• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP
日経テクノロジーonline SPECIAL

高精度な温度測定をワンチップで実現 もう高精度な温度測定回路の設計に時間を使う必要はありません 産業用途や医療用途で活用が広がる

リニアテクノロジーの「LTC2983」および「LTC2984」は、±0.1℃という高精度な温度センシングに必要なアナログ回路やデジタル回路を7mm×7mmサイズの小型パッケージに凝縮した、高精度デジタル温度測定ソリューションである。産業用途や医療用途などを中心に採用が広がっており、手間のかかる温度センシング回路の設計を省力化できると好評だ。

石田 浩史 氏
リニアテクノロジー株式会社 西日本地区統括セールスマネージャ

 複雑な回路設計を必要とせず、温度センサーを接続する程度の手軽さで、0.001℃の分解能を持ち、RTDを用いた場合で±0.1℃という高い精度で温度を測定できるリニアテクノロジーの高精度デジタル温度測定IC「LTC2983」および「LTC2984」の活用が広がっている(図1)。「産業用途や医療用途を中心にご採用いただくケースが増えています」と、同社の石田浩史氏は述べる。

 ガスの多点での温度測定、工作機械のステージの同じく多点での温度測定、医療機器における検体の温度測定などが一例だが、変わったところでは、高エネルギー物理学の実験設備でプラズマ温度の測定にも使われているそうだ。

 「回路に組み込む使い方だけではなく、1台あたり20万円程度もする高精度な温度計測装置を多数購入する代わりに内製されるお客様も少なくありません」と石田氏は説明する。

 LTC2983については「温度センシングを変えるワンチップIC/±0.1℃精度で多系統の温度を測定」という記事で概要をすでに紹介しているが、EEPROM内蔵型のLTC2984が新たに登場したこともあり、あらためて取り上げてみたい。EEPROMを内蔵することにより、カスタムセンサーの係数やセンサーの構成情報をIC内に保存することができます。これによりカスタムセンサーが必要なシステムを設計する際に外付け(CPU内蔵)メモリーが不要になり、設計がより簡単になります。

図1.マルチセンサ対応の高精度デジタル温度測定IC「LTC2983」および「LTC2984」(EEPROM内蔵型)
[画像のクリックで拡大表示]

温度センシングの開発工数を大幅に削減

 高精度な温度測定は意外と厄介だ。センサーの特性をよく理解したうえで、リニアリティに優れノイズの少ないアナログフロントエンドやA/Dコンバータを用いなければならないなど、さまざまなノウハウが必要になる。また、センサーの出力特性は温度に対して非線形なため、A/Dコンバータで得られたデジタル値に対して、リニアライズと呼ぶ演算を高精度に適用して温度値に変換してやらなければならない。

 「高精度な温度計測回路設計に時間をかけず手軽に実現したいという多くのお客様のニーズに応えて、リニアが持つアナログ技術とデジタル技術の両方を駆使して開発したデバイスが、LTC2983およびLTC2984です」と石田氏は説明する。つまり、手間のかかっていた温度センシング回路の設計にかかる時間や工数を、付加価値を生む本来のアプリケーションの開発に注ぐことができるのがメリットだ。

 LTC2983/LTC2984は温度センシングに必要なアナログ回路およびデジタル回路のすべてをシングルパッケージに統合した、マルチセンサ対応の高精度デジタル温度測定ICで、次のようなブロックがわずか7mm×7mmサイズのパッケージに凝縮されている(図2)。

(1) 熱電対、RTD(測温抵抗体)、あるいはサーミスタなどの温度センサーを接続する20チャネルの入力
(2) 20:6のマルチプレクサと6チャネルのアナログフロントエンド
(3) 温度センサーが出力するアナログ信号を正確なデジタル値に変換する、3チャネルの24ビットΔΣ型A/Dコンバータ
(4) 読み取ったデジタル値をセンサーの種類に応じて正確な温度値(摂氏または華氏)にリニアライズする係数テーブルおよび演算ソフトウェア
(5) リニアライズ処理などを実行するマイコンコア
(6) カスタム補正テーブル(LTC2983はRAM、LTC2984はEEPROM)
(7) その他、高精度な励起電流源など

 入力が20本もあるため構成の自由度が高く、たとえば複数のセンサーを接続して異なる温度範囲や多点の測定に活用することもできる。4線式のRTDなら最大4系統(16本)+共有センス抵抗(1本)が可能だ。熱電対+サーミスタや、3線式RTD+4線式RTD+ダイオードなど、複数種のセンサーデバイスを同時に接続してもよい(図3)。接続したセンサータイプなどの構成情報は内部のレジスタに設定する。

