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LTspiceが64ビット化で性能が1.3倍に アナログ回路技術の検定制度もスタート

LTspiceが64ビット化で性能が1.3倍に
アナログ回路技術の検定制度もスタート

リニアテクノロジーが無償で提供している回路シミュレータ「LTspice」が64ビット化され、「LTspice XVII(セブンティーン)」としてリリースされた。64ビット化によって30%前後の性能向上が図られたほか、使い勝手の向上など細かいエンハンスが盛り込まれている。合わせてLTspiceの利用促進に努めるLTspiceユーザーズクラブでは、アナログ回路スキルの指標として、2017年1月から新たに「アナログ回路シミュレーション検定」を実施する。

戸上 晃史郎氏
リニアテクノロジー株式会社 LTspice Users Club事務局

 世界中のアナログ回路技術者が回路の解析に活用している無償の回路シミュレータ、「LTspice」(図1)がついに64ビット化された。バージョンのネーミングは、これまでの「LTspice IV(フォー)」から一気に上がり、来る2017年にちなんで「LTspice XVII(セブンティーン)」と名づけられた。2016年7月からリニアテクノロジーのウェブサイト[*1]で公開されており、従来どおり無償でダウンロードできる。

 「LTspiceに関してユーザーの皆様からもっともご要望が多かったのが64ビット化です。LTspiceの開発者であるMike Engelhardt(マイク・エンゲルハート)がようやく対応してくれました」と、リニアテククノロジーでLTspiceを担当する戸上晃史郎氏は説明する。

 LTspice XVIIは64ビット版のMicrosoft Windows 7、8、および10で動作する。ただしMacOSは対応していないので注意が必要だ。そのため、MacOSユーザーおよびWindows XPユーザー向けに引き続きLTspice IVも提供される。なお、LTspice XVIIとLTspice IVは一台のWindows環境上に同居可能である。

 64ビット化によるメリットはなんといっても性能の向上だ。「回路規模や設定条件などにもよりますが、ひととおり使ってみた印象では、LTspice IVに比べて平均して約30%程度の性能向上が得られています」と、戸上氏は述べる。(参考:図2)

 回路規模が小さければそれほど恩恵はないとしても、数十分から数時間を要するようなトランジェント解析や大規模な回路解析などでは、パソコンハードウェアの性能を上げずともシミュレーション時間をおよそ70%に短縮できる。LTspiceはもともと他のSPICEツールに比べて性能が高いとされており、さらなる性能向上によって使い勝手の一層の向上が図られたことになる。

 なお、扱えるノード数や部品数はこれまでのバージョンのLTspiceと同じく無制限である。

図1. 業界標準の回路シミュレーションツール「LTspice XVII」
[画像のクリックで拡大表示]
図2. 64ビット化されたLTspice XVIIのベンチマーク

使い勝手の向上のほか逆回復特性の解析が可能に

 LTspice IVの機能面での変更および追加は次のとおりだ。使い勝手の面では、内部がUnicodeに対応したことで、これまでは英数字(半角)に限られていたノード名、部品名、およびコメントに、かなや漢字などの文字が使えるようになった。また、細かいところではWindowsのファイルアイコンに回路図の縮小イメージ(サムネール)が割り当てられるようになった。縮小なのでぼんやりとしか分からないにしても、ファイルを探し出す目当てになるだろう。

 ユーザーインタフェースも改善された。最新のグラフィック・ライブラリを搭載するとともにマルチモニタにも対応したことで作業性が大幅に向上。さらに、画面上の任意の位置に複数のペイン(サブウインドウ)を配置できるようになり、回路図や特性グラフなどを開きながら効率的に作業を進められる。

 シミュレーション機能としては、ダイオードモデルにソフトリカバリパラメータ(Vp)が追加され、逆回復特性も解析できるようになった(図3)。逆回復電流をゼロとして扱っていた従来に比べて、トランジェント特性の精度向上が期待できそうだ。

