• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

設計プロセス革新の処方箋セミナーレビュー

基調講演

設計の高度化と適切な
固定費管理が収益力をアップ

株式会社プリベクト
代表取締役
北山 一真

 技術力はあるのに、なぜもうからないのか──。基調講演のスピーカー、プリベクトの北山一真氏は「製造業のビジネスは固定費回収モデル」であるとの見方をもとに、固定費マネジメントと設計高度化が収益力向上のカギになると述べた。それが「プロフィタブル・デザイン(利益獲得設計)」である。

 固定費管理が重要であるのは、変動費に比べてリスクは大きいが収益力も大きいからである。「変動費はもうかりません」と北山氏。製品販売で回収した金額のほとんどが外部への支払いに回るためだ。一方、製造設備などの固定費については、増やさないことが管理のポイント。「設計者が形状変更する際に、設備改修や作業工数が増えないかを意識できなければなりません」と北山氏は指摘する。

 収益は売価と原価の差でもある。原価の大きな部分を占める固定費の増加を抑えることだけでなく、顧客の要求仕様をよりよく満たして売価を高めることによっても収益力は向上するわけだ。

 ただ、多様な顧客ニーズに応え続けるためにも「バラバラで属人的な設計」(北山氏)になっても収益は低下する。要求仕様の管理と設計ナレッジの可視化が今の設計には問われているのである。

要求仕様管理と設計ナレッジ可視化が設計変革を成功に導く

 北山氏は、ダッソー・システムズのテクニカル・セールス・ディレクターである矢田智巳氏とトークセッションを行い、その両立のポイントを分かりやすく説明していった。

 「PDF文書やExcelシートをファイルサーバーで共有しているだけでは顧客ニーズを知ることにはなりません」と北山氏。矢田氏は「整理・構造化したニーズをデータベースとして管理できるITツールはすでにありますので、それを利用するとよいでしょう」と応じた。

 ポイントは、要求仕様の新規性(差異)を的確に把握することにある。北山氏は「多くの場合、要求項目は類似が多く、要求値だけが変わっているものです」と述べて、「新規項目」「過去のMin-Maxを超える要求値」を要求仕様として把握して、リスク評価するように勧めた。

 また、設計プロセスについては、ナレッジの可視化と伝承が課題となっている。具体的には、「分業による“個人商店化”」(北山氏)となった設計組織をどう運営し、「伝説的設計者の高齢化と若手設計者の減少」(矢田氏)にどう立ち向かうかだ。「魔法の杖はありませんが、まずは流用設計をやめることから始めるべきでしょう」と北山氏は言う。それによって真の設計プロセス変革ができると強調した。

特別講演

文書の構造化・電子化により
医療機器開発プロセスを変革

オリンパス株式会社
技術開発部門 医療開発企画本部
医療開発エンジニアリング部
開発プロセス改革担当部長
辻 潔

 ものづくりでは、あらゆる作業にドキュメントがひも付けられている。従って、プロセス変革に当たっては、作業に関わるドキュメントの扱いについても改善が求められることが多い。

 オリンパスの辻潔氏は、まず、「内視鏡のような医療機器を製造・販売するには、法規制に対応する必要があります」と紹介。そのためのドキュメントには、原本としての非改ざん性の証明、トレーサビリティー、原本の長期保存などが求められていると説明した。

 しかし、開発に関わるドキュメントは部門や工程ごとに作られることが多く、情報の連続性を保つのは難しかったという。「その結果、重複作業による無駄、手戻り、変更結果の確認漏れの懸念がありました」と辻氏は語る。そこで、オリンパスは「ファイル単位でのドキュメントそのものではなく、後続工程で再利用できる要素モジュールの単位で情報を授受できる」(辻氏)方式への転換を決断。構造化文書プロジェクト「PRISM」をスタートさせることにした。

文書・データ・図面を構造化して法対応とプロセス改革に役立てる

 PRISMの対象となったのは、開発~製造への主要ドキュメント、製品諸元データ、CAD図面のそれぞれである。要素モジュールへの分解(ドキュメントなどの構造化)には、電子書籍やオブジェクトデータベースの世界で使われている技術が使われた。

 このうち、法規制対応ドキュメントのための基盤は市販の要件管理ツールを使って構築。WordドキュメントやExcelシートとして作られていたドキュメントが木構造(階層型)の電子ドキュメントに進化したことにより、頻繁に発生する様式変更にも素早く対応できるようになったという。「ただし、一気に変えると現場に与えるインパクトが大きいので、段階的に移行できるようにするための担保として、現行のWord書式のドキュメントを作成するための機能も設けました」(辻氏)。

 また、製品諸元データ用のプラットフォームにも市販のアプリケーションツールを採用。CAD図面の階層化には「CADツール側で機能を構築していただきました」(辻氏)。同時に構築された関連システムとしては、ドキュメント間の依存関係を可視化するためのシステムと法規制対応ドキュメントについて電子承認/電子原本化管理するためのシステムなどがある。

 「改革では、常に全体最適を考えつつ、長期間にわたって現場とトップ層の双方にビジョンを発信し続けることが大切」と辻氏は言う。医療機器以外の領域にもこの教訓は当てはまるだろう。