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大学生の新たな学びを支援するNIのソリューション

日本の大学教育の場において、知識の習得だけにとどまらない、学生自身の意思と発想で自発的に取り組む新しい教育プログラムの実践が始まっている。日本ナショナルインスツルメンツは、学生の若い発想から出てきたアイデアを盛り込んで、簡単かつ的確、迅速に電気・電子・機械システムを構築できる学生用のシステム開発プラットフォームを提供し、新たな学びを後押ししている。使いこなしには高い専門性が求められるシステム制御技術を、初心者でも、文科系の学生でも気軽に活用し、思いついたアイデアの効果をただちに検証できるようにする。既に導入して、大きな成果を上げた大学も複数出てきた。

 新しい技術を生み出し、価値ある製品やサービスを創出できる人材の育成は、産業競争力の向上に欠かせない課題である。

 文部科学省は、2013年に中央教育審議会で配布した「これからの大学教育等の在り方について(教育再生実行会議第三次提言)」 という資料の中で、「学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能を強化する」ことを目的として、大学を、知識を学ぶ場から、研究開発の成果を生み出せる人材を育成する場への転換を推し進めていくことを明記。より実践的な教育プログラムの実施を促している。

 そして、あらかじめ定められたカリキュラムに沿って学生が学習するのではなく、具体的な課題に取り組む中で学生自らの意思と発想で自発的に学ぶ“アクティブラーニング”や、学生が自宅で動画などによって知識を得てから大学でディスカッションや体験学習を行う“反転授業”などを実践する大学が出てきている。

自発的学習の入口は、ハードルが低い方がよい

 学生の自発的な学びの前提として、高度な課題に取り組む際に必要な、基盤となる知識やスキルを習得しておくことが欠かせない。

 課題を解決するためのアイデアを思いつくだけでは、世の中に大きなインパクトを与えることはできない。アイデアを具体化して、その効果を検証しながら、繰り返しブラッシュアップしていった先で、大きな成果が生まれる。こうしたアイデアの具体化と鍛錬を行うプロセスの中で、学生は多くの気付きを得て、自発的に学ぶことができるようになる。また、アイデアを形にして、完成度を高めていく喜びも体験していく。

 ところが、アイデアを具体化する際に、具体化や鍛錬の実践を阻む高いハードルがあると、こうした好ましい学習プロセスに踏み込むことができなくなる。課題に取り組む際のツールとなる知識やスキルを習得する際のハードルをいかにして下げるかは、実践的な教育プログラムの成否を決めるポイントとなる。

 アイデアを具体化する際のハードルを下げることの重要性は、学生の教育だけではなく、大学や研究機関の日々の活動においても言える。理工系分野では、研究開発の一環として、独自の実験装置や測定装置、試作機などの構築が日常的に行われている。多くの場合、それらは高度な電気・電子・機械システムであり、そこに研究者やエンジニアのアイデアを盛り込んでいくことになる。インパクトのある研究成果を生み出すためには、こうしたシステムを、いかに的確かつ迅速に構築できるかが極めて重要だ。システム制御技術の使いこなしは、理工系分野の研究者やエンジニアが必ず身に着けるべきスキルであると言える。

 ところが、制御技術を駆使するための知識やスキルを習得することは簡単ではない。システム制御は、電子回路開発、プログラミング、アルゴリズム開発など専門性の高い技術の複合体だからだ。いかに斬新なアイデアを思いついても、こうした専門的な知識を持っていないと、独自システムの構築はできない。研究開発において、実験や試作に用いるシステム開発は、あくまでも手段であって目的ではない。簡単に独自システムを構築できる手法を用意しておくことは、研究開発の本来の目的に時間と知恵を注ぐためにも重要になる。

専門的な知識がなくても最先端のシステムを構築

井関邦江氏
日本ナショナルインスツルメンツ
マーケティングエンジニア

 「ナショナルインスツルメンツ(NI)は、制御技術に関わる専門的な知識がない学生でも、思いついたアイデアを盛り込みながら、高度なシステムを簡単に実現できるツールを学生に提供していきます」と日本ナショナルインスツルメンツ マーケティングエンジニアの井関邦江氏はいう。NIが提供するシステム開発プラットフォーム「LabVIEW」と学生向けの組み込みハードウエア「myRIO」は、学生の自らの手でアイデアを具体化したシステムを構築できるツールである。

 LabVIEWは、システムの構造や動きを視覚化するグラフィカルなプログラミング言語によって、言語の習得に時間を掛けることなく、システム制御のプログラムを開発できるプログラミング環境である(図1)。LabVIEWを活用すれば、センサーやアクチュエーターを駆使する高度で複雑なロボットでも、簡単かつ迅速に実現できる。このため、専門性の高いプログラミングに時間と頭を振り向けることなく、独自のアイデアをシステムに盛り込む作業に注力できる。

図1 NIのシステム開発プラットフォーム「LabVIEW」
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 LabVIEWは、学生の教育だけを目的にして作られたプログラミング環境ではない。本来は、最先端のエンジニアや研究者の研究開発を支援するために作られたものだ。実際、これから実用化する第5世代移動体通信システム(5G)の基礎技術開発や天文学など、あらゆる科学技術の開発でフル活用されている。学生時代にアイデアを具体化するツールとしてLabVIEWに親しんでおけば、研究者やエンジニアとしての財産になることは間違いない。

 myRIOは、LabVIEWまたはC言語でプログラムして使う学生向けの組み込みデバイスである(図2)。中には、「デュアルコアARM Coretex-A9」を搭載したXilinx社のFPGA「Zinq」とリアルタイムOSが組み込まれており、さまざまな制御処理を柔軟に実現し、高速に実行できる。加えて、デジタルI/OとアナログI/O、USB端子、Wi-Fiなど多彩で豊富なインターフェースを搭載しており、多種多様なセンサーやカメラなどデバイスを自由に接続して利用できる。さらにmyRIOは、小型軽量で、筐体も堅牢である。このため、ロボットや実験装置、試作機などに組み込んで、高度なシステム制御に活用することも可能だ。

図2 NIの学生向けの組み込みハードウエア「myRIO」
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 NIは、大学でのLabVIEWやmyRIOの活用を後押しするため、優遇ライセンスプログラムを用意している。LabVIEWは、学科単位、学部単位、キャンパス単位での利用できるライセンス「アカデミックサイトライセンス」を企業向けの半分以下の価格で提供。さらに、学生が個人所有しているパソコンにソフトをインストールできる「アカデミックサイトライセンス学生インストールオプション」も提供している。

広がる大学教育でのLabVIEWとmyRIOの活用

 既に、LabVIEWやmyRIOを活用して、実践的な教育プログラムを開始している大学が複数出てきている。

 京都大学 工学部電気電子工学科は、毎年、1回生から3回生を対象にした「エレクトロニクスサマーキャンプ」と呼ぶ3日間の課外活動を開催している(図3)。各学年それぞれに課題を与え、課題を解決するシステムを自分のアイデアを盛り込んで構築し、その出来を競う。単位が出ない活動でありながら、自分のアイデアを形にできる面白さから、毎年多くの学生が参加する。2017年の3回生の課題は、チームを組んで挑む、ヘリウムガスで浮かぶ飛行船の無線制御である。カメラや超音波センサーなどを使ってデータを取得し、飛行する高度や位置を自動制御して飛行させて陣取り合戦を行うゲーム形式の課題となっている。そして、この制御プログラムの開発にLabVIEWを使っている。

図3 京都大学 工学部電気電子工学科の「エレクトロニクスサマーキャンプ」の様子
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 参加した学生のほとんどは、LabVIEWを使ったプログラミングに加えて、本格的なシステム開発に初めて挑戦する。それでも、初日にプログラミングの方法を一通り教えてもらい、ルールの説明を受けた後、すぐにシステム開発に着手し、3日目には飛行船を自動的に飛行させて、陣取りゲームができるまでになる。京都大学で教育・情報・評価を担当する北野正雄副学長によると、サマーキャンプは、「ものづくりの楽しさやチームワークの大切さを学生に実感してもらうのに役立っています。そして、ここで習得したLabVIEWなどの基本スキルは、大学での研究やその後の技術者としての活動に生かされています」と語る。

 大阪大学では、科学技術を活用した起業家を育成するため、「サイエンス・テクノロジー・アントレプレナーシップ・ラボラトリー(e-square)」を設立した。ここでは、起業家としてのマインドを育み、実践の場において自らのアイデアを試し、鍛えていくプロセスを身に着けることを目指した教育が行われている。e-squareの授業では、学部生から大学院生まで、また理工系の学生だけではなく文系の学生も入り混じって、起業家の卵として、与えられた課題を解決するシステムの開発に取り組んでいる。

 課題をクリアするためのシステムは、myRIOに必要なセンサーやデバイスを接続し、それらを思い通りに動かす制御プログラムをLabVIEWで開発して構築する。e-squareの立ち上げを行った市⽥秀樹⽒(現・日本文理大学の特任准教授)によると「思いついたことをすぐに試して形にしたいと感じられるような授業をしています。そのためには、誰でも簡単に利用できるLabVIEWやmyRIOが欠かせません」という。

 大学内だけではなく、国内外のロボットやシステムの制御技能を競う競技会でもLabVIEWやmyRIOが活用されている。小学生から大学生までが参加する国際的な自立型ロボットのコンテスト「World Robot Olympiad(WRO)」、米国で開催される中高生のロボット競技会「FIRST Robotics Competition」、国際技能競技大会「World Skills」、学生による自作のレーシングカー競技会である「Formula SAE Competition of Japan」などが、その代表例である。

 2017年11月に栃木県で開催された技能五輪全国大会では、移動式ロボット部門にエントリーした6チームのうち、3チームがmyRIOを使った(図4)。そこに参加した岡崎高等専門学校2年生のチームは、LabVIEWを学習して半年でロボットもコントロールできるようになったという。

図4 技能五輪全国大会、移動式ロボット部門の会場の様子
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技術×産業の「X-Tech」時代を担う人材を育成

 近年IoTシステムが急激に発展し、情報システムや制御システムが、製造業以外の産業分野でもイノベーションを生み出すようになった。そして、金融、流通、運輸、農業など先端技術の活用とは縁遠かった産業分野でも、システム制御技術を使いこなすスキルが、イノベーション創出に向けた強力な武器になりつつある。より広範な分野でのイノベーション創出を後押しに向けて、NIのLabVIEWやmyRIOが果たす役割は大きいのではないか。

 「現在、NIではLabVIEWやmyRIOをより広く活用してもらえるよう、教材を充実させています。また、授業への導入を検討する場合にはNIの技術営業がアクティブラーニングの立ち上げから実際の運用まで支援します」(井関氏)という。LabVIEWやmyRIOを使って、どのような技術やイノベーションを生み出す人材が育つのか、目が離せない。

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