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日経テクノロジーonline SPECIAL

【リニア2011】第2回:μModule

畠山竜声氏
リニアテクノロジー
東日本地区
統括セールスマネージャ

リニアテクノロジーが,新機軸のソリューションとして展開している「μModule」に対する設計者の関心が着々と高まっている。アナログ回路のエキスパートが綿密に設計した回路を,一つの部品のようにしてシステムに組み込めるからだ。同モジュールを利用することによって,アナログ回路のノウハウが必要とされる電源回路設計の「壁」も一気に引き下げることができる。そのうえ設計の効率化や電源回路の小型化にも貢献する。

 μModuleは,リニアテクノロジーが開発した高性能アナログICと周辺回路を,実装面積が約15mm(縦)×15mm(横)×2.2mm~2.8mm(高さ)と小型のLGA (Land Grid Array)パッケージに収めたモジュールである(図1)。同社は,2005年からμModuleの製品化を開始。その後,電源用を中心に着々と品種の拡充を図っている。「従来,リニアテクノロジーは高性能アナログICを核にしたソリューションを設計者の皆さんに提供してきました。つまり,設計者のニーズに応じた高性能アナログICを開発すると同時に,周辺回路を含めた設計サポートを提供することで,お客様の問題を解決してきました。このソリューションをさらに進めて,周辺回路も網羅する形で一括したソリューションを提供するというのがμModuleのコンセプトです」(リニアテクノロジー東日本地区 統括セールスマネージャの畠山竜声氏)(図2)。

図1 高性能アナログICを核にした新しいソリューション「μModule」
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 μModuleが設計者にもたらす大きな利点は,同社が抱えるアナログ回路設計の専門家,しかもICの特性を知り尽くしている技術者が要求仕様に応じて最適化した回路を,あたかも一つの部品としてシステムに組み込めることだ。「主要な部品が内部に実装されているので,外付け部品は,わずかで済みます。このため追加する外付け部品のコストを抑えることができます。実装面積や実装コストの削減にも貢献することができるはずです」(畠山氏)(図3)。

 もう一つμModuleの特長で見逃せないのは,同社がモジュールに対してもICと同じ姿勢で品質管理に取り組んでいることだ。「これまで提供してきた高性能アナログICと同様に,すべて社内で一貫して生産しています。ICについては,車載用への展開を前提にした厳しい基準を設けて,FIT (Failure In Time)が0.1程度と高い信頼性を維持してきました。モジュールについても同様の品質管理を実施しており,FIT値1.7を実現しています」(畠山氏)。

図2 ICと最適化された周辺回路を小型パッケージ「LGA」に集約
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 μModuleのユーザーは,着々と増えており,製品を発売してからμModuleの売り上げは年率150%と急速に伸びている。「この勢いは,2年~3年は続くと見ています。これまでは,電源用がほとんどでしたが,最近では信号系やインタフェース向けのμModuleも提供しています。さらに応用分野を拡げることで,より多くのお客様を獲得する考えです」(畠山氏)。

 FPGA(field programmable logic array)の大手である米Altera社や米Xilinx社は,いち早く電源用μModuleをそれぞれのレファレンス・デザインに採用しており,両社が提供している様々デバイスに適したμModuleの一覧表もリニアテクノロジーのホームページに用意されている。

LSIの進化とともにニーズが浮上

図3 ディスクリート構成に比べて実装面積を約50%削減(LTM4600)
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 同社が,μModuleの開発に乗り出すキッカケとなったのは,電源回路設計の負荷軽減を求める声が設計者の間で高まってきたことだったという。「電源用ICを提供しているお客様から,周辺回路も含めた形でソリューションを提供して欲しいと要望が出てきました。こうした声にお応えしμModuleの開発に着手したわけです。回路が簡単で外付け部品が少ないリニア・レギュレータと同程度の手間で,DC-DCコンバータなど高効率の電源回路が設計できるようにすることが一つの目標でした」(畠山氏)。

 こうした要求が設計者の間で浮上してきた背景には,LSIの進化とともに電源の設計が難しくなってきたことがある。例えば,最近のFPGAやASICでは,0.9V,1.0V,1.2V,1.5V,1.8V,2.5V,3.3Vなど,様々な種類の電源を必要とする製品が増えている。しかも,低電圧化が進む一方で,LSIの高速化が進んでいることから,より大きな電流を供給する必要も出てきた。これにともなって電源を構成する部品が熱ストレスにさらされる可能性が増えている。併せて電源の精度に対する要求も厳しくなっていることから,電源に関連するノイズ対策も強化する必要もある。しかも,LSIの動作が複雑化したことで電源の負荷が変化しやすくなっている。このため負荷の変動に対して高速で応答できるようにもしなければならない。多機能化と小型薄型を同時に追求するモバイル機器が増えていることから,小型で高出力の電源に対するニーズも高まっている。

