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日経テクノロジーonline SPECIAL

オン・セミコンダクターが実現する自動運転のためのセンシング技術

2020年には、日本市場でも自動運転車が市場投入される見込みだ。海外市場では、より早い時期に実用化される可能性がある。自動運転車とは自動ブレーキやパーキングアシストなど高度運転支援システム(ADAS)を搭載したクルマが高度化したもの、という漠然としたイメージを多くの人が持っている。しかし、安全を確保する責任の所在に注目すると、両者の間には明確な違いがある。単に自律走行できるだけではなく、いかなる状況にも適切に対処できる高次元の安全性が求められる。オン・セミコンダクターのオートモーティブ ストラテジック ビジネス デベロップメント ディレクターである武藤功二氏に、同社が考える自動運転車での機能安全を勘案したセンシング・ソリューションについて聞いた。

武藤 功二 氏
オン・セミコンダクター
オートモーティブ ストラテジック ビジネス デベロップメント ディレクター

————ADASと自動運転の間で、クルマの安全性についての最大の違いは何なのでしょうか。

■武藤 ADASでは安全を判断する最終責任がドライバーであるのに対し、自動運転ではクルマの責任が問われていくことです。

 クルマが自律的に安全確保できるようにするため、AIなど高度な情報処理システムの開発が進んでいます。ドライバーに代わって走行環境を正しく認識し、適切な判断を下すためには高度な頭脳が必要になることは確かです。ただし、それだけでは足りません。AIなどによる高度な認識・判断能力は、環境やクルマ、ドライバーの状態を正確に映すデータがあればこそ、その力を発揮できるのです。自動運転に際しては、データを収集する役割を担うセンサーにも安全性を確保するための1ランク上の技術が求められます。

総合的で正しい認識・判断するシステムが自動運転のキーポイント

————では、自動運転では、安全を守るためのどのようなシステムが求められるのでしょうか。

■武藤 モビリティーの専門家が集まる業界団体SAE Internationalは、自動運転車の自律機能の程度をレベル0からレベル5までの段階に分類した「SAE Vehicle Automation Classifications」を公表しています(表)。そして、「走行環境の認識はシステムが行い、ドライバーは常に注意を払う必要はなく、システムから要請があったときにはドライバーが対応する」としたレベル3以降を自動運転車と定義しています。レベル1やレベル2のADASでは、カメラで明瞭な画像が取り込めない状況下ではシステムオフになります。ところが、レベル3以上の自動運転では安易にシステムオフにすることは許されません。システム側で何とか対処しなければならなくなるのです。レベル3搭載車の自動運転走行時には、システムの認識・判断能力を頼りにするということです。レベル3を実現するうえでは、走行しているクルマが直面する、さまざまな場面を正確に認識し、適切に対処できるシステムの実現が必須になるといえます。

表 SAE Internationalによる自動運転のレベル分け
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 クルマの走行環境はさまざまです。街灯のない暗い夜道を走ることもあれば、豪雨の中、昇る朝日に向かって走ることもあるでしょう。レベル3以降のシステムには、こうした状況でも総合的に正しく認識・判断できる機能や性能が求められます。

ADAS、自動運転で求められるのは“美しい画像”ではなく“明瞭な画像”

————正しい認識、判断が下せる画像とはどのようなものでしょうか。

■武藤 ADASや自動運転向けシステムを作るうえで重要な点は、人物や風景を被写体とする美しい写真や映像を記録するためのイメージセンサーとは、要求される点が異なることです。人が見て“美しい画像”ではなく、機械が見て“明瞭な画像”が必要になるのです。人の審美眼を基準にしてイメージセンサーを選んでしまうと、失敗してしまいます。

————なるほど、システムを構成するセンサーの仕様から違うのですね。

■武藤 いかなる走行環境の中でも、明瞭な画像を取り込めるイメージセンサーが必要になります。目的に応じて、取り込む画像の画素数やフレームレートを決める必要があります。それ以外にも、トンネルの出入り口のような明暗差が激しい状況にも対応できる広いダイナミックレンジや、信号やテールランプ、最近ではヘッドライトでも使われているLEDのフリッカーに対応した機能、高速走行時にも歪みのない画像を取り込める機能なども必要になります。さらに、温度の変化や走行中の振動、クルマの中の電磁ノイズなどにも耐環境性が欠かせません。

図1 赤外光を取り込み可能にして、サングラス着用時でも視線を追えるようにする
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 オン・セミコンダクターは、こうしたクルマ固有の技術が求められる車載用イメージセンサー市場で、約50%のシェアを獲得しています。用途をADASに絞れば、シェアは約70%に達します(TSR と IMS、および ON Semiconductor 社の試算による)。これは1970年代から蓄積してきた米Eastman Kodak社の確かな画像技術を源流として、ADASの進化とともにクルマ固有のニーズに技術を最適化してきた結果です。

 例えば、高速走行しているクルマからデジタルカメラで外の風景を撮影すると、画像が斜めにズレてしまう場合があります。これは、イメージセンサー内で画素データを1列ずつ取り込み、列の間で時間差が生じるからです。オン・セミコンダクターは、こうしたズレをなくす「グローバルシャッター」と呼ぶ技術で対応しています。また、ドライバーの目の動きから視線を検知するドライバーモニターに向けて、赤外領域の光も取り込める技術を保有しています。これによって、ドライバーがサングラスを着用していても視線を追えるようになるのです(図1)。

