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日経テクノロジーonline SPECIAL

切れない無線がクルマの進化を加速する

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来 第1回

ワイヤレスネットワークで価値を提案
切れない無線がクルマの進化を加速する
先進のバッテリーマネジメントをSmartMeshで実現

電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載される大容量リチウムイオンバッテリーのセル電圧などの情報を、従来のワイヤーハーネスに代えてワイヤレスで収集しようという新たな試みが始まった。アナログ半導体で業界をリードするアナログ・デバイセズは、「切れない無線」として知られる「SmartMeshTM」を組み合わせたワイヤレス・バッテリーマネジメン トシステムを提案する。

畠山 竜声 氏
アナログ・デバイセズ 旧リニアテクノロジー 東日本地区 事業本部長

 エンジンからモーターへ――自動車の近年の大きなトレンドの一つが、石油から電気への転換である。

 この変化が特に顕在化しているのが、欧州、中国、およびインドの各市場で、環境規制の厳格化や大気汚染の防止政策を背景に、電気自動車(EV)/プラグインハイブリッド車(PHV)の出荷が急成長を遂げつつある。日本においても新車販売におけるEVおよびPHVの比率を2030 年には20~30%まで高めたいとの目標が政府によって定められたこともあって[*1]、国内市場の発展と成長に期待が集まっている。

 EV/PHVの一層の普及には、充電ステーションの整備、車両価格の低廉化、助成制度などいくつかの駆動要因が挙げられるが、ユーザーから見たクルマの実用性という面では、満充電における走行可能距離を現行のガソリン車やディーゼル車並みにどこまで伸ばせるかが鍵になるだろう。

 「走行可能距離はクルマに搭載されるバッテリー容量を増やすことで伸びますが、居住空間やトランクのスペースの確保、車両重量、および価格などの制約からおのずと限界があります。そのため、限られた空間をいかに有効かつ効率的に使ってバッテリーをより多く搭載するかが重要です」と、アナログ・デバイセズ(旧リニアテクノロジー)の畠山竜声氏は述べる。

[*1] EV・PHVロードマップ(経済産業省、2016年3月23日)

SmartMeshでバッテリー情報を収集

 EV/PHVの進化を見据えて、搭載される大容量のリチウムイオンバッテリーを、より堅牢に(safer)、より柔軟に(smarter)、よりエコに(greener)、より低コストで(cheaper)マネジメントするソリューションとして、アナログ・デバイセズが提唱するのが、「ワイヤレス・バッテリーマネジメントシステム」(以下、Wireless BMS)である。

 Wireless BMSは、同社の高精度バッテリーマネジメントIC「LTC6811」シリーズと、「切れない無線」として知られる同社が提供する「SmartMesh」とを組み合わせたソリューションだ。リチウムイオンバッテリーセルのSoC(State of Charge:充電状態)やSoH(State of Health:劣化状態)をLTC6811でセンシングし、その情報をSmartMeshを通じてワイヤレスでバッテリーマネジメントECUに集約する仕組みである。

 本ソリューションをBMWの小型EV「i3」に搭載したコンセプトカー(図)は、2016年11月にドイツで開催されたElectronica 展でお披露目されたのち、2017年1月に東京ビッグサイトで開催された国際カーエレクトロニクス技術展などでも展示され、ワイヤレスがもたらすメリットは多くの来場者の関心を集めた。

図.バッテリーマネジメント情報の収集に使われるCANバスを用いた従来の方式(左)と、アナログ・デバイセズが提唱するSmartMeshを用いた方式(右)。車両はWireless BMSを実装したコンセプトカー(BMW i3ベース)
[画像のクリックで拡大表示]

 試作システムの公道テストも行われており、実用化に向けた技術開発が進められている段階だ。「複数の自動車メーカーとお話が進んでいます」と畠山氏は述べる。

高精度な計測と堅牢な通信が特徴

 Wireless BMSを構成するLTC6811は、分解能16ビットのΣΔ型A/Dコンバーターと3次のデジタルフィルターを内蔵し、SoCなどの把握に必要なリチウムイオンセル電圧を業界トップレベルとなる誤差0.04% 以下(1.2mV以下)という高い精度で測定できるのが特徴だ。

 一方のSmartMesh は、米カリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスの教授を務めるクリス・ピスター氏らによって開発されたワイヤレスネットワークで、周波数は2.4GHz帯(ISM帯)を使う。

 代替経路を確保しやすいメッシュ型トポロジーを採用し、電波の安定したチャネルに自動的に切り替えるチャネルホッピング機能やリトライ機能と相まって、ワイヤレスながら通信の信頼性がきわめて高い(safer)。

 電磁ノイズの多い工場やプラントのほか、橋やトンネルなどの構造物のセンサーネットワーク(IoT)として、すでに多くの採用事例がある。

ハーネスの削減で多くのメリット

 では、バッテリーマネジメントに関する情報をワイヤレスでやり取りすることで、どのようなメリットが生まれてくるのだろうか。

 当然、ワイヤーハーネスやコネクターが不要になるため、断線や接触不良などの障害が発生する恐れがない。また、ハーネスの制約がなくなるため、バッテリーパックの分割搭載や増減設も容易になる。すなわち、クルマの構造や仕様に応じてより柔軟(smarter)なバッテリー構成を選択できる。

 クルマ1台当たりのワイヤー削減効果は約10m、ワイヤーやコネクターの削減による軽量化は約0.5Kgだが、仮に5万台のクルマを生産したとすると、ワイヤー500Km、コネクターと合わせて25,000Kgもの資源を節約することが可能になる(greener)。

 さらに、ハーネスが不要になることで、組み付け工数の削減などが実現され、低コスト化(cheaper)も図れる。「ハーネスは指や腕の入りにくい、かなり狭いところを取り回さなければならない場合も多く、ハーネスの削減はそのまま生産コストの削減に結びつきます」(畠山氏)。

 ちなみにBMW i3 ベースのコンセプトカーの場合、ハーネスの取り回し作業用の隙間をバッテリーパック間に設けておく必要がなくなったため、同じ体積のままでバッテリーユニットを33kWh から55kWh に増強することができたという。

車載グレードのSmartMeshを開発中

 アナログ・デバイセズでは、Smart-Mesh の車載応用を見据えて、ISO26262 をはじめとする車載要件に対応したSmartMeshコントローラーの開発を進めており、順調に進めば数年後には実車両に搭載される見通しだ。

 畠山氏は次のように述べる。「信頼性の高いワイヤレス通信を実現するSmartMesh を2013 年に日本で初めてご紹介したときに、真っ先に関心を寄せていただいたのが実は自動車業界でした。ここでご紹介したWirelessBMSはハーネスを代替できる可能性を示しており、バッテリーマネジメント以外の使い方についても自動車メーカーやサプライヤのお客様と検討を進めていきたいと考えています」。

 また、アナログ・デバイセズが提供する12V鉛蓄電池向けのバッテリーセンサーICとSmartMeshとの組み合わせについても、併せて提案を行っていく考えだ。

 畠山氏は「旧リニアテクノロジーはアナログ・デバイセズの一員となりましたが、ICを組み合わせただけの提案を超える、システムソリューションという新しい価値の創造にこれからも努めていきます」と述べ、クルマの未来に向けた価値の提供に引き続き取り組んでいく。

お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒105-6891
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    URL:http://www.analog.com/jp/