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あらゆる分野のビジネスに巨大なインパクトを与えると目されるIoTが、いよいよ社会実装されるフェーズに入った。IT専門調査会社のESGの調査によると、IoTソリューションを既に導入している、もしくは導入を予定している企業は全体の60% 以上及ぶという。

製造業分野も例外ではない。工場内はもとより、開発現場や流通、販売、メンテナンスの拠点、さらには製品そのものからもデータをリアルタイムで取得し、業務の効率化、顧客サービスの品質向上、革新的な新製品・サービスやこれまでにないビジネスモデルの創出に活用しようとしている。

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IoTシステムでは、現場で取得したデータをデータセンターやクラウド上に集め、そこでインサイトを得て、価値あるサービスの提供や事業活動に活用する(図1)。ただし、こうした単純な構図のシステムをそのまま構築すると、使えない、使いにくい、役に立たないものになってしまう。

HPEが考えるIoT

地球上で生成されるデジタルデータは増え続けている。IoT分野においても、現状アナログデータのまま残されている情報も余すこと無く活用しようとしており、一層増える可能性がある。こうした莫大なデータのすべてを、インターネット経由でやり取りし、サーバーに蓄えるわけにはいかない。現場で、データを効果的に選りすぐる処理が必須になる。

また、収集した現場でデータに処理や分析を施し、迅速にフィードバックを掛けたいというニーズも極めて高い。特に、製造業において、その傾向が顕著だ。

岡田和美氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社
IoT推進室 室長

製造業では、製造装置や加工機械、検査装置、ロボットなどをネットワークで結び、生産状況をリアルタイムでモニタリングして、生産条件の調整などに素早くフィードバックする高度な運用テクノロジー(OT)を発達させてきた。IoTシステムでは、そこに高度な情報処理や分析を施す情報テクノロジー(IT)を導入して、新しい価値を加えようとしている。遠隔地に置いたデータセンターやクラウドに処理や分析のすべてを託して、OTの必要条件であるリアルタイム性を損なうことはできない。

さらに現場で、思いのほか負荷が大きい処理を行いたいとするニーズもある。例えば、同じ製品を3つのラインに分けて生産する場合を想定しよう。同じ仕様の製造装置で生産しても、装置の癖や稼働状況に起因して、出来上がる製品には微妙な個体差が生じる。この違いはオペレーターの経験で調整して、埋めていた。こうした属人的な技能には常に継承の問題がつきまとうため、システム化して品質が安定した製品を生産したい。その実現には、装置のデータを基に、現場で高度な判断を下す性能を持ったシステムが欠かせない。

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工場などの現場で、OTとITが交わるところ(エッジ)で、高度な処理や分析、判断を下すことを「エッジコンピューティング」と呼ぶ。製造業では、どれだけ効果的で効率的なエッジコンピューティングができるかが、IoTシステム全体の価値に直結する。

ところが、実際に工場などでエッジコンピューティングを実践するシステムを構築しようとしても、難問山積の状態だった。まず、そもそもデータの収集を管理し、現場で活用できるエッジコンピューティングに向いたゲートウエイやサーバーが、これまでほとんど存在しなかった。また、IoTシステムの構築に欠かせない技術を不足なく集め、既存のOT向けシステムと整合性を取りながらITと融合させることができるプラットフォームがなかった。

こうした時代の要請に応えるため、HPEが提案するのが「HPE Edgeline Converged IoT Systems(以下、Edgeline)」である(図2)。

HPEが提供するIoTソリューションポートフォリオと
HPE Edgeline Converged IoT Systemsの位置付け

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Edgelineは、エッジコンピューティング向けのIoTソリューションとして、エッジで求められる機能と性能を盛り込んだ全く新しいカテゴリーの製品である。IoTデバイスから大量のデータを収集し、エッジで分析を行いリアルタイムでの意思決定するために必要な機能を1台に集約しており、工場のような過酷な環境にも置ける耐久性も備えている。さらに「Microsoft Azure IoT Suite」との互換性も認証されており、さまざまな用途、シーンでの活用が可能である。2つのカテゴリー、4つの製品を用意している。

ひとつ目のカテゴリーは、データ収集を担う設置場所を選ばないコンパクトなIoTゲートウエイである。エントリーレベルの配備を想定して設計された「HPE Edgeline EL10 Intelligent Gateway」と、処理性能とデータの蓄積容量を強化した「HPE Edgeline EL20 Intelligent Gateway 」の2製品がある。データ収集を管理するとともに、この中で比較的簡単な処理や分析を施し、クラウドに送るデータを選定したり、変換や加工ができる。数多くのIoTデバイスをつなぐ、Wi-Fiや3Gなど無線。OTと密接に連携するための豊富なI/Oオプションを用意している。

もうひとつのカテゴリーは、より高度な機能と処理能力を提供するIoT向けコンバージドシステムである。データのキャプチャ、強力なコンピューティング、データセンタークラスのセキュリティ、システム管理の機能に、大容量ストレージを統合することで、負荷のかかる分析をエッジで実現し、リアルタイムな意思決定を可能にする。最大16までCPUコアを搭載可能な「HPE Edgeline EL1000 Converged IoT System」と、最大64コアまで搭載可能な「HPE Edgeline EL4000 Converged IoT System」の2製品がある。両製品ともHPEが2013年に販売開始した消費電力や設置面積を効果的に抑制するカートリッジ型サーバー「HPE Moonshot System」のアーキテクチャーを採用しており、利用シーンの変化に応じて柔軟に性能向上できる。また、PXIバスを搭載して、National Instruments社の計測制御のカードを差し込んで利用することも可能だ。