図2.温度センシングに必要なアナログ機能とデジタル機能をワンチップに統合
[画像のクリックで拡大表示]
図3.4線式RTDと3線式RTDを接続した構成例
[画像のクリックで拡大表示]

カスタムセンサーにも柔軟に対応

 LTC2983/LTC2984は市場に流通している以下の温度センサーに対応した係数テーブルをあらかじめ内蔵しているため、これらを使う場合は、センサータイプや入力ピンなどの情報をレジスタに設定するだけで済む。

・熱電対:J型、K型、E型、N型、R型、S型、T型、B型
・RTD:PT-10、PT-50、PT-100、PT-200、PT-500、PT-1000、RTD 1000(0.00375)、NI-120(いずれも2線式、3線式、4線式の接続が可能)
・サーミスタ:44004~44008および44030~44034(2.25kΩから30kΩ)、YSI-400、Spectrum 1003k
・その他:ダイオード、センス抵抗、汎用電圧測定(A/Dコンバータ直結)

 各センサーの公称誤差と測定温度範囲は表1のとおりだ。

表1.センサータイプごとの温度範囲と計測誤差
[画像のクリックで拡大表示]

 また、上記以外の温度センサーも接続できるように、24ビット長×64エントリーの係数テーブルが内蔵されており、カスタム熱電対、カスタムRTD、カスタムサーミスタのいずれかを接続することもできる。カスタム係数テーブルの64エントリーの各ポイントは直線補完されるが、カスタムサーミスタについては5次項のSteinhart-Hart係数としてAからFまでの各項を32ビット浮動小数点形式で設定することもできる。

図4.カスタムサーミスタの接続時は5次項で構成されたSteinhart-Hart係数式を適用可能

 なお、LTC2983はパワーオンのたびにカスタム係数テーブルを内部RAMにロードしてやる必要があるが、512kBのEEPROMが内蔵されたLTC2984ではテーブルを一度書き込むだけでよい。ただし、カスタム係数テーブルはLTC2983/LTC2894内に一組しかないため、種類の異なる複数のカスタムセンサー(たとえば、カスタム熱電対とカスタムRTD)を同時に接続することはできない点のみ注意が必要だ。

Arduino互換環境に対応した評価ボードを提供

 リニアではArduino互換の「Linduino」と呼ぶシングルボードコンピュータを提供中で、LTC2983の評価ボード「DC2209」と組み合わせて使うことができるようになっている。また「DC2209」には、熱電対、RTD、サーミスタなどのさまざまなドーターボードが用意されている(図5)。

 LTC2983のレジスタ群の設定にはグラフィカルなインタフェースを持つ「QuickVal」ソフトウェアが用意されており、生成されるCコードのコンフィギュレーションファイルはそのままLinduinoにロードすることができる(図6)。

 これらの評価ボード類はDigiKeyなどから購入可能だ。Linduino One(DC2026)、LTC2983ボード(DC2209)、20入力のブレッドボードキット(DC2210)を組み合わせた「DC2296A-KIT」の場合で、販売価格はおよそ196ドルである(2015年11月末日現在)。

 「高精度な温度センシング回路の設計に苦労されているお客様や、高価な高精度温度計を使っているお客様に、LTC2983/LTC2984をぜひ試していただきたいと思っています」と石田氏は訴求する。

 LTC2983とLTC2984は、±0.1℃クラスの精度で温度測定を必要とするアプリケーションに最適な、シングルチップの温度センシングソリューションICといえる。産業用途や医療機器のほか、測定器、センサーネットワークなど、さまざまなアプリケーションの小型化と高性能化を実現するとともに、温度センシングに要する設計工数を省力化してくれる頼もしい存在である。

図5.Linduino One(中央上)、LTC2983の評価ボード(左列上)、および各種温度センサーに対応したドーターボード
[画像のクリックで拡大表示]
図6.LTC2983/LTC2984のレジスタ設定ファイルをグラフィカルに作成できる「QuikEval」ソフトウェア
[画像のクリックで拡大表示]
お問い合わせ
  • アナログ・デバイセズ株式会社
    アナログ・デバイセズ株式会社

    〒102-0094
    東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル8F

    TEL:03-5226-7291

    FAX:03-5226-0268

    URL:http://www.linear-tech.co.jp/