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日経テクノロジーonline SPECIAL

ナノレベルの精密さを求め続ける「研磨の駆け込み寺」

ものづくりに求められるさまざまな精密さの中でも、製品の機能や、生産効率に大きく影響するのが、部品の寸法公差や面粗さ、平面度だ。特に高度に微細化の進む半導体の製造装置では、ナノレベルの面精度や寸法公差が求められる。その厳しい精度を、独自に蓄積した研磨加工のノウハウで達成し、日本だけでなくグローバルで顧客から高い評価を得ているのがティ・ディ・シー(TDC)だ。


TDCの研磨加工のサンプル
面粗さはRa1nm、平面度は30nm、角度は±3度、真球度は50nmという精密度を実現している
[画像のクリックで拡大表示]

 「こんな仕様で研磨してほしいのだが、やってくれるところがなくてね」。TDCが受ける研磨の案件の多くは、そんな調子で“駆け込み寺”的に持ち込まれるものだ。顧客が求める精密さに加工会社が追いつけず、困った結果として同社を頼って訪れるケースが多いという。

 同社の高い研磨加工技術は過去の実績に表れている。例えばフレキシブルデバイスに使う金属箔は、その上に実装するために面粗さを極限まで抑え込む必要があるが、もともと50μmほどの薄い金属箔を研磨するのは至難の業だ。適切に扱わないとすぐに折り目がついてしまうような繊細な金属箔を、同社では長さ100mの素材でも面粗さをRaで1nmまで磨くことが可能という。

 また、微細なパターンを転写する技術として注目されているナノインプリント向けに、同社では円筒状の金型の表面加工を行っている。ナノレベルのパターンを作り込む以上、当然ながらそれを転写する金型の下地もナノレベルで平滑性を作り込まなくてはならない。同社はそこでも、長さ3mの円筒でRa1.5nmの面粗さを実現している。

 TDCはこうした高精度な研磨加工を、金属に限らずセラミックスや結晶材料や樹脂など、素材を限定せず対応していることも特徴だ。毎回異なる素材や形状に合わせて、研磨に使用するラップ盤だけでなく細かい設定も都度変えなくてはならないが、蓄積したノウハウが素材に合わせた微妙な調整を可能にし、顧客の素材選択の幅を広げている。

既存の装置でダメなら自ら装置開発

 同社が高い研磨加工技術を確立できた理由の一つが、現場で機械や装置を自ら内製していることだ。目指す精度があまりに高いため、既存の装置をそのまま使ったのでは実現できないことが多い。そこでやむにやまれず改造を始めたのがきっかけだが、現在は所有するラップ盤約100台の半分以上が、自社開発したものという。失敗を繰り返しながらも改造の連続で高精度を目指してきた結果、技術者が機械の構造を知り尽くすことができたのである。

 機械だけでなくチャックなど治工具もワークに合わせて自作している。高精度の加工を正しく測定できる検査環境にも大きな投資を行っている。「加工技術は測定技術とセットで成り立つもの。見積もり段階で検査環境も説明することで、顧客は安心してくれる」と同社代表取締役社長の赤羽優子氏は話す。

 ただしその同社であっても、顧客が求める精度のレベルが絶えず上がっていく中では、二つ返事で実現可能と言えないような難しい依頼もあるという。しかしそれでも「単に『できない』と答えるのではなく、大学との共同研究も行いながら何年かかっても実現できる方法を探す」(赤羽氏)のが同社のスタンスだ。場合によっては公差や形状、素材などを見直すことも提案しながら、顧客とともに理想のものづくりを追求している。

 こうした取り組みが評価され、同社は2014年には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されている。

ナノレベルの研磨は、ナノレベルで検査できる環境がなくては実現できない。AFM(原子間力顕微鏡)など、最新の設備で品質管理を行っている

人づくりにも力を入れる

 同社が研磨の分野で高い評価を受けるようになった要因として、ものづくりに重要な「人づくり」に力を入れていることも見逃せない。「社長だけがリーダーではなく、全員がリーダーの自覚を持った組織」(赤羽氏)を目指し、若手を工場長に据えて自発的な研究開発活動などを促進している。社内では工場で一般的な作業着ではなくラフなスタイルが中心で、女性が36%を占めるという従業員構成も、ものづくり企業としてはユニークだ。旧来型の製造業のイメージを一転させるような社風の下、若い技術者がいきいきと活躍している。

 グローバル展開も加速中だ。2015年にドイツの企業と業務提携。その後米国や台湾、中国上海にも同様の足場を築いている。業務提携とは言っても単なる販売代理店ではなく、顧客の課題を解決する窓口であり、技術開発の入り口でもあるパートナーと呼べる存在だ。

 「最近では、顧客が図面を描く前の段階で相談をいただいたり、研磨前にどんな加工をしておくべきかアドバイスを求められたりすることもある」と赤羽氏は言う。研磨というものづくりの一工程を担う企業としての範ちゅうを超え、工程をまたがるプロセス作りを担う企業へと発展しつつあるところも、同社が業界で注目される理由なのかもしれない。

「全員がリーダー集団」(赤羽社長、写真左奥)を目指す同社では、社長と若手技術者がフランクに議論し合うのが常だ
お問い合わせ
  • 株式会社 ティ・ディ・シー

    〒981-0113 宮城郡利府町飯土井字長者前24-15

    TEL:022-356-3131

    URL:http://mirror-polish.com/