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HPEは、OTとITを融合させて効果的なエッジコンピューティングを実現するため、ITとOTに関する高い専門性を生かしてシステム構築を支援する。HPEは、バリバリのIT企業であると考える人が多いかもしれない。確かに、現在ITに軸足を置いていることは確かだが、測定器メーカーとして創業し、かつては半導体製造もしていたことがある。こうした歴史の中で、OTに関する知見を着実に蓄積し、豊富に保有している。このため、顧客企業が保有する既存OTの特長を損なうこと無く、ITを的確に融合させることができる。

例えば、工場のFAシステムに使われている産業用ネットワークには、生産システムが安定かつ安全に稼働するための数々の工夫が作り混まれている。そこでやり取りしているデータに、IoT関連のデータを単純に混在させると、安定性や安全性が損なわれる可能性がある。HPEは、無線通信を駆使した、既存のファクトリーオートメーション・システムと共存できるIoTシステムを提案。同時にライン上の装置の入れ替えなどにも柔軟かつ簡単に対応できるメリットも生み出す。

加えて、多数のIoTデバイスを柔軟につないで安全に運用できる、使い勝手に優れた技術も保有している。HPE傘下の企業であるAruba社が提供する、高速で信頼性の高いアクセス管理システム「Aruba ClearPass」では、IoTシステムに向けた強化機能が活用できる。そこに多様で多数のIoTデバイスをサイバー攻撃から守るセキュリティ技術が盛り込まれている。新しいIoTデバイスの追加を速やかに自動検出し、プロファイルを作成、強力なセキュリティ機能で保護する。ClearPassは、IoTデバイスのベンダーを問わず既存のネットワークインフラと連携できるため、システム拡張を柔軟にできる。

また、PXIバスを搭載して、National Instruments社やオープン規格のPXI仕様を満たす計測制御のカードを差し込んで利用することも可能だ。(※)

※この記述は、本製品がPXI仕様に準拠した設計となっている事実のみを示すものであり、PXI仕様に準拠したすべての装置の動作を保証するものではありません。Hewlett Packard Enterpriseおよび日本ヒューレット・パッカード株式会社は、実際の採用検討にあたり事前の動作検証を強くお勧めしています。

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利用目的とシーンに合ったIoTシステムを構築するためには、Edgeline以外にも、多様な要素技術が必要になる。HPEではIoTサービスを提供するための統合プラットフォームとして、デバイスとネットワークの接続と管理、データの収集と活用、アプリケーションの開発と展開などの機能をワンストップで提供する「HPE Universal IoT Platform」を提供している。加えてHPEが重視しているのは、各分野の優れたパートナーとの協業を確立し、より価値あるIoTシステムを構築し、運用するためのエコシステムを確立することだ。(図3)。

EdgelineのIoTソフトウエアエコシステム

まず、強力なOTプラットフォームを提供するGE Digital社、使い勝手に優れた柔軟な計測システムを提供するNational Instruments社、IoTアプリケーション開発のプラットフォームを提供するPTC社といった、それぞれの業界のIoTリーダーと提携。さらに、産業向けソリューションプロバイダー、ISV、SIer、およびIoTテクノロジープロバイダーなどと広く協力し、IoTシステムの迅速な立ち上げと運用を支援する。

また、日本ヒューレット・パッカードは、東京本社内に実機を使った検証を可能にする「IoTコンピテンスセンター」を開設した。Edgelineを使った各種IoTデバイスの接続や管理、取得したデータの処理や分析、各種ISVソフトウェアとの連携までテストし、システム構築と運用に向けた専門的な支援を行う。HPEのパートナー企業とユーザーは、この場で連携しながら、評価とシステム開発を進めることができる。

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HPEが携わったIoTシステムは、既にさまざまなところに社会実装されて、大きな成果を挙げている。

例えば、ポンプメーカーであるFlowserve社とNI社、PTC社と共同で、産業プラントでの流体の変化を検知し、これを機械学習することで、ポンプで発生する異常を事前に予見できるシステムを実現している。ポンプの異常によるプラントの停止や損失によって、米国だけで毎年2兆円の損失があると言われている。開発したシステムでは、こうした損失を劇的に削減できる。

また、アフリカの南端からノルウェーの岬までを走破するレース「Cape to Cape」というレースで、クルマにセンサーを搭載して、取得した走行中のクルマやドライバーの挙動データをクラウドに蓄積し、レースや別のビジネスに活かすシステムを構築した。ブレーキングの癖や路面の状況などによって、クルマはどのように動くのかを解析し、事故を起こしやすいドライバーのタイプが分かってくる。ここで得た知見を、保険業者の保険設計やレンタカー事業に生かすこともできる。

その他にも、社会インフラ、電力網、エンタテインメントなど広範な分野で豊富な実績を積んでいる。

これまで、企業におけるITシステムの構築は、IT部門が主導する場合が多かった。これがIoTシステムの開発では、研究所や工場など事業担当者の主導で進められるようになった。HPEは、こうしたIoTシステムを直接利用するユーザーと目線を合わせ、求められるIoTシステムを対話しながら開発していく。世界に誇る日本のものづくりを、さらに強くしていくため、HPEは日本の製造業でのIoTの活用を支えていく。

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Cape 2 Cape

スマート工場(フローサーブ事例)

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IAV社事例 自動車業界における
デジタル・トランスフォーメーションとIoTの活用