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外部補償不要で電流センス回路の小型化を実現次世代の性能を実現した電流センスアンプ

アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来 第5回

外部補償不要で電流センス回路の小型化を実現
次世代の性能を実現した電流センスアンプ
温度ドリフトやオフセットを極限まで抑制

燃料噴射制御などさまざまな機能で使われる電流センス回路。EVの普及に伴い電流をセンスする場面はますます増えており、センシング技術の重要性が高まっている。アナログ・デバイセズは20年以上の経験と実績をベースに、温度ドリフトの徹底した抑制など、新たな性能レベルを実現した電流センスアンプを開発した。

高木 秀樹 氏
アナログ・デバイセズ 株式会社 オートモーティブ セグメント シニア フィールドアプリケーションエンジニア
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 クルマの電子化や電動化が進む中で、目立たないながらも重要な役割を担っているのが、電流センス回路である。

 たとえばガソリン車やディーゼル車に搭載される電子燃料噴射装置では、ホットワイヤと呼ぶ熱線の電流変化を計測して吸入空気量を求める方法が、一般的となっている。また、噴射弁の開閉タイミングを制御するために、ソレノイドに流れる電流のセンシングも行われている。

 このほか、オートマチックトランスミッション制御、電動パワーステアリング制御、ブレーキ制御、アクティブサスペンション制御、各部の電源回路(DC/DCコンバータ)など、自動車のさまざまな部分に電流センス回路が組み込まれている。

 制御ループの一部を構成するという目的に加えて、異常検出手段の1つとして使われることも多い。

 「電流センス回路はきわめて地味な存在です。方式自体も信号経路に挿入したシャント抵抗の両端電圧を増幅して電流に換算するのが基本であり、自動運転技術のような華々しさはありません。それでも、電流を精度高く安定的にセンスするにはさまざまな課題があり、実は高度な工夫や回路技術が不可欠なのです」と、アナログ・デバイセズの高木秀樹氏は説明する。

 具体的なポイントとしては、温度補償、温度ドリフトの低減、オフセットの低減、電流変化への追随性(帯域)の向上、広いコモンモード電圧範囲の確保、コモンモード除去比(CMRR)の向上、自動車の使用環境に合った動作温度範囲、シャント抵抗の誤差補正、回路面積の小型化などが挙げられるという。

アナログ技術で性能にアプローチ

 電流センス回路の実装方法にはいくつかの方法があるが、日欧の自動車メーカーあるいはサプライヤでそれぞれに違いがあると高木氏は述べる。

 「日本では、単体のオペアンプにマイコンを組み合わせてドリフトやオフセットなどをデジタル的に補正する手法が主に用いられるように思います。一方欧州では、マイコンで補正を行うのではなく、電流センス回路自体で性能を担保しようという傾向があると感じます」。

 いずれの方法にもそれぞれメリットはあるが、将来のさらなる電子化に備えて回路の小型化を少しでも進めるには、マイコンの処理を軽減し、電流センス回路そのもので性能を確保したほうが望ましいと考えられる。

 アナログ・デバイセズは20年以上前から電流センスアンプを提供してきたが、欧州を中心とした高性能化や小型化を求める声に応えて、温度ドリフト、オフセット、帯域などの性能を従来品に比べて一気に高めた製品を開発した。「なんらかのブレークスルーを達成したというよりも、長年にわたるアナログ技術の積み重ねによって実現できたと考えています」と高木氏は説明する。

ゼロ・ドリフト回路などを搭載

 高性能な電流センスアンプの1つが「AD8418A」である。独自の「ゼロ・ドリフト・コア」と呼ぶ回路を内蔵し、0.1μV/℃(typ値)または0.4μV/℃(max値)という優れたドリフト性能を実現しているのが特徴だ。電流センス回路を2組設けて、片方が動作中にもう一方に補正をかけ、その動作を交互に繰り返すことで、ドリフトを継続的に抑える仕組みである。

 シャント抵抗の電流センスは単方向と双方向のいずれにも対応する。主な仕様は、入力コモンモード電圧-2V~+70V、コモンモード除去比(CMRR)90dB(min値、DC)、動作温度範囲-40℃~+125℃、初期ゲイン20V/V、最大ゲイン誤差は全温度範囲で±0.15%となっている。

 「AD8410」は、特性に優れるBCD(バイポーラ/CMOS/DMOS)プロセスを採用した、近日発売予定の広帯域電流センスアンプだ。

 帯域は2MHzと広く、電流制御型のDC/DCコンバータなど変化の速い電流にも追従できる。また、パッケージング時の応力によってドリフト特性が悪化(変化)することが知られているため、AD8410ではパッケージング後にトリミングを行う独自の「イン・パッケージ・トリム」技術によって、1.0μV/℃(max値)という優れた温度ドリフト特性を得ている。

 その他の仕様を挙げると、入力コモンモード電圧は-2V~+70V、動作温度範囲は車載グレードに対応した-40℃~+125℃(AD8410WB)または-40℃~+150℃(AD8410WH)、コモンモード除去比は110dB(min値、DC)となっている(※)

※仕様はいずれも発売前のものであり、今後変更される可能性があります

 最後に紹介する「LT1999」は、帯域2MHz、動作温度範囲-55℃~+150℃、入力コモンモード電圧-5V~+80V、全入力コモンモード電圧範囲でのコモンモード除去比96dB(min値、DC)など、きわめて特性が良く、かつ、差動入力電圧許容範囲が±60V、10mSと堅牢な電流センスアンプといえる。

 また、電源シーケンスなどと連動できるように、シャットダウンピンを備える。

新たな性能レベルの実現に挑む

 アナログ・デバイセズが提供するこれらの電流センスアンプは、モーター制御(EV等の大型モーターは除く)、ソレノイド制御、電源マネジメント、異常診断などに最適といえる。

 性能に優れるため外部の補償回路が不要になり、ソリューションサイズの小型化が図れるメリットも大きい。ディスクリート部品で構成した場合と比べて、実装面積を1/3程度に小型化できる場合もあるという。

 また、ドリフトやオフセットが小さいため、電流センスの正確性をこれまで以上に高められる。「今まで実現できなかったレベルのセンシングが、ようやく実現できるようになった、という声もお客様からいただいています」(高木氏)。広い入力電圧範囲で高いCMRRを有するので、たとえばEVに欠かせないDC/DCコンバータでは、ノイズの多い環境や負荷変動の大きなシステムにおいても、ハイサイドで高精度に電流検出が可能となり、より安全に正確に電力制御が実現できるようになるだろう。

 以上説明した電流センスアンプは目立たない存在だが、確かなアナログ技術がなければ優れたソリューションを提供することは難しい。「アナログ・デバイセズの強みは、高精度製品を実現させる回路技術やプロセス技術を有していること。さらに、世界中のクルマ関連メーカーとの協業により、いかなるアプリケーションにも最適な提案ができること。これからも、高いアナログ技術力で高性能な電流センスアンプの開発に努め、電子化・電動化へと向かうクルマの進化に応えていきます」と高木氏は展望を述べた。

双方向電流センスアンプのラインアップ
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