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加速するITとOTの融合 「製造業再強化」に向け熱気

IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、FA(Factory Automation)、CAD/CAE、電子デバイスなどの技術進化を原動力に発展する製造業のデジタル変革。これら最先端の話題を集めたイベント「FACTORY 2017 SPRING」が3月2日と3日に大阪で、9日と10日に東京で開催された。急激な市場環境の変化と技術革新に直面する製造業の今を映すように、展示会やセミナーには熱心に情報を求める多数の来場者が集まった。

 経営・営業・設計・調達・販売などの部門が扱う情報を活用するためのIT(情報技術)と、ものづくりの現場で培った様々な運用技術。いわゆるOT(Operational Technology)を融合させた、新たなものづくりのプラットフォームを構築する動きが加速している。FACTORY 2017 SPRINGの基調講演では、その最前線で成果を上げている企業で現場を熟知する担当者の生の声を聞くことができた。

人・プロセス・技術を一体化

 製造業では今、IoTを活用したスマート工場の構築が進んでいる。ただし、単に工場の設備をネットにつないで生の生産データを大量に取得するだけでは、何の革新にもつながらない。

 データを目的に沿った方法で解析し、工場全体ひいては企業全体の活動状況を俯瞰して、的確な意思決定を下せるシステムが求められる。しかも、高速・安全・セキュアーといった条件も欠かせない。米Rockwell Automation社のBarry M.Johnson氏が、こうしたITとOTの融合に命を吹き込む、製造業での情報システム改革の要諦を解説した。

 Rockwell Automation社は、次世代の製造業が目指すべき情報システムの姿を「コネクテッドエンタープライズ」と呼ぶコンセプトで表現している。生産に関わる「人」「プロセス」「技術」を一体化することで、需要主導型の生産、設備資産の有効活用などを目指すものだ。

 「人」という側面では、需要の変化に柔軟に追随する開発や生産を行うため、企業内の縦割り組織の壁を崩して、担当者同士の連携を強めなければならない。「プロセス」の側面では、開発から生産、品質保証までの情報とものの扱いに一貫性が求められる。「技術」の側面では、いつでも、どこでも必要な情報を入手し、意思決定ができる環境が必要だ。

 「その実現には、これまで別ものだった、ITとOTを融合させたシステム開発が欠かせません。だが、そこで必要になる技術を1社ですべて賄うことは不可能。企業連携が必須です」(Johnson氏)。OTの分野では高い競争力を持つ同社だが、Cisco Systems社やMicrosoft社などITで高い技術力を持つ企業と連携し、自社が率先してユーザーとなってコネクテッドエンタープライズの実現に取り組んでいると同氏はアピールした。

仮想世界の機能を細分化

 需要の多様化と見通しが困難な動き、さらには相次ぐ技術革新に対応するため、製造業の企業には設計・調達・製造・販売といったバリューチェーンをデジタル化し、業務を高速回転させる必要が出てきた。設計ではPLM(製品ライフサイクル管理)、調達ではERP(統合基幹業務システム)、販売ではCRM(顧客情報管理)を活用することで、着実にデジタル化が進んだ。ところが、製造でのデジタル化は遅々として進まない。工場内に散在するデータをかき集め、熟練者の勘と経験を頼りに、生産計画を手作業で作成しているのが現状だ。

 パナソニックの島田篤人氏は、こうした状況を打破すべく、製造でのデジタル化を進めてきた取り組みを解説した。 パナソニックでは、情報を扱う「Cyber(仮想世界)」と部品や製品などものを扱う「Physical(現実世界)」を融合し、バリューチェーン上で収集した情報を、調達や生産で、的確かつ迅速に活用できる仕組みの構築に取り組んだ。そのシステムは、CyberとPhysicalそれぞれの部分に、独自の工夫を盛り込んでいる。

 Cyberな部分で処理すべき機能は、スケジューリングや材料管理など目的や手段に応じたモジュールに分割。これを必要に応じて組み合わせることで、既存システムをベースに部分的に拡張・更新できるようにした。Physicalな部分では、生産品目に合わせて、必要な部品や材料を自動的にピッキングする自動倉庫を活用。刻々と変わる情報に合わせて、設備が動く体制を確立した。今後は、設計とものづくり、経営での意思決定と現場の連携をさらに密にしていくという。

最先端は中小企業とベンチャーにあり

 スマート工場の実現に向けた動きは大手だけではなく、中小企業やベンチャーにも広がっている。基調セッションとして企画されたパネルディスカッションでは、最先端の取り組みを進め、目覚ましい成果を上げている2社の責任者が登壇。それぞれの取り組み状況と、今後の展望や課題について議論した。

 登壇者は、FA装置を構成する多種多様な精密部品を生産している双葉工業の脇坂和典氏、付加価値の高いカスタム製品の生産支援サービスを提供するカブクの横井康秀氏だ。両者のような中小企業やベンチャーが果敢にスマート工場を目指す状況は、ものづくり変革の裾野の広さを感じさせる。

 「どのようなスマート工場の構築に取り組んでいるのか」という司会者の問いに対して脇坂氏は、「双葉工業は、多品種少量生産が中心であり、発注・設計・生産の各工程で扱う情報の一元管理がとても重要になります。また、生産拠点が日本、タイ、中国と3カ所あり、どこでも同じ高品質で作れるグローバルな生産体制が欠かせません」と回答。一方、横井氏は「カブクは、生産設備を持っていません。依頼元がものを開発したい場合、3Dプリンターなど生産設備を保有する30カ国、300カ所の工場から人工知能が選択する、マッチング型のビジネスモデルでものづくりに貢献しています」と答えた。

 さらに、それぞれの取り組みの将来像について言及した。脇坂氏は、生産管理システムと設備管理システムを統合して、膨大な情報を解析・展開できる仕組みを構築していることを明らかにしたうえで、これと同時に人とものの流れを考慮した装置のレイアアウトを探りながら、加工職場の環境整備を進めていると語った。「これは、3カ国の生産拠点を並行して進め、最終的にはグローバルな生産管理システムを目指します」(脇坂氏)。

 横井氏は、 「ものづくりの民主化」というスローガンを掲げて、大企業だけではなく、一個人でも参加できるものづくりの仕組みを目指していると語った。アイデアや3Dデータを保有しているデザイナーが自分の作品を発表し、在庫なしで販売できる仕組みを想定している。

 工場のスマート化に向けて、活用している先進技術も話題に上った。「これまでは、設備で加工しているワークの完成時刻、次に加工するワーク、工具の寿命など、現場に付随する情報を十分に吸い上げられませんでした。こうした課題を解消するため、設備からデータを収集し解析するジェイテクトのエッジ型解析モジュール『TOYOPUC-AAA』を活用し、工具の寿命把握などに役立てています。収集・解析した設備管理情報は、生産管理システムの情報と合わせて一元管理されるようにしました」(脇坂氏)。

 「新しい特徴を持った3Dプリンターが続々と登場しており、最終製品の品質は常に向上しています。装置の進化に伴う情報は、カブクの人工知能に学習させて、システムが進化できるようにしました。さらに、日本が誇る表面処理技術と3Dプリンターを組み合わせて、新たな価値を創出したい考えています」(横井氏)。