 このように電源の設計が難しくなると同時に,電源の設計にかかわる技術者が多様化していることも,μModuleに対するニーズの高まりに拍車をかけている。「最近は,大きな電力を消費するデジタルLSIごとに電源回路を設けるPOL(Point of Load)を採用するシステムが増えています。このためアナログ回路の設計に慣れていないデジタル回路の設計者の方が,電源回路の設計を担当するケースが増えてきたと耳にしています」(畠山氏)。こうした場合,電源の設計を検討する時間に余裕がないことなどから,既存の電源回路をそのまま流用したり,他の技術者が設計した回路をそのまま使ったりしていることが少なくないようだ。そうすると,必要以上に性能に余裕があるなど,十分に最適化されていない電源が使われることになりかねない。

電源設計者が直面する課題を一気に解決

 同社が提供している電源用μModuleは,こうした問題を一気に解決する可能性を秘めている。設計者は,豊富な製品ラインアップの中から必要な電源の仕様にあった品種を選択するだけで,高いパフォーマンスを備えた電源が用意できる。周辺回路の設計にかかる手間も最小限で済む。

図4 主要部品をすべてモジュール内に実装
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 例えば,降圧高電流タイプのDC/DC μModule 「LTM4600」は,DC/DCコントローラIC,MOS FET(2個),インダクタ,バイパス・コンデンサ,ループ補償回路,シグナル・インテグリティ向上のためのフィルタ回路などが,一つのパッケージに収められている(図4)。外付けする回路は,入力と出力のそれぞれに接続するコンデンサと,出力電圧を設定するための抵抗1本だけで済む。「コイルに流れる電流を1スイッチ・サイクルごとにモニタする制御方式を採用することによって,負荷変動に対する応答の高速化を図っています。1Aから12Aまで出力電流が変化することを前提にしたときでも,既存の回路に比べて外付けコンデンサの容量を約半分にできるはずです」(畠山氏)。

図5 四つのDC/DC変換器モジュールを使って4出力の電源を構成
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 パッケージが薄型なので,基板の表だけでなく裏面にも実装可能だ。「電源回路を薄型化することで空間を確保できるので,放熱性を高めるうえでも有利です」(畠山氏)。しかも,LTM4600の最大出力電流は12Aだが,最大四つまでつなげて連動させることができるように設計されている(図5)。これによって最大48Aもの電流を出力できる回路を構成することも可能だ。このほか電源の立ち上げシーケンスを制御するできる機能や,出力電圧を一定範囲で振るマーシニング機能も盛り込まれている。

豊富な品種を用意して幅広いニーズに対応

図6 シミュレーション・モデルも提供
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 LM4600は,同社が提供している数多くの電源用μModuleの一つに過ぎない。同社は,すでに豊富な数の電源用μModuleを揃えて,様々な要求に迅速に対応できるようにしている。「製品ライナップは着々と拡充していますが,電源用についてはかなりのお客様の要求に対応できるだけでの品種がすでに揃っています」(畠山氏)。具体的には,降圧高電流タイプのほか,「LTM8020/21」などの降圧高耐圧タイプ,「LTM4606/12」などの降圧超低ノイズ・タイプ,「LTM4604/08」などの降圧低電圧タイプ,「LTM4614/16」などの降圧多出力タイプ,「LTM4605/07」などの昇降圧タイプ,航空宇宙向けの高信頼降圧タイプ,LEDドライバ「LTM8040」などを揃えている。同社は,デバイスの品種を揃えるだけでなく,μModuleを搭載した評価用ボードや各モジュールのシミュレーション・モデルを用意するなどして,同モジュールを採用するユーザーを支援する体制も整えている(図6)。

 引き続きリニアテクノロジーでは,携帯電話の基地局や,電源回路の高性能化と小型化の要求が強いICテスタなど産業機器分野を中心に積極的にμModuleの市場を開拓する考えだ。「幅広い用途に適用できる製品を揃えています。電源の設計で困っているお客様は,分野にかかわらず相談していただきたいと思っています」(畠山氏)。

 リニアテクノロジーが抱えるアナログ回路のノウハウを手軽に活用しながら,製品の最適化を進めることができるμModuleは,設計の合理化や開発効率向上に取り組む設計者にとって強力なソリューションといえよう。しかも,これまで電源用を中心に製品展開が進んでいたμModuleは,ここにきて携帯電話などの基地局に向けた信号処理用や,RS-485規格のインタフェース回路などに向けた絶縁インタフェース用など新しい用途に向けた製品が続々と登場している。今後のμModuleの製品展開は,大いに注目すべきだろう。

 ※ 会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。

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