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日経テクノロジーonline SPECIAL

第7回:使い勝手の向上と新応用への道を開く 第3世代のLED照明モジュール「Acrich3」

シンプルな回路でAC電源での直接駆動が可能なLED照明モジュール「Acrich」を始めとする独創的なLED製品の提供を通じてLED照明の普及に貢献する、LED専業メーカーの韓国Seoul Semiconductor。チップをプリント配線基板に直接実装することでパッケージ構造を大幅に簡素化した独自技術「WICOP」を開発し、照明向けに市場投入するなど、LED業界の技術革新を常にリードし続けている。日本でも同社製品の先進性は高く評価され、着実に採用が広がっている。そのSeoul Semiconductorが、日本市場での使い勝手をさらに向上させ、同時にLED照明の新しい活用法を提案するために投入した第3世代のLED照明モジュール。これが「Acrich3」シリーズである。

 LED照明の普及は確実に進んでいる。街の中にある店舗や公共施設、住宅の中で、LED照明を目にする機会が格段に増えてきた。もはや、LED照明であるかどうかを意識して見ないと、気付かないほど浸透している。

 もともとLED照明は、高エネルギー効率や長寿命といった電球など従来照明に勝る長所があった。ただし、長所があるだけでLED照明が普及してきたわけではない。使い勝手を向上させる技術開発があってこそ、その強みが際立ってきたのだ。どんなに優れた製品でも、それを利用するために高価な設備や大きな部品、複雑なシステムを併せて使う必要があるのでは、普及はままならない。

図1 Seoul Semiconductorの第三世代LED照明モジュール「Acrich3」

 Seoul Semiconductorは、まさにこの点にフォーカスした技術開発を進め、ACで直接駆動できるLED照明モジュール、Acrichを提供してきた。その極めてシンプルな回路構成が実現する数々のメリットが世界中の支持を受け、LED照明の利用シーン拡大に貢献してきた。

 そして、第3世代であるAcrich3は、Seoul SemiconductorがLED照明の利用拡大に向けて大切だと考えているコンセプトにさらに磨きを掛け、正統進化させた製品である(図1)。

 AC電源で直接駆動する基本的な手法は、Acrich2までの方法を継承(第2回 参照)。加えて、安定性と信頼性を大幅に高める数々の改善を新たに投入することで、利用シーンを格段に広げている。加えて、センサーや無線を介する制御を加えた高付加価値のLED照明システムを、シンプルな回路構成で実現できる特長も盛り込まれた。併せて利用できるLEDのパッケージサイズやVFの選択肢も広がった。

 Acrich3がAcrich2から進化した部分を一つひとつ見ていこう。

よりスムーズなトライアック調光を可能に

 Acrich3の1つ目の変更点は、極めて自然なトライアック(位相制御方式)調光ができるようになったことである。

 トライアック調光は、交流電源の波長のうちの一部分を切断することで明るさを調整する調光方式である。従来品に組み込まれていたステップAC LEDドライバを使ってトライアック調光を行う場合、組み合わせる調光器の種類によっては、LEDの点灯状態が不安定になることがあった。Acrich3では外付け回路を含めてこの問題を解消。どのような調光器を使っても、明るさをスムーズに変えることができるようになった。これによって、使い勝手は格段に向上した。

 調光時の安定性が増したのは、調光時のトライアックに電流を補うための補助電源「Built in Active Bleeder Driver」をAcrich ICに追加した効果だ。米国NEMA ( National Electrical Manufacturers Association)の規格、「NEMA SSL-6」では、調光時の輝度の揺れの上限と下限が厳格に定められている。高い安定性を実現したAcrich3は、この規格をクリアしている。

 Acrich3では、LEDを駆動する電流の量を変えて明るさを調整するアナログ調光にも改良を加えている。これまでは、最も明るさを絞る場合でも、最大値の5%までしか絞れなかった。つまり、完全消灯はできなかった。Acrich3では、電流量を0%にして、完全消灯できるようになった。

図2 Acrich3の前世代品Acrich2に対する違い
[画像のクリックで拡大表示]

