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日経テクノロジーonline SPECIAL

【リニア2011】第1回:LTC6802 バッテリ・モニタ

亀元政秀氏
リニアテクノロジー
中部地区
統括セールスマネージャ

高性能アナログICを得意とする半導体メーカーとして知られるリニアテクノロジー。同社が,最近発売した製品の中で市場の反響がもっとも大きかった製品の一つがLiイオン2次電池用の「マルチセル・バッテリ・スタック・モニタ『LTC6802』」である。2008年末の発表以来,自動車および車載用電装機器メーカーを中心に問い合わせが相次いでいる。セル電圧監視回路に必要な高精度かつ高性能のデバイスを1チップに集積した同ICは,Liイオン2次電池を使ったシステムの合理化と性能向上に貢献する。

 LTC6802は,直列に接続された多数のLiイオン2次電池の端子電圧をセルごとに監視する回路に向けたICである(図1)。高精度の基準電圧源とA-D変換器,マルチプレクサ回路などが集積されており,一つのICで最大12個のセル電圧とセルの温度を測定し,そのデータをシリアル・バスで接続されたホスト・コントローラに送信する。

 1セルの測定に要する時間は,約1msecと短い。12個のセルの測定も約13msecで終えることができる。例えば,同ICを16個連結した場合,最大で192個のセル電圧を測定できる回路を構成ことが可能だ。各入力チャネルには,セル放電用のMOSFETが内蔵されており,ホスト・コントローラによる制御によって,SOC(充電率:State of Charge)の均等化を行う為にセルを個別に放電させることができるようにもなっている。

図1 LTC6802の回路ブロック図
[画像のクリックで拡大表示]

 「バッテリ・モニタは,多数のセルをスタックした大容量のLiイオン2次電池のパフォーマンスを最大限に引き出すために不可欠な回路です。2次電 池に蓄積できるエネルギー容量や寿命は,SOCを厳密に管理する事によって大きく左右されるため,各セルの電圧を精度良く検知する事が欠かせません。このための合理的かつ高精度の回路を構成 するために役立つのがLTC6802です」(同社中部地区統括セールスマネージャ亀元政秀氏)。

 すでに,このICは,市販車両に搭載されており,製品発表以来,さまざまな自動車メーカーや車載用電装機器メーカーから数多くの問い合わせを受けているという。「開発を担当する米国本社の事業部トップが,自ら2次電池制御に関連する車載メーカー等のお客様を訪問し,市場のニーズを把握したうえで企画した製品です。スタック型のLiイオン2次電池を使う多くのお客様から高く評価していただけるものと確信していまし た。特に自動車向けに積極的に展開しており,この分野に向けたバッテリ・モニタ用ICの市場で75%以上のシェアを獲得することを目指しています」(亀元氏)。  

 このICが役立つのはハイブリッド車や電気自動車などの次世代自動車だけではない。産業用設備で使われている大容量2次電池,電車などの交通シス テムで利用されているエネルギー回生システム,最近にわかに脚光を浴びているスマート・グリッドを実現するために欠かせないコジェネレーション・システム など,様々な用途でスタック型の大容量Liイオン2次電池が使われることから,LTC6802に対するニーズがさらに高まる見込みだ。

システムの信頼性向上にも貢献

住谷善隆氏
リニアテクノロジー
名古屋支社
フィールドアプリケーションエンジニア

 すでに多くの引き合いを受けているLTC6802が注目を集めているポイントは大きく二つある。一つは,A-D変換器や基準電圧源,マルチプレ クサなどバッテリ・モニタ回路を構成するデバイスを1チップに集積したことだ。「同様の特徴をうたった製品は市場に出ているようですが,実際の市販製品に搭載 されているのはLTC6802が最初ではないでしょうか」(亀元氏)。

 1チップ化がシステムにもたらす利点は大きい。例えば,監視回路の合理化を一気に進め,2次電池周辺の部品点数を大幅に削減できる。セル電圧の監 視回路を個別に販売されている基準電圧源やA-D変換器ICを使って構成することは可能だ。だが,ハイブリッド車や電気自動車に搭載するような大容量の LIイオン2次電池では数十個~200個ものセルを連結している。それぞれのセルごとに個別の部品を使って監視回路を設けていると,その部品の数は膨大な ものになってしまう。しかも,部品点数が増えれば,それだけ故障が発生する可能性も高まる。つまり,高集積化を図ることで,回路の合理化だけでなく,2次 電池の周辺回路の信頼性の向上も図れるわけだ。「多数の個別部品を組み合わせた場合,各部品の特性のバラつきや温度依存性を調整するための工夫や作業が必要になります。1チッ プ化しておけばこうした手間も省けるという利点もあります」(同社名古屋支社フィールドアプリケーションエンジニアの住谷善隆氏)。

広い温度範囲で高精度を維持

図2 広い温度範囲で安定した特性を発揮

 LTC6802が注目を集めているポイントのもう一つは,-45℃~+85℃と広い温度範囲で合計誤差0.25%と高い精度を備えていることだ(図2)。この特長は,スタック型Liイオン2次電池の性能向上に貢献する。