 また、IGBTのシンボルが追加された。ただし実IGBT部品のライブラリ化は今後を予定する。

図3. ダイオードの逆回復特性のシミュレーションも可能に
[画像のクリックで拡大表示]

ユーザーズクラブから情報を発信

 LTspiceは無償ということもあって多くのユーザーがいる。「商用SPICEの代わりにLTspiceを導入する企業も増えています。情報システム部門も巻き込みながら全社の標準ツールとしてLTspiceを導入した企業もあります」と戸上氏は最近の動向を説明する。

 大学での利用も多いという。たとえば京都大学では学部1年生の講義にLTspiceを使用中だ。ライセンスキーなどを必要とせずに個人のノートパソコンでも簡単に動かせるため、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device、個人パソコンの持込み)的な使い方にもマッチする。同様の目的で、若手社員を対象にしたアナログ回路研修のツールとして用いている企業もあるという。

 2016年4月には、株式会社図研が同社のシステムレベル回路設計環境「CR-8000 Design Gateway」に「LTspice」との連携機能を追加し、回路設計環境の中で回路解析(シミュレーション)を一括で処理できるようになった。商用ツールとの連携はこれから増えていく可能性がある。

 こうした利用者の増加に伴って、ユーザー同士の交流の場として設けられたのが「LTspice Users Club」[*2]である。

 オンライン会報誌「LTspice Magazine」の発行のほか、セミナーおよびカンファレンスの開催情報、TIPSなどが掲載されているほか、日本語での技術的な問い合わせにも対応している。将来はユーザー同士が情報をやり取りできるように掲示板機能も設けていく予定だという。

 2013年12月と2015年4月に開催された「LTspiceユーザーの集い」(図4)には、LTspiceの開発者であるMike Engelhardt氏も参加し、日本のエンジニアと交流を深めた。

 LTspice Users Clubの事務局を務める戸上氏は、「LTspice Users Clubの会員数は2016年10月現在で4,000名を超え、おかげさまで順調に増加しています。企業の方だけではなく、学生や個人ユーザーの登録も増えてきました」と述べる。

図4. 2015年4月に開催された「LTspiceユーザーの集い」の模様
図5.「LTspiceユーザーの集い」に参加するために来日した開発者のMike Engelhardt氏

アナログ回路の技術検定がスタート

 LTspice Users Clubの新たな取り組みが「アナログ回路シミュレーション検定」の開催だ。アナログ回路に関する基礎知識および応用知識を確認するテストで、2017年1月頃に第1回目を実施する予定である。受験料は数千円を予定している。

 「企業の採用担当者から、人材のアナログ技術レベルを知る指標が欲しいという声が上がっていました。また、学生さんにとっても、検定に合格したという事実があれば自己アピールにも使え、活躍の場が増えると考えられます。そうした狙いのもと、新たに検定をスタートすることにしました」と、戸上氏は経緯と狙いを説明する。

 アナログ回路シミュレーション検定は、最初にウェブ上でオンラインセミナーを受講したのち、最寄りの会場で本試験を受験するという流れになる。試験会場は全国各地に設けられる予定だが、日時が指定されるわけではなく、任意の時間に行って受験する形式だ。問題は選択式のみで記述はない。合格すると合格証(カード)が後日送られてくる。

 設問は基礎問題と応用問題とで構成される予定で、このうち基礎問題はアナログ回路設計に従事している人であれば簡単に解ける問題だという。一方の応用問題は比較的難しめに設定されるそうだが、事前のオンラインセミナーを受講して内容を理解しておけば十分に合格できるそうだ。なお、LTspiceの使い方を問う試験ではないため、LTspiceが使えなくても問題ないという。

 戸上氏は「LTspice Users Clubでは、LTspiceを活用する上で重要な情報をこれからも発信していくほか、新たに検定もスタートします。アナログ回路技術に関するご自身の指標として、あるいは就職の際のアピールとして、活用していただければ幸いです」と述べ、LTspiceの活用のさらなる広がりに期待を寄せた。

図6. 「アナログ回路シミュレーション検定」問題例
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