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日経テクノロジーonline SPECIAL

5G開発動向 最新レポート~5Gはいよいよ商品開発の段階へ

ソフトウエア無線が商品開発の競争力を高める

 新しい無線技術に対応した基地局や端末を商品化する際には、様々な利用シーンの下で、想定した性能と通信品質が得られることを試作機で検証し、不具合を地道に解消していく必要がある。4G以前の商品開発では、開発の手順と役割分担に課題はあったものの、エンジニアの努力で何とか対応してきた。しかし、これまでとは段違いに高度で複雑な技術を用いる5Gの商品開発では、いよいよエンジニアの努力頼みでは対応できなくなった。

 NIは、5G向け要素技術の研究開発の段階において、ソフトウエア無線(Software Defined Radio:SDR)技術に基づく柔軟な試作プラットフォームを提供し、要素技術の早期確立を後押しする実績を上げた。英BRISTOL大学とスウェーデンLund大学は周波数利用効率の高いMassive MIMO技術を、ノルウェーNokia社は73GHz帯のミリ波通信技術を、NIのSDR技術を活用して開発し、目覚ましい成果を得た。「研究開発でその有効性を実証したSDR技術は、商品開発においても、困難な課題を解決するブレークスルーになります」(早田氏)。

 4Gに向けた要素技術検証や商品開発が行われていた2000年代中盤以前においては、商用オフザシェルフ(Commercial Off-the-Shelf、COTS)、すなわち市販品のSDRはまだ存在していないに等しい状況であった。もちろん、コンセプト自体はそれより以前から存在しており、SDRとしてのアーキテクチャを備えたカスタム品が利用されることもあっただろう。一方で、5Gの時代においては、容易に入手・活用できるSDRが利用できるようになっているという点で、無線通信のエンジニアリングツールに大きな変革が生まれている。これは軽視できない変革である。

 しかしながら、無線通信機器の開発現場において、SDRはスペクトルアナライザや信号発生器ほど一般的とはなっていない。新たなパラダイムのツールが浸透するのに時間を要するのはSDRに限ったことではない。ただ、裏を返せば、今日の段階では、まだ一般的になっていないSDRの利点を柔軟に取り入れることで、競合他社よりも開発の競争力を高められる余地を秘めているともいえる。

図2 ソフト無線技術を使って5G対応の基地局や端末の商品開発を効率化
[画像のクリックで拡大表示]

 NIのSDR技術を活用すれば、ソフトウエア無線機「USRP(Universal Software Radio Peripheral)」や各種PXIモジュール、ミリ波ヘッドなど、標準品として入手できる製品を組み合わるだけで、様々な仕様の無線通信システムのハードを構成できるようになる(図2)。28GHz帯や73GHz帯への対応も、Massive MIMOの実現も自由自在。カスタム部品の開発は一切必要ない。そして、システムを動かすアルゴリズムの開発は無線システム開発に特化した統合開発環境「LabVIEW Communications」に全て集約できるようになる。

 1社のベンダーが供給する標準製品でハードを構成し、これらのハードを構成することに最適化された開発環境でソフト開発を行えることで、システム統合に要するコスト、労力、時間の最小化が実現する。ハードウェアドライバやAPIも提供されているので、これらを開発する必要もない。当然、開発手順が簡略化され、バグが発生する余地が減るため、品質も向上する。さらに、将来的に第6世代通信時代が到来したときにも、将来仕様に対応したSDRツールを買い足せば、5Gの開発資産を有効活用しながら、より効率的な商品開発が可能になる。NIは、5Gに投入する要素技術の研究開発の支援を通じて蓄積してきた知見を生かし、「Massive MIMOプロトタイピングシステム」や「ミリ波トランシーバシステム」といった、まとまったシステム構成の試作システムソリューションも提供している。

 NIのSDR技術をフル活用することで、例えば、基地局全体の機能をシミュレーションするリファレンスシステムを構成可能だ。そして、その一部分を開発中の要素機能の実機に入れ替えることで、開発品の動作評価に活用できる。通常、基地局の開発では、内部の機能をいくつかの部分に分け、それぞれを違う部署が分担開発していることが多い。各部署の開発スケジュールが連動していなくても、リファレンスシステムを通じて各部署の開発の整合性を取ることができるようになる。

 また、量産に向けて開発した基地局の検証に向けて、前述のUEシミュレータをSDRで構築することもできる。今日の5Gのように、ターンキーのUEシミュレータが入手できない場合、開発中の基地局のコンポーネントを再利用してUEシミュレータを構築するようなアプローチが取られることがある。しかしながら、基地局として量産することを前提に開発しているハードウエアの柔軟性には限界があり、コンポーネントを再利用しても莫大なエンジニアリングコストが必要となる。真逆のアプローチとして、UEシミュレータをスクラッチから開発するようなケースも存在するが、UEシミュレータのような一品物のシステムをスクラッチから開発することは、余程体力のあるベンダでない限り現実的でない。そこで、SDRを活用すれば、UEシミュレータのような一品物のツールベンチを、迅速に開発することができる。上記のリファレンスシステムをSDRで構築していれば、そのハード・ソフトを再利用してコスト圧縮を図ることも可能だ。