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日経テクノロジーonline SPECIAL

5G開発動向 最新レポート~5Gはいよいよ商品開発の段階へ

第5世代移動通信システム「5G」のサービスインが目前に近づいてきた。そして、各企業が進める技術開発は、「研究開発の段階」から、市場投入する基地局や端末を対象にした「商品開発の段階」へと移行した。4G以前とは、段違いに複雑で高度な技術を採用する5Gでは、商品開発に立ちはだかる技術課題も複雑で困難なものとなる。商品開発手法に新たな発想のブレークスルーの導入が必須になる。ナショナルインスツルメンツ(NI)は、商品開発へのソフトウエア無線(SDR)技術の活用を提案。5G向け商品の競争力を生み出す強力な武器になりそうだ。

日本ナショナルインスツルメンツ
マーケティングエンジニア 早田直樹氏

 2017年中に米Verizon社が部分的なサービス展開を開始、さらに2018年には韓国のKorea Telecom社がトライアルサービスを開始――。携帯電話サービスプロバイダーによる5Gのサービスインに関するニュースが、続々と伝えられる時期になった。

 5Gの商用化は、高精細動画やVRのような大容量コンテンツの配信サービスや、低遅延での大量同時通信が必須となるIoT関連サービスなど、次世代情報サービスを提供するうえでの大前提である。これまで進められてきた要素技術の研究開発は、ほぼ完了した。そして、28GHz帯を利用した「5G:Phase 1」の仕様は2018年中に固まる見通しであり、より高い周波数帯を利用する「5G:Phase 2」の仕様策定の準備も始まった。

 基地局や端末のメーカー各社は、いよいよ視界に入ってきたサービスインを見据えて、具体的な商品開発の動きを加速している。5G関連の技術開発は、「研究開発の段階」から「商品化の段階」へと、完全に移行したと言える。

極めて煩雑・複雑だった4G以前の試作開発アプローチ

 5Gには、ミリ波通信やMassive(大規模)MIMOなど、これまで以上に高度な無線通信技術を数多く投入する。こうした要素技術の研究開発では、システムの複雑化や高精度化に対応しながらも、研究開発に要する期間とコストを最小化できる新たな開発手法の採用が欠かせなかった。新たな要素技術の検証の際には、技術の有効性を示すために、試作システムを開発して実証実験を行うことが少なくない。このとき、構成部品を1つひとつ集めて試作システムを作っていたのでは、想定したスケジュール内に実現できないほど、技術が複雑で高度だったからだ。「新たな開発手法が必須になる状況は、研究開発から商品化へと目的が移っても変わりません」と日本ナショナルインスツルメンツ マーケティング エンジニアの早田直樹氏はいう。

 今日では、開発が量産ステージまで進んだ5G向け基地局・端末も見られるようになってきた。一方で、今なお設計開発途上の商品も数多く存在する。これらの開発工程では、量産に向けた技術検証を行うための試作が欠かせない。加えて、商品である基地局・端末が所望の動作・性能を満たすかを検証するツールベンチの開発も行わなければならない。例えば、基地局の商品開発にあたっては、その商品が端末に通信サービスを提供できるかをUEシミュレータ(UE: User Equipment)を使うなどして検証する必要がある。このようなツールベンチも、市場の成熟に伴ってターンキーで提供されることもあるが、過渡期の5G市場の最前線で戦う装置ベンダは、それらを指を加えて待つことはできず、自らの努力で実現することが不可欠となっている。

 従来、無線通信システムの試作開発や、上述のようなツールベンチの開発は、極めて煩雑な手順と複雑な役割分担の下で進められていた(図1)。

図1 これまでの無線通信試作システム・ツールベンチの開発アプローチ
[画像のクリックで拡大表示]

 変復調やMAC(media access control)などのアルゴリズム開発では、まず浮動小数点計算を基にしたアルゴリズムを開発し、一度それを低消費電力・低コストの部品で実行できる固定小数点に基づくものへと変換。さらに別のツールを使って、ハードウエア記述言語(HDL)などで書き直して、FPGAなどに実装してシステムに組み込めるようにしていた。そして、ベースバンド処理を実行するハードと制御用ドライバーは、異なる担当者・部隊が個別に開発。さらにはアナログ回路や高周波回路、アンテナもカスタム開発する場合があった。

 システムを構成する各要素が出来上がった後、それらを統合してシステムを組み上げる。その時、それぞれの要素開発に関わったエンジニアと、開発に用いたツールのベンダーが異なるため、統合作業は困難を極めた。実際にこのようなアプローチで試作を行なった開発者によると、システム構成要素を統合する際のデバッグに、全体の開発工数の4割以上の時間を費やしていたという報告もあるほどだ。そして、統合時の不具合は、比較的対応しやすいソフトウエア開発の部分にしわ寄せされ、何度となくコードの書き換えを繰り返していた。

 こうした煩雑な手順や複雑な役割分担は、コストの増大、バグの発生による品質の低下、開発期間の長期化を招く要因となっていた。しかも、こうした一連の作業と役割分担は、往々にして将来の再利用を見越したものではないため、開発する無線通信システムの世代が変われば、一から仕切り直し直しになってしまう。