スマートライティングをシンプルな回路構成で実現

 2つ目の変更点は、よりシンプルな回路で付加価値の高いLED照明システム、スマートライティングを実現できるようになったことだ。センサー、タイマー、無線機能などを組み合わせ、インテリジェントな調光や調色を可能にするためのものだ。

 工場や商業施設、そして住宅の照明を、利用状況に応じて照度や色をキメ細かく変えることで、効果的かつ効率的に使おうとする機運が高まっている。これにともなって、人感センサーや照度センサーなどのセンサー、タイマーやスケジューラーによる自動制御や、IEEE802.15.4、Wi-Fi、Bluetoothなど無線を介して遠隔制御ができるスマートライティングのニーズが高まっている。

 スマートライティングでは、AC/DCコンバータや調光用インターフェースを別途用意し、アナログ調光でLEDの駆動電流を調整して明るさを変える必要があった。Acrich3では、6mm×6mmのAcrich ICにこの機能を集約。これによって、例えば赤外線センサーを組み合わせたシステムならば、全ての部品を一つのボードに実装できるようになった。

 センサーを組み合わせる場合には、以下のようなシステム構成になる。センサーの出力は、Acrich3のモジュールの外に置いた調光制御システム内で処理。その制御信号をDC電圧に変換して、Acrich3のICのADMI端子に入力する。Acrich3を2個使い、これを別々に制御して色温度の異なるLEDをそれぞれ制御すれば、調色も可能になる。

 また、通常の回路構成ならば、センサーを駆動するための電源を別途用意する必要がある。Acrich3ではDC7V、5mAまでを出力できるセンサー用電源を搭載しており、よりシンプルな回路の構成が可能である。さらに、モジュール内にセンサー自体を搭載することもできる。

安定性と信頼性を向上させる数々の工夫を投入

 3つ目の変更点は、電灯線の電圧が変動しても、安定した明るさを維持できるようになったことだ。電灯線の電圧は、接続している電気機器の稼働状況に応じた負荷変動で、大きくと変わる。Acrich3に搭載された「ライン電圧レギュレーション」と呼ぶ機能では、規定値よりも電圧が上振れしても、それが20%以内ならば、明るさの変化がほとんど気にならない出力電力を±5%以内に抑え込む。

 4つ目の変更点は、急激な温度上昇からモジュールを守る「OTP(Over Temperature Protection)機能」の強化である。長時間点灯させ続けることが多い屋外の照明では、過度の温度上昇が起こり、故障や不具合につながる可能性があった。前世代品のAcrich2では、こうした事態を避けるため、モジュールの温度が150℃に達すると、駆動電流を切ったり流したりして温度を下げる制御をしていた。これに対しAcrich3では、モジュールが160℃になったことを検知した場合に電流を切り、130℃まで温度が下がるのを待って通常動作に復帰する制御法に変更した。こうしたヒステリシスな温度制御を採用することで、より確実に温度を下げてモジュールを故障からキッチリを守れるようにした。

 Acrich3では、そのほかにもモジュールの安定性や信頼性の向上つながる工夫を新たに投入している。電圧が0.5Vを下回った時に完全に電源を切り、不安定な点滅が起きないようにする「Under-voltage Lockout(UVLO)機能」も搭載され、オープン/ショートからICの内部回路を守る保護機能も可能となっている。

電力を有効利用できる高品質な電源

 Acrichシリーズでは、高いVFのLEDチップを利用することを前提にして、外部のAC/DCコンバータを不要にし、モジュールの小型化に成功した。その効果は、LEDを駆動する電源の高品質化というメリットも生み出している。Acrichシリーズの登場以前の回路では、力率が0.4〜0.6、力率改善回路を外部接続しても約0.9が限界だった。Acrichシリーズの斬新なコンセプトの構成で、これを0.97にまで引き上げた。また歪みに関しても、それまでの回路では30%以上、外部回路を接続しても15〜25%が精一杯だったものを、15%以下に低減。寿命も1万5000時間以下だったものを、寿命を短くしていた原因だったAC/DC変換用の電解コンデンサを不要にすることで5万時間以上に延ばした。当然、Acrich3でも、これらのメリットはすべて継承している。

日本市場でも増えるAcrich3の採用

 Acrichのメリットが日本市場でも徐々に認識されるようになってきており、2015年1月に発表されたDNライティングの薄型で小型のダウンライトはその先駆けとなった。Acrichモジュールが採用されたダウンライトは、「Aldila (アルディラ)シリーズEX9型」(図3)で、100Vの商用電源直結型で、別置電源装備が不要であるため、施工が非常に簡単になる点が特長となっている。また、部品点数が少ないAcrichを採用したことにより、軽量・薄型設計となっており、重量0.1kg、埋込穴がφ60、暑さ20.5mmのコンパクトタイプを実現しており、薄い棚板への取り付けに最適となっている。

 このような採用事例は日本市場でも続いており、2015年はAcrichが日本市場で本格的に普及する最初の年となった。2016年はさらに多くの採用事例が生まれると日本法人のジャパンソウル半導体では期待している。

図3 Acrichモジュールが採用されたダウンライト

PSEの規定をクリアするフリッカー対策を用意

 Acrich3の優れた特性を日本市場でも活用できるようにするため、Seoul Semiconductorでは、万全のフリッカー対策を施すためのソリューションを用意している。

 日本市場での投入の条件になる電気用品安全法(PSE)のフリッカー規制を遵守するためには、LED照明の光出力の最小値を、常に最大値の5%以上になるようにしなければならない。

 この問題を解決するため、Seoul Semiconductorは、最小限の部品の付加で効果的なフリッカー対策ができる回路を模索し、ソリューションとして用意した(図4)。これによって、PSEの規定をクリアするとともに、世界9カ国・地域で実施されているオフィス機器の国際的省エネルギー制度であるEnergy Star Programの規定、フリッカーインデックス0.12以下もクリアする。

図4 フリッカー対策のソリューション例
(上)回路構成、(下)動作時の駆動電流の波形
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、用意するソリューションは電界コンデンサを使用し、その個数と容量によってフリッカーを抑制できるレベルは様々である。PSEをクリアすることだけを目指したバージョンでは、最低限のフリッカー対策となり、光出力の変動は残る。このため、主照明向けと言うより、ダウンライトなど小型の照明や屋外製品に向くAcrich3の特性が生きる応用を想定しる。さらにフリッカーを抑制したバージョンでは、容量の大きな電解コンデンサを複数個使うことになる。電解コンデンサを使うことで、寿命が短くなることが心配されるが、105℃、2万時間といった製品も販売されており、このようなものを使えば、モジュールの寿命は10万時間ぐらいまで延びそうだ。

Acrich MJTのラインナップも強化

 Acrichシリーズは、高VFのLEDの利用を前提としたモジュールである。Seoul Semiconductorは、高VF製品を含むLEDチップ製品「Acrich MJT」のラインアップを大幅に増強させた(図5)。Acrich2の世代に選択できるパッケージサイズは、3528、4040、5630、6540だった。現在では、2525、3030、3528、4040、5050、5630の中から選択できる。

図5 Seoul SemiconductorのLEDパッケージ製品「Acrich MJT」のラインアップ
2015年12月1日現在
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 このうち、3030、5050、5630などのパッケージは、通常タイプの(高VFではない)LEDとして馴染み深いパッケージサイズである。中でも3030は、小型化に適したAcrichの特長を最大限に活かせる製品である。また、高VFのLEDは、特に高出力の屋外照明用としての需要が高い。5050は、こうしたニーズに応えるために開発された製品である。高出力照明は、電源が大きく、重量がとても重くなるため、外付けの電源回路が不要なAcrichの長所が生きる用途でもある。

 Seoul Semiconductorの日本法人であるジャパンソウル半導体では、日本市場でのサポート体制も強化。フィールドアプリケーションエンジニアの数を増やし、サポート拠点となるラボも設置する。ここでは、アプリケーションの開拓の支援もしていくという。日本市場でも活躍の場が増えてきそうなAcrich3。その潜在能力を生かせば、より使い勝手がよく、価値の高い照明を生み出すことができるだろう。

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