 2次電池の場合,フルに充電した状態でさらに充電したり,完全に放電した状態で引き続き放電させたりすると寿命が急激に短くなる。このため2次電 池の規定容量の0%~100%までフルに使うのではなく,中間の範囲で使うのが一般的だ。この決められた範囲で充放電を繰り返すように制御するのがバッテ リ・モニタ回路の役割だ。ところが定められた充放電の範囲を確実に逸脱しないようにするには,バッテリ・モニタ回路の測定誤差の分だけ余裕を残しておかなければならない。そうなると,測定誤差が大きいほど実際に充電できる容量が小さくなってしまう。「バッテリ・モニタ回路の測定精度を高めるほど,電池の規 定容量を有効に利用できるようになるわけです」(住谷氏)。

 同社が高い精度を実現することができたのは,従来から,基準電圧源,A-D変換器やマルチプレクサなどバッテリ・モニタ回路を構成する主要デバイスを手掛けており,それぞれについて豊富なノウハウを蓄積しているからだ。こうしたノウハウの粋を集めたのが,LTC6802というわけだ。例えば,バッテリ・モニタの精度にとって最も重要な基準電圧源については,高い初期精度だけでは不十分だ。基板実装後の精度の変動幅を最小にし,10年を超える長期にわたり電圧変動を安定させる必要がある。同社は,これを実現した高精度,高信頼性の基準電圧源の開発,製造に長年のノウハウを持つ。300種類以上の基準電圧源製品を車載機器や産業用計装機器などに供給している。

 こうした技術が,LTC6802にも惜しみなく注ぎ込まれている。「従来個別に提供していたデバイスを1チップにしただけの製品ならば,ほかにもあるかもしれません。 ただし,そのうえで本当の意味での信頼性のある高精度を実現できるメーカーは必ずしも多くはないと思います」(亀元氏)。

 このほか高精度化を図るために,A-D変換器にも様々な工夫を凝らしている。比較的,ノイズ対策が施しやすいΔΣ型A-D変換器を採用。さらに, その入力の前段には入力信号に重畳されているノイズを除去するためのフィルタ回路もA-D変換器の周波数特性に合わせて設けた。

ユーザーの設計に応じて選べる接続方式

図3 LTC6802-1を使った回路構成
[画像のクリックで拡大表示]

 LTC6802の特徴で,もう一つ見逃せないのが複数のICを連結して使う場合の接続方式が選べることだ。「多数連結した2次電池セルの端子電圧を複数のバッテリ・モニタ用ICで測定する場合,それぞれのICからホスト・コントローラにデータを送信するための通信システムが必要です。この場合ICごとに動作電位が異なるので,通信システムの設計に工夫が必要です。そこで,お客様のシステムに最適なかたちでICとホスト・コントローラ間の回路が設計できるように,異なる通信システムが構成できるLTC6802-1とLTC6802-2と2種類の品種を用意しました」(住谷氏)

図4 LTC6802-2を使った回路構成
[画像のクリックで拡大表示]

 LTC6802-1は,シリアル・インタフェースを介してIC同士をデイジー・チェーン形式で接続できるように設計されている。「この場合,ホス ト・コントローラとデイジー・チェーンで連結されたバッテリ・モニタICで最も動作電位が低いICを,1本のシリアル・インタフェースで接続するだけで済みます」(住谷氏)(図3

 LTC6802-2は,一つのホスト・コントローラにシリアル・インタフェースを介して複数のICを接続して使うように設計されている(図4)。 ホスト・コントローラで各ICに割り振られたアドレスを指定することによって,個々のICと通信できる。全てのICと一斉に通信することも可能だ。ただ し,この場合,各ICの動作電位が異なるので,ホスト・コントローラとの間にデジタル・アイソレータを設ける必要がある。

用途拡大に向けて設計支援を重視

図5 素早く検討に取りかかれるように評価キットを用意
[画像のクリックで拡大表示]

 次世代自動車だけでなく,エネルギー関連など様々な分野にスタック型の大容量Liイオン2次電池の用途が広がりつつある。これとともに LTC6802の応用分野も一段と広がる機運が高まってきた。このため,同社では設計者を支援するための取り組みにも力を入れている。その一つが評価ボー ドである(図5)。LTC6802や周辺回路を搭載したボードと,USBインタフェースを備えたコントローラ・ボード で構成されており,二つのボードを専用ケーブル接続し,さらにUSBケーブルでコントローラ・ボードをパソコンに接続するだけで,検討用のバッテリ・モニ タ・システムが構成できる。「評価ボードの制御やモニタのためのソフトウエアは,リニアテクノロジーのホームページからダウンロードできます。これらを利用することで,効率よくバッテリ・モニタ・システムの評価および設計を進めることができるでしょう」(亀元氏)。

 リニアテクノロジーでは,LTC6802を基に合理的かつ高性能なバッテリ・モニタ・システムを実現できるバッテリ・モニタ用ICの製品展開を進 める考えだ。「例えば,バッテリの充電率を少しでも長く維持出来るようにIC自体の低電力化を進めるなど,引き続き性能の改善を図ります。この一 方でLiイオン以外の2次電池に向けた製品の開発も進める方針です」(亀元氏)。

 ※ 会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。

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