 こうしたオン・セミコンダクターのADAS向けイメージセンサーでの強みは、当然、自動運転時代にも引き継がれます。

自動運転ではセンサーフュージョン + 機能安全が必須

————自動運転に対応するために、センサーにはより高度な機能が求められるわけですね。

■武藤 はい。ADAS対応だけでも高度なセンシング技術が要求されますが、自動運転ではさらに高次元な安全性を担保できるセンシング技術が求められます。

 1台のカメラに安全確保の責任が集中し、そのカメラに不具合が起きた場合、システム全体が機能不全に陥る可能性が高まります。それでも、レベル2までのドライバーがクルマの安全責任を負う場合ならば、緊急時への対処が可能かもしれません。しかし、レベル3以降の自動運転車では、システムが機能不全にならないような対処が必要なのです。

 自動運転での安全確保に向けた高い要求に応えるためには、センシングシステムに、2つの要素を盛り込む必要があります。1つは、多様なセンサーで取り込んだデータを勘案して走行環境などを総合的に判断する“センサーフュージョン”です。これは、イメージセンサー、超音波センサー、ミリ波レーダー、レーザーを使ったLiDARなどの補完手段を併用して、必要に応じて認識・判断の材料となるデータを使い分ける技術です。重要な点は、原理も適性も異なるセンシング手段を組み合わせて使うことです(図2)。

 もう1つは、システムの機能に不具合が起きるなど、通常使っているセンシング機能とは別にフォルト状況を考慮して作り上げる“機能安全”です。この2つの要素が盛り込まれていないセンシングシステムでは、いかに高度なAIを導入したとしても、自動運転時代に求められる高次元の安全性を実現することはできません。

図2 センサーフュージョンでセンシングシステムを高度化
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センサーフュージョンを見据えてセンサー仕様を定義

————オン・セミコンダクターでは、どのような取り組みをしているのでしょうか。

■武藤 センサーフュージョンが必須になる自動運転時代を見据えて、イメージセンサー以外のセンシング技術の取り込みと強化を着々と進めています。当社は、もともとイメージセンサーの分野で業界をリードするポジションを取っており、豊富な実績を持っています。さらに、2017年初頭にレーダー技術の開発で実績を持つイスラエルの「IBM Haifa Israel R&D center」を買収することで、高度なシステム技術を付加できる体制を整えました。

 1種類のセンサーでなるべく多くの情報を読み取るシステムと、センサーフュージョンを前提としたシステムでは、認識・判断のアルゴリズムは当然異なってきます。システムごとに使うセンサーの仕様も変わってくるでしょう。個々のセンサーの機能や性能を最適化するだけではなく、センシングシステム全体の機能や性能を見据えて、製品化する各センサーの仕様を定義します。

 加えて、オン・セミコンダクターは、2017年前半に新しい「センサフュージョン・デザインセンター」を英国のBracknellに設置しました。このデザインセンターと、2017年初頭に買収したイスラエルのミリ波レーダー技術のデザインセンターを組み合わせることで、次世代の高度自動走行車向けのセンサ―フュージョン・ソリューションに対応していきます。

センシングでの機能安全は自動運転の大前提

————センシングシステムでの機能安全では、どのような技術が求められるのでしょうか。

■武藤 自動車開発では、自動運転時代を迎えるまでもなく、クルマを制御する機能に不具合が発生したとき、機能安全の考え方がとても重要になっています。そして、クルマに盛り込むべき機能安全の規格が「ISO 26262」として標準化されました。クルマの安全を守る役割をシステムが預かるレベル3以降では、センシングシステムにも相当レベルの機能安全を盛り込む必要が出てきます。

 クルマのセンシング機能で、どのような不具合が発生した場合にどう対処するのか、シーンごとの対処法をシステムレベルで詰めておく必要があります。例えば、センサーに不具合(フォルト)が発生した場合に、不具合を検知して緊急事態の態勢に移行する仕組みを、システムレベルで作り、デバイスレベルでも対応する機能を仕込んでおく必要があります。また、あるセンサーの機能を別のセンサーで代替した場合でも、猶予できる情報処理時間内に、安全を確保できるように擦り合わせておく必要もあるでしょう。

————自動運転時代には、センサーも機能安全への対応が必須になるのですね。

■武藤 オン・セミコンダクターでは、こうした機能安全に対応した製品をこれから続々と投入していきます。

 さらに、電源ICやトランシーバーなど周辺チップも含めてセンシングシステム内部の回路を擦り合わせ、リファレンスデザインと共に必要なチップを一括供給できます。リファレンスデザインの活用は、センシングシステムを利用するティア1や自動車メーカーにとっては大きな利点をもたらします。例えば、電源で発生するノイズは正確なデータの取得を妨げる要因となり、その影響を取り除くためのセンサーと周辺回路の擦り合わせには膨大な手間と時間がかかってしまいます。しかも、ユーザーがここに注力しても大きな付加価値は生みません。リファレンスデザインを活用すれば、こうした作業を大幅に簡略化できます。

 自動運転車には、ドライバーが運転するクルマよりも高次元の安全性が要求されます。そして、その安全性はAIなど頭脳の進化だけでは実現できません。自動運転時代を担う新たなセンシングシステムが必要になるのです。自動運転時代に向けた高次元の安全性を実現するセンシングシステムの開発をオン・セミコンダクターが支援していきます。

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