務局長
小林 純一 氏

「切れない無線」とも称されるリニアテクノロジーの「ダスト・ネットワークス」を使った「見守りシステム」をディー・クルーズ・テクノロジーズ(神奈川県横浜市)が開発した。屋内の空間をメッシュで区切り、Bluetooth LEの受信強度からヒトの位置を把握。それらの情報を「ダスト・ネットワークス」を介してサーバーに集約する。まずは工場への導入を皮切りに、介護施設などへの展開を進めていく。

小林:本日はリニアテクノロジーが提供するダスト・ネットワークス(以下「ダスト」)をご採用いただいたディー・クルー・テクノロジーズの皆様からいろいろとお話を伺います。まずはじめに、御社が開発した「見守りシステム」の概要を紹介してください。

土田:工場を持っているあるお客様から、工場内での作業者の安全を把握できる仕組みができないだろうか、と相談されたことをきっかけに、当社が得意とするセンサー技術とワイヤレスネットワーク技術を組み合わせて開発したのが、2015年5月開催の「ワイヤレスジャパン2015」にも展示した「見守りシステム」です(図1)。バッジ型のBluetooth LE送信機を作業者の方に装着してもらうだけで、工場内における位置や動き情報を遠隔で把握することができます。

図1. Bluetooth LEとダスト・ネットワークスとを組み合わせて対象者の位置や動きを把握する、ディー・クルー・テクノロジーズが開発した「見守りシステム」の概要
[画像のクリックで拡大表示]
図2. 「見守りシステム」の受信機と、Bluetooth LEおよびダスト・ネットワークスのコントローラが搭載されている内部基板
[画像のクリックで拡大表示]

 仕組みとしては、工場の天井に5メートルから20メートル間隔で設置したBluetooth LE受信機(図2)でバッジからの電波をキャッチして、受信強度データをダストを介してサーバーに送り、3箇所ないし4箇所の受信機の受信強度から位置を割り出します。また、バッジに内蔵した加速度センサーのデータも集めて、作業者の動きや姿勢に異変がないかもチェックします。2015年9月時点でお客様の工場にて実証実験を進めているところです。

小林:バッジとのやりとりにはBluetooth LEを使い、データの集約にはダストを使うという、ハイブリッド型の構成にしていますね。

土田:最初はZigBeeのような既存のテクノロジーを使って位置把握用のメッシュを工場内に作ろうと考えたのですが、通信経路や再送処理などを自分たちで考える必要があり開発に時間がかかることと、受信ノードの設置にもさまざまな制約が生じてしまうことが想定されました。そうしたときにダストの存在を知って、メッシュが簡単に構成できて、低消費電力で、しかも「切れない無線」という特徴がまさに当社のニーズにぴったりだったため、まずは検討してみようというところからスタートしました。

小林:ダストは「SmartMesh」という愛称からも判るように、メッシュ型トポロジーを前提としていますから、広い工場のあちこちからデータを集約したいという御社の目的にはぴったりなんですね。ただし、「モート」と呼ぶ通信ノードがメッシュ内で移動するとメッシュの組み換えが毎回起きてかなり厄介なことになってしまいます。そこで、工場内を動き回る作業者の検出には近距離しか飛ばないBluetooth LEを採用された。お互いの特徴を生かした組み合わせで、すばらしいアイディアだと感じます。

生田:当社は2003年の創業以来、IoT向けのセンサーやLSIなどを開発してきましたが、現在のところIoTは話題にはなってはいますが市場としてブレークするまでには至っていません。その理由はなんだろうと考えたときに、やはりワイヤレスネットワークの問題が大きくて、末端のセンサーを確実につなぐ手段がこれまでは世の中にありませんでした。今回ダストと出会って、われわれがこれまで積み上げてきたものをようやくつなげられるようになったねと。また、受信機を工場や施設内に適当な間隔で置くだけでいいので、ネットワークに詳しくない現場の方々から見てもとてもイメージしやすいんですね。

さまざまな実験で「切れない無線」を実感

小林:リニアではダストの特徴を「切れない無線」というキャッチコピーで表しているのですが、細かく見ると実際はぶちぶち切れているんです。それを周波数ホッピングや通信経路の冗長化などでカバーして、実質的に切れない通信を実現しています。そこは既存のテクノロジーと大きく違うところです。

土田:ワイヤレスネットワークのシステムって、つながるようにはもちろん設計していても、実際の現場でつながらなかったらどうしようという不安が必ずつきまといます。ところがダストは、お客様の工場などで設置テストを行っていますが、今のところコネクションが切れてしまうような現象はまったくと言っていいほど出ていません。逆に、どうやったつながらなくなるんだろうとみんなで考えていて、いじわる試験の環境をどう作るかが課題になっているほどです。

美齊津:ダストは北米を中心に多くの実績があるそうで、われわれとしてはそこを心配しなくてもよくて、なにをどうセンシングするか、という本来の価値のところに注力できるのはとても大きいなと思いますね。現在はバッジ内の加速度センサーのデータをそのままBluetooth LEで送信しているんですが、インテリジェンス性を持たせて動きの異常を検出したきだけ送るようにしてもいいわけですし、あるいは心拍などのバイタルセンサーを搭載することも考えています。いずれにしてもダストにデータを渡しさえすればいいので、じゃあどういうデータを放り込むか、というところがわれわれにとってのこれからのキーになってくるだろうなと。

小林:ダストはアメリカのEmerson Process Management社の化学プラントに導入され徹底的に鍛えられましたから、いわばバグ出し済みなんですね。そのあたりが現場に設置したときのたしかな感触としてあるのかなと思います。また、稀に通信が切れてしまうようなテクノロジーだとそのたびに導入先から問い合わせが来てしまうはずで、とくにネットワーク規模が大きくなるとサポートしきれなくなってしまいますが、ダストであれば設置も簡単ですし手離れがいいので、トータルのコストを抑えられるところも強みです。

IoTサービスを通じて顧客や社会の課題解決に取り組む

生田:今回開発した「見守りシステム」はまずは工場のほか介護施設や病院に提案を進めていく予定ですが、バッジを人ではなくモノに付けて空間の状況をセンシングしたり、動物や家畜に付けるような応用など、幅広い展開を考えています。要は当社にとってセンシングアプリケーションのインフラがようやく出来上がったわけで、これまでのようにセンサーやLSIを提供するだけではなく、プラットフォームとその上のサービスでビジネスが構築できると期待していて、さまざまなパートナーとの協業を考えています。

小林:IoTは収益モデルをどう作っていくかが課題のひとつに挙げられていますが、御社はセンサーやLSIを持っていて、さらにはプラットフォームも手に入れられた。ダストでデータを集めてさえしまえば、あとはソフトウェアでさまざまなサービスに展開できますね。

生田:おっしゃるとおりです。日本は労働人口がこの先減っていくといわれていますが、IoTを使ってたとえば病院の空間を見守ることで人手不足の問題を解決するようなサービスにつなげられるでしょう。高齢化など「課題先進国」となっている日本が「課題解決の先進国」としてほかの国のお手本になるかもしれません。当社もぜひそういった方向を目指していきたいと考えています。

美齊津:余談になりますが、当社の社長である石川はわれわれ社員に対して「失敗をしなさい」と言うんですね。失敗はチャレンジした結果であると、ただしミスはするなと。ですから、ダストのような新しいテクノロジーもどんどん取り入れていこうという風土が社内にはあります。また、アナログとデジタルとソフトウェアの各エンジニア同士の、いわば「切れないネットワーク」が当社の強みのひとつであり、私自身も「テクノロジー・メンター」という立場から若いエンジニアが新しい技術や発想に積極的になるように努めています。そうやって生まれてきたのが今回の「見守りシステム」と言えるかと思います。

小林:なるほど、本日は大変貴重なお話を伺うことができました。「見守りシステム」の実用化と展開に期待しています。ありがとうございました。

参考リンク:
ディー・クルー・テクノロジーズ社:http://www.d-clue.com/
ダスト・コンソーシアム:http://www.dust-consortium.jp/
ダスト・ネットワークスの紹介記事:
・センサネットワークの決定版が遂に日本上陸/高信頼通信と超低消費電力を両立した「SmartMesh」 http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/TEC/15/lineartechnology1024/071400014/
・「切れない無線」が作る新たなビジネス・チャンス、加速のために、「ダスト・コンソーシアム」が発足 http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/TEC/15/lineartechnology1024/071400032/
・ワイヤレスセンサーネットワークの決定版として 採用が加速する「ダスト・ネットワークス」 http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/TEC/15/lineartechnology1024/071400040/
・ダスト・ネットワークスの応用が動き出す/薬剤や食品の温湿度監視を切れない無線で実現(タイムマシーン社採用事例)
http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/TEC/15/lineartechnology1024/070300002/
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