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量産開始した「CoolSiC MOSFET」 トレンチ構造で性能と堅牢性を両立

インフィニオンのSiCデバイス
量産開始した「CoolSiC MOSFET」
トレンチ構造で性能と堅牢性を両立
Peter Friedrichs氏
Infineon Technologies AG
Senior Director

インフィニオン テクノロジーズは、2017年、満を持してトレンチ型SiC MOSFET
「CoolSiC MOSFET」の量産を開始した。600V~3300Vの領域の応用において、インバーターやコンバーター、電源のさらなる効率向上に道を開いた。さらに同社は、システムに組み込んだ後のトータルなコストを低減できる技術を用意。既に、システムコストはSiに匹敵し、高周波動作が求められる用途ではむしろ安くなった。市場投入したデバイスの特徴や特性、それによってもたらされる価値と、応用拡大に向けた同社の取り組みをInfineon Technologies AG Senior Director Peter Friedrichs氏が解説した。

 インフィニオンでは、パワーデバイスに対する、あらゆる応用からの要求にSi、GaN、そしてSiCデバイスそれぞれの特徴を生かして応えていく。そして、量産を開始したCoolSiC MOSFET は、600V~3300Vの電圧領域の高出力で高いスイッチング周波数での動作が要求される応用に適用する。

トレンチ型で高性能と堅牢性を両立

 電源回路を構成するダイオードとIGBTのうち、SiベースのダイオードをSiCベースに替えることで、リカバリー損失を大幅に低減できた。さらにIGBTをSiC MOSFETに替えれば、ターンオン損失とターンオフ損失も大幅に低減し、総損失をSiベース比で80%削減できる(図1)。

図1 「CoolSiC MOSFET」で実現する3つの効果
[画像のクリックで拡大表示]

 さらにインフィニオンのCoolSiC MOSFETならば、デバイスにダイオードが作り込まれているため、電源モジュールを構成するために必要だったデバイスの数がSiベースの12個からSiCベースの6個へと半減し、実装面積を削減できる。さらに、トランジスタとダイオードの間でのハードコミュテーションが可能になるため、信頼性を高める効果もある。

 加えて、SiC MOSFETの出力特性には、IGBTで見られる入力電圧を高めてもオン電流が上がらない領域がない。この優れた出力特性は、常温でも175℃といった高温環境下でも得られる。

 一般にSiC MOSFETには、性能と堅牢性の間にトレードオフの関係がある。オン抵抗を低減するためには、しきい値電圧を低く抑える、もしくはゲート酸化膜を薄くする必要がある。これが、酸化膜の寿命を縮め、宇宙線への耐性や短絡耐量に悪影響を及ぼす要因になっていた。そして、プレーナー構造のDMOSFETでは、実用的な特性の範囲内で性能と堅牢性を両立させることが困難だった。

 インフィニオンのCoolSiC MOSFETでは、トレンチ型構造を採用することで、高いレベルで性能と堅牢性のバランスをとることができるようにした。

 CoolSiC MOSFETでは、単位面積当たりのオン抵抗が3.5mΩcm2、しきい値電圧が4V(ID=1mA、VDS=VGSの場合)と、良好で使いやすい特性を実現している。さらに、大きなP型のエミッタ領域を設けて、内蔵ボディーダイオードとして機能するようにしている。また、ゲート抵抗を調整することで、スイッチング速度を制御できることも特徴のひとつとして挙がる。この特徴を生かして、モーター駆動の条件に合わせて、スイッチング速度を最適化できる。

 瞬間的に1400Vといった高電圧が印加されてもパッケージや絶縁部分が壊れることのない、十分なアバランシェ耐量を確保できる。短絡耐量についても、実験値で5μ秒、保証値で3μ秒という十分な特性を確保している。

 インフィニオンでは、ユーザーがCoolSiC MOSFETの潜在能力を生かした応用を開発するため、推奨周辺チップや評価用ボードを用意している。まず、ドライバーICとして、高速動作のアプリケーションでは、同社製の「1EDI Compact」ファミリーの利用を推奨している。伝搬遅延が120n秒と小さいドライバーICである。また、1200 V CoolSiC MOSFETのTO-247 3ピン/4ピンに封止したディスクリート用とEasy 1Bハーフブリッジを集積したパワーモジュール用の評価用ボードも用意している。

想定外の応用で活用の動きが加速

 SiCデバイスの優れた特性を活用して、システムの価値を高めたいと考えている潜在的ユーザーは予想以上に多い。Friedrichs氏によると、「CoolSiC MOSFETの応用は、太陽光発電のパワーコンディショナーや無停電電源装置(UPS)を中心に広がると考えていました。ところが実際に市場投入すると、想定外の分野で応用が広がる兆しが見えてきました」と言う。

 その代表例が、オフボードでの電気自動車向け急速充電器である。SiCデバイスの高効率を生かせば、システムの効率を維持したまま、複雑な3レベルの回路構成を、単純な2レベルに変えられる。さらに、高いスイッチング周波数を生かせば、回路に組み込むインダクターも小型化できる。これによって、充電器全体を小型・軽量化すると共に、コストも低減する。

 モーター駆動の分野でも、様々なSiCデバイス活用のメリットがありそうだ。例えば、アクティブ整流器の構成にSiCデバイスを活用すると、高いスイッチング速度を生かして、チョークコイルの小型・軽量化を図ることができる。さらに、インバーター部分でも、スイッチング損失の低減や部分的負荷での損失低減、放熱部品や回路の小型化が期待されている。シールドなしの低コストのケーブルの使用やモーターの長寿命化を図ることができる可能性もある。

 インフィニオンでは、こうした応用の急速な広がりを見据えて、CoolSiC MOSFETのポートフォリオの拡充を計画している。「2017年末までに、2kW~200kWまでの多様なトポロジーに対応する製品を、様々なパッケージとモジュールに載せて提供していきます」(Friedrichs氏)という。

お問い合わせ
  • インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
    インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社

    URL:www.infineon